第6話 有能なハンター
「霧生様、少々お時間をいただけないでしょうか?」
「なんだ?」
聖と月奈はしばらく一人にして欲しいと願い出た飛鳥に頷き彼女のいる部屋から出て薄暗く広い廊下を歩いていた。
「飛鳥様のことと言えばよろしいでしょうか?」
「ああ、彼女が私たちを狩るための人物だってことかい?」
「知っていたのですか。」
「ああ、それを確かめる為に先ほど出かけて来たのだからな。」
月奈の問いかけに答えながら聖は薄く笑った。そう先ほどは彼女のことを調べる為に彼は家をあけたのだ。
初めて庭で寝ている飛鳥をみた瞬間から彼女がエクソシストではないかと、聖は疑っていたのだ。
だいたい少女一人でこんな森の奥深くまで迷い込んでくるはずがない。
ましては、この屋敷を囲むようにある森は獰猛な獣がいて、迷い込んだものは生きては帰れないと人間たちは噂をしているのだから。
それでも、迷い込んで来るものは自殺願望者か自分たちを狩る為に派遣されたハンターくらいなものだ。聖は最初こんな少女が自分たちを狩りに来たのではない、と思ったが、自殺願望者だとも思えなかった。
それは少女という年頃であることと、汚れのない綺麗な色を放っている魂から感じられた。
だから到底自殺願望者だなんて思わなかった。
だからハンターではないかと、疑ったのだ。
なにせ、最近優秀な幼いハンターがいるともっぱらの闇の者たちの噂にのぼっていたからだ。
聖はその人物が、どのような人間なのだか調べる為に出かけていたのだ。そしてその結果は噂のエクソシストが飛鳥だという事実だった。
まだ、彼女に名前は聞いていなかったが、彼女の知人にそれとなく聞いてみたところ、容姿がぴったりとあてはまったのだ。
黒く長い漆黒の髪。
光を当てると薄っすらと緑色の光を放つ、特殊な髪質。
それを持つ少女が若干16歳の有能なエクソシストだと言う。そんな特殊な姿をしていれば、まず間違いないと確証できるだろう。
それでもまだ信じ難かったので、寝ぼけている彼女に彼女の口からは教えてもらっていない彼女の名前を呼んだのだ。
結果彼女はその名前に抵抗なく返事をした。
聖はそのことで彼女が噂のハンターだということを、はっきりと認識したのだった。
「…そうですか。では私が言いたいことはおわかりですよね?」
「ああ、もちろんだ。君は…彼女には近づかない方がいいと言うんだろう?」
「ええ、そのとおりです。」
フッと笑いながら聖は答えた。
それに月奈はなんだか妙な気分を味わうが、その通りなので一応返事を返す。
「だか、それは無理な相談だよ。」
慈しむように聖は微笑むと呆然として立ち止まってしまった月奈を残して自室に戻って行った。
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