第2話 運命に出会う時

鬱蒼と生い茂る木々をかき分けながら建物の見える方角に進んでいくと、いきなり目の前の道がひらた。


目の前には広大な芝生の庭が広がっている。


手入れの行き届いている芝生はとても柔らかそうで寝転びたくなる。



「寝転がったら気持ちよさそうかもしれないなぁ・・・。」



そんなことを思いながら芝生の上をふわりふわりと歩く。



歩くたびにサクッサクッとする音が耳に心地よく感じる。



飛鳥はあまりの心地よさに、



(少しくらいならいいかな?)



と思い、広がる芝生の上にころりと寝転がった。



少しばかりチクチクとする感覚と芝生の良い匂いがなんとも言えないほどに眠気をさそう。



「気持ちいい………。」



そう呟いて目を瞑っていると、だんだんと眠気が襲ってくる。



いつのまにか飛鳥はその場で深い眠りの淵に落ちてしまっていた。



――――――――――――


「おや?」



漆黒の黒い髪が揺れ、この屋敷の主の男は芝生の上で気持ちよさそうに寝ている少女に近づいていく。



そして彼女の顔をのぞき込めば、必然的に寝ている飛鳥の顔に陰ができる。



「随分と可愛らしいお客さんだな。」



飛鳥の寝顔を堪能した男はそう呟いてクスリッと笑みを漏らした。



そして未だ寝ている少女の体を抱き上げ屋敷に向かって歩き始める。



抱き上げた体は思った以上に軽い。



「………軽いな。」



そう呟いて小さく寝息をたてている少女の体を頭の先から足の先まで改めて眺めた。



細い腕に細い足。



洋服に包まれているから実際はどのくらい細いのかはわからないが、服を来ているのにしては同年代の少女たちよりも細く見える。



ながれるような黒髪に顔を近づければふわっとした感触とともに、なんともいえない甘い匂いが香ってくる。



「ふふふ。」



男は少女に出会えたことの奇跡に笑みを浮かべる。



今まで出会ったどの女性よりも彼女に興味を覚える。



その閉じられている瞳が開いたならば、と思う。



そのまだ見ぬ瞳に自分の姿を映し出されたら、と思うと無意識に心臓が早鐘を打った。



男は飛鳥の体を優しく抱きしめたまま屋敷の門を潜った。



早くその目が開けられることを願いながら。

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