最終話

「ついにか……」

「あぁ……」

「そうね……」


 俺は今、奏太と彩と一緒にオッサンの工場の前にいる。

 学校が終わると同時に、窓から紙ヒコーキが飛んできた。というかあの大木から投げてきた。危ないから次は直接渡して欲しい。


 手紙を開くと、

『工場に来て』

 とだけ書いてあり、おおよその事を察してそこへ向かった。これもう口で言えば良かったのでは……。


 そして今に至る。


「お、来てくれたね。こっちこっち」


 入口からオッサンが手を振る姿が。

 手招きされるがままにそちらへ。


「これだよこれ」


 中に入るとあるものを見せられた。

 おもちゃみたいな見た目……かと思ったら、無骨なデザインをしているハンドガンだ。


 というかガチのバンドガンにしか見えない。


「これで……元に戻れるね……」

「色々と、ありがとうございます」


 オッサンが肩をポンと叩く。

 すこし涙目になってる……。


 と思ってたら急に涙を引っ込めるオッサン。

 俺の背後をじっと見る。


 なんだろと思い、俺も後ろを見ると……


「やぁ」


 ニコニコしているおじさんが立っていた。


「どうしてここに来た兄よ」

「どうしてって……これを返しに」


 おじさんが見せたのは俺の学校の制服だ。


「それって……」

「あぁ、君のだよ」

「あ、ありがとうございます」


 俺の制服を返してくれたおじさんは立ち去る。


「では……そろそろ」

「はい……あ、こいつ返しておきます」


 メタ吐露ンを取り出しオッサンに返す。

 もとは借りものだったから。


「ありがとう……あ、もう電池きれてる……」


 静かだなと思っていたらまた電池がきれていたらしい。電池の消費量がとてつもない。


「ま、いっか。では……」

「はい」


 気にせずメタ吐露ンを隅に置き、銃を構えるオッサン。

 その前に立つ俺。


「安心しな……出るのはビームだ……」

「いま言う必要あるのか……」


 そう思っているうちにビームが――






 ……?

 何も起きない。


「出ない」

「え」


 オッサンが銃を見ながら言う。


「どうしたんですか?」

「なんでだろうなぁ……あ」


 少し汗を流しながらオッサンはこちらを見る。


「電池ない……」


 それ電池で動くの……。


「電池ならコンビニとかにあるので買ってきま……」

「ダメなんだ……この電池じゃなきゃ」


 オッサンはメタ吐露ンから電池を取り出し、それを見せる。


「拙者が造ったこの電池じゃないと動かないんだ……」

「替えとか……」

「こいつに使ったやつで最後です……」

「造れば……」

「三ヶ月ぐらいかかる……」


 場が静まりかえる。


「ということは……?」

「もう少しそのままで……」

「ごめんね……もう少し待っててね……」


 えぇ……。

 落胆していると、奏太がぽんと右肩を叩く。


「あんまり気にすんなよ。これからも手助けするさ」

「そうよ。私も理央のサポートをするわ」

「二人とも……」


 左肩に彩が寄りかかる。


「ありがとう」


「これからも、よろしくね!」


 感謝を告げ、三人で帰路についた。


 これからも見た目は違えどいつも通りに。



 終

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男の娘、残ったものは我が息子 えまま @bob2301012

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