第16話
のんびりと歩いていると、例の工場が見えてきた。
「あそこだよね」
「ウン」
中をちらとのぞき見る。
そこには机に向かって作業をしているオッサンが。
相当集中しているように感じる。
そう思いながらじっと見ていると、その視線に気づいたオッサンがこちらに駆け寄ってくる。
「こんにちは-」
「こんにちは。どうしたの? なんかあった?」
小走りで駆け寄ってきたオッサンは、挨拶と共に心配をしてくる。
恐らく、俺自らが来たので何かあったのだと思ったのだろう。
「いえ。なにもないです。ただこいつが……」
「オラ電池交換セェ」
「相変わらずだなぁ。ごめんね、ちょっと待ってて」
そう言い、オッサンはまたも小走りで机の方へ。
「なんで電池? この前交換したじゃん」
「今ノ電池ジャスグナクナッチマウ」
「そうなの?」
「アア。ココデ造ラレタ電池ガイイ」
たしかに最近静かだなと思っていた。
これからこいつが静かになってきたら気をつけた方がいいのかもしれない。
話していると、オッサンが両手で電池やその他を持ってきた。
「そいつ、ちょっと貸してね」
「あ、はい」
ドライバーで蓋を開け電池を取り出し、新しい電池を入れる。
見ていたら、オッサンが話し始める。
「最近はどう?」
「え、まぁ、順調です」
「そっかそっか。変わったこととかもない?」
変わったこと……。
「友人の、知らない一面を知れました」
「友人……奏太くんと彩ちゃん、だっけ?」
「はい」
彩と服を見に行ったのはとても楽しかった。
奏太の頼もしい一面を見れた。
「……やっぱり戻りたい?」
「……はい」
楽しいこともあったけど、迷惑をかけてしまったこともある。
戻って、またいつも通り過ごしたい。
「それが君の意思ならなにも言わないよ」
そう言い、電池を変え終えたメタ吐露ンを渡してくる。
「戻れるの、もう少しだから待っててね」
「わかりました」
受け取り、その場を立ち去る。
「またね」
「はい!」
オッサンが手をひらひらと振りながら見送ってくれた。
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