第14話
「かわいいねぇ、お嬢ちゃん。今から遊びに行かない?」
街灯に照らされたその姿。俺と同じ高校の制服を着ている。
しかしその顔には見覚えがなかった。
身長は百九十ぐらいだろうか? 自分の身長が百六十ちょっとなため、彼がクマのように見えた。
にしても突然だな……。
俺が黙っていたせいか、相手はしびれを切らす。
「どっちだ? 遊びに行くか?」
「え、いやです。では……」
手短に断り、足早にその場を去ろうとする。
こういうことがあるから夜道は気をつけないと。
「おい、後輩なんだから先輩の言うことには従えよ」
「やめ……ッ!」
理不尽な事を言いながら、その人は俺の腕をつかんできた。
振り払おうとしたが、どうにもうまくいかない。
なぜか、怖くなってきた。
その時――
「やめてもらっていいですか」
唐突に、その声は聞こえた。
俺の後ろから聞き慣れた声が。
「奏太!」
「よっ」
奏太がそこにはいた。
俺は救われた気がし、思わず叫んでしまう。
「で、あなたはなにやってるんですか?」
「なにって、えっと……」
俺には普段と変わらない返事をしてくれた。
しかし、先輩と思しき人には怒りをこめた言葉を発する。
その怒りを感じ取ったのか、少し萎縮する先輩。
「行くぞ」
「あ……」
先輩の掴む腕の力が弱まる。
その事を感じ取った奏太が、俺の手を引いて走りだす。
「あ、おい……!」
先輩の言葉を後目に、俺達は走った。
・・・・・・・・・・
「はぁ、はぁ」
「……ふぅ、結構走ったな」
そう言い、奏太が止まった。
俺に合わせてか、ゆっくりと。
膝に手を付き、呼吸を整える。
顔を上げ、辺りを見渡せばここが公園だということがわかった。
先程いた所らへんから公園まではおおよそ五分ほど。
普段しないレベルの運動をした。
俺が呼吸を整えたのを確認し、奏太が話し始める。
「……で、なにがあったんだ?」
「そ、それが……」
手短に説明すると、奏太は首をかしげた。
「なんか、ナンパみたいだな……」
「うん……」
いきなり面識のない人に、遊びに行こうとか誘われた。
思い返すと体がすこし震える。
「奏太、助けてくれてありがとう」
「お、おう」
奏太が来なかったら、徐々に恐怖で声を上げることすらできなかったかもしれない。
ただ――
「奏太はなんで、あの場にいたの?」
「え、帰ってたら誰かといる理央が見えたんだ。立ち去ろうとしたら、相手が理央の腕掴んでたから……」
運良くその道を通ってくれていたらしい。
おかげで助かった。
「ありがとね、奏太」
「お、おうさっき聞いた……」
もう一度感謝を伝えると、奏太は目をそらす。
照れているのだろうか。
「ま、またさっきみたいな事があるかもしれん。家まで送ってやるよ」
「うん。ありがと」
・・・・・・・・・・
部活があったため、今日は理央達とは遊べなかった。
暗くなる前には終わった。部員と話してたら遅くなったけど。
いつも通り帰っていたら、理央を見つけた。
街灯に照らされた姿はまるで天使のようで声をかけようとかなと思っていると。
……誰かと話している。彩かと思ったが違うようだ。
邪魔しちゃ悪いし帰りかけた所で、話し相手が理央の腕を掴んだ。
嫌がってるように見える理央。
理央の身に危険が――!
そう思った時、僕の体は走り出していた。
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