第11話
おじさんはよっこいしょと立ち上がり、椅子を用意してくれる。
とりあえずそこに座ろう。
「で? なんで?」
「理央くんや、君メガネをここで買っただろう?」
メガネ……? 時折買ってるけど、どのメガネだ……?
「一万ぐらいしたやつ、買わなかったっけ?」
「あ、先月の!」
「え? もしかしてあれ? あの時、私がサインしたやつ?」
「そう! それ!」
色々と落ち込んでいたら彩が励ますかのようにそうしてくれた。そんな思い出の品。
「でも、それとなんの関係が?」
「いや……ね」
歯切れが悪いおじさん。さっきからなんだかオドオドしている。
「はっきり言ってください」
「言っても怒らない?」
「え、まぁ」
そう言うと、おじさんはむーんと考えこちらと向き合う。
「あのメガネ買った子を対象にしようかなー、って……」
辺りがシーンとしている。ていうか、えぇ。
そんな理由で対象に……。
「このおじさん、どうする?」
「よし、警察送りにするわね」
「え、やば」
彩がスマホを取り出し電話をしようとする。しようとしただけだけど。
「あれ? じゃあなんでその時にビームを撃たなかったの?」
ふと疑問に思い、そう口にする。
買ったとき、彩とは別行動をしていた。
そのため、店内はその時このおじさんと俺だけだったはずだ。
「まだ、その時あの銃なくて……」
「そういえばこのおじさん、あの弟オッサンから色々盗ってるとか聞いたわね」
「盗みもしているのか、やっぱり警察……」
「弟にも会ったのか……」
なんかもうごちゃごちゃしてきた……。
「公園の前でちょうど俺の前に現れたのは?」
まるで待ち構えていたかのようにあの時おじさんは現れた。
「あー、あのメガネちょっと貸してくれる?」
「あのメガネ? これ?」
「そうそれ」
さっきから話題になっているメガネ。
それに何が――
「ここにね、位置情報を示してくれる機械があるんだ。それで君の位置を把握してあの時……」
「よし、警察に言おう」
「さすがにこれはどうかと思うわね……」
少し大きめのこのメガネ、鼻あての部分に仕込んでいたらしい。
「ま、まぁもう、あまり気にしていないからいいかな……」
「優しいね……理央くん……」
「優しすぎる……」
「優しすぎるわね……」
「優シイノ漢字ガ三ツ……」
「お前で四つめだ……てか居たのか」
奏太が反応する。俺のカバンからメタ吐露ンがひょこっと出てくる。
「なんかもう色々起きすぎたような感覚になるわね……」
「もう帰るか……」
「うん」
大して店を見なかったが帰ることにした。
・・・・・・・・・・
「ただいまー」
あの後、奏太たちと別れ家に帰ってきた。
親に帰ってきたことを示し、自分の部屋へ。
急いでスカートなどを脱ぎ、着替える。
……一応、ね? なんとなくバレるのは嫌だ。
二週間後には戻れるのであまり騒ぎを大きくしたくない……。
「ソレ、バレタラドウスンノ?」
「説明してもまともに信じてくれるかなぁ……」
「バレタラ、女装癖ガアルッテコトニシヨウゼ」
「資源ごみの日って明日だったっけなぁ……」
「エ」
着替えてる最中に、メタ吐露ンはよく話しかけてくる。
兄弟がいない俺にとって、家の中で親以外と話すのは新鮮味がある。
「コッカラ実ハ過去ニ亡クナッタ、兄弟ノ回想シーンカト思ッタガ大シテナインダナ」
「なんだこいつ……。あ、夕飯食べてくるね」
親に呼ばれたので一階へ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます