第10話
「次ノ日ダヨ」
「なに急に?」
「言エッテ言ワレタ気ガシタ」
・・・・・・・・・・
「さて、もう帰れるが……」
今日の授業が全て終わり、帰る支度をしていると奏太がおもむろにそう言った。
「?」
「……今からどっかに遊びにいかねぇか?」
「あ、賛成。私もいきたーい」
昨日、オッサンと別れた後、奏太と彩は今まで通り接することにしたらしい。
今まで通り接していれば、女化の進行を抑えられるかもしれないと考えたからだ。
なので、今まで通り、どこかに遊びに行こうと思い今日はそう提案してくれたのだと思う。
「いいよ。どこに行く?」
「あー、そうだな……」
「ねぇねぇ、商店街の方に行ってみない?」
この街には商店街がある。様々な店が並んでおり、歩いているだけで楽しめる所だ。
彩におととい、公園で見せたメガネを買った所でもある。
「いいぞ。じゃ、行くか」
「うん」
「行きましょ」
おのおの自分のカバンを持ち、教室を出た。
・・・・・・・・・・
商店街に着き、周りを見渡す。俺らと同じく、ここに寄っている学生もちらほら見える。
飲食店に雑貨店、小さいがゲーセンもある。あまり都会的ではないこの街では手軽に遊べるのはここぐらいだろう。
「あ、あそこ! 理央が前、メガネ買った所じゃないかしら?」
「あの一万したやつか……。今は何が売ってるのかなぁ」
「見に行くか?」
「うん。行こ!」
彩が見つけてくれたのは例のメガネを買った店だ。
買った後は少しだまされた気分だったが、あの店は品揃えが良く、昔から贔屓にしていた。なので今はもうあまり気にしていない。
店の扉を開け、ベルの音を聞きながら入ると、多種多様なメガネが目に入ってくる。
オーバル型やボストン型、スクエア型に縁なし髪なしおじさ……。
「…………」
「…………」
入り口付近にレジが置いてあったため、店主と目が合う。
「あー!」
「うおっ、どうした理央? 急にさけ……あ」
「あ」
奏太も気づいたらしい。遅れて彩も。
この店主があの人たちにそっくりだということに。
でも――。
「どっち?」
「どっちだ?」
「どっちよ?」
あの二人、兄弟だからかそっくりなのだ。
この人は――。
「やぁ、君たち。二日ぶりだね」
「ということは……」
「えーっと、二日ぶりって言ってるから昨日のじゃない……」
「なら、おじさんの方じゃないかしら」
レジで座りながら新聞を読んでいたおじさん。
このおじさんはあの時ビームを撃ってきた方だ。
「おじさん、ここで何やってるの?」
「何って、この店を営業しているけど……」
「営業しているんですか!?」
思ったことを聞いてみたら意外な返答。気づかなかった……。
「いつからやっているんすか?」
「えーっと、二十年ぐらい前からかなぁ」
奏太の質問する。上を見上げ、思い出すように言うおじさん。長いことやってるんだなぁ。
「まぁ、ゆっくり見て行きなよ」
「はぁ……では」
「いやいや待て理央」
「え?」
「そうよ。おじさん、ちょっと色々聞きたいことがあるんだけど」
店内を見て回ろうとした俺を止め、そして話を切り上げようとしたおじさんに迫る奏太と彩。
聞きたいこととは……?
「今更聞くのもどうかと思うけど、なんでそのビームを撃つ人を理央にしたのかしら?」
「…………」
言われみれば何故と思う質問を彩がしてくれた。しかし、それを聞いたおじさんは冷や汗を垂らしながら黙っている。
「なんで黙ってんだ?」
「……からです」
「ちゃんと言いなさいよ」
小声でよく聞こえなかった。彩が一喝する。
「かわいい女の子が見たかったからです……」
目をそらしながらおじさんが言う。
「ほー。それで? なんで理央にした?」
奏太がかわって言う。というか、二人ともさっきから怒ってるように見える……。
「え、素質ありそうだなぁって……」
そんな理由!? これには奏太と彩は怒りが爆発するのでは。そちらを見ると――。
「あー……。まぁ、ね。うん」
「そうね……。うん……うん」
え!? なんで急に!? さっきまでの怒りはどこへやら、二人はあさっての方向を向いている。えー……。
「あーっと、まぁ詳しく話すね」
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