第7話

 彩達と別れ、自分の家に着く。

 共働きの両親は、今は家にいない。


 自分の部屋に行き、すぐに着替える。


「普通に俺、受け入れていたけど、よくよく考えたらこれ異常だよな……」


 女子の制服を着ることになんだか慣れている自分がいた。

 親にどう言おう……。


 ジャージに着替えて、スマホのカメラで自撮りをする。

 見てみると、男の時と大して変わってないように見える。


「カワイクナイゾ」

「うるさい……」


 メタ吐露トロンは俺が持ち帰った。

 彩と奏太にあまり迷惑をかけたくないし。


 しかし、この機械とてもうるさい。

 帰ってくるときも急に喋りだしたりするからびっくりする。


「……静かにできない?」

「ムリ」


 端的に答えすぎでは……。てか、だんだん口悪くなってきてるなこいつ。

 なんだか色々な事が起きすぎて疲れた……。


 少し……寝よう。

 ベッドに向かい、掛け布団を被る。


「モウ寝ルノカ? マダ昼ダゾ」


 こいつ捨ててこようかな……。



 ・・・・・・・・・・



 少し寝るつもりだったが、暗くなるまで寝てしまった。

 親が夕飯ができたから食えと言われたので、向かった。


 家族は兄弟などおらず、両親と俺の三人だけ。

 テーブルで食事をしつつ、会話もする。


 その間、今日起きた変化に関してはなにも言われなかった。


 案外、気づかれないもんなのかな……。

 風呂も済ませ、いつもならもう寝る時間の零時になった。


 長い昼寝をしてしまったため、今はまったく眠くない。

 なので、今のうちにメタ吐露ンを調べておこうと思う。


「おーい」

「ナニ?」

「おまえってどんな機能がついてるんだ? 会話出来るぐらい高性能だし」

「ネット検索ヤ会話、コレガ主ニデキルコト」

「ネット使えるのか……。機械ゴミ捨て場、って検索してみて」

「一ヶ月に2Gギガマデシカ使エナイカラヤダ。ツーカナメトンノカ我ェ」


 なんでそこらへん制限があるんだよ……。


「色々質問してもいいか?」

「シャアナイナァ、イイヨ」

「……おまえはなんなんだ? おじさんに造られたのか?」

「ウン、オジサンニ作ラレタヨ」

「じゃあ、姿を変えれるビームを撃てる銃も?」

「ウン、オジサンガ作ッタヨ」


 あのおじさん、器用だな。

 色々作れるのかもしれない。


「元の姿に戻る方法とかわかる?」

「……ワカンナイ」


 わからないかぁ……。

 やっぱり、おじさんが教えてくれるまで待つしかないのかなぁ。


「……モウ寝テモイイ?」

「え、おまえ、寝るの?」

「寝ルヨ?」

「機械なのに?」

「機械ナノニ」


 次は何聞こうか考えてたら、不意にそんな事を言い出した。

 俺の返事も聞かず、目をつむった。


 部屋がシンとする。

 さっきまで喋り声で満たされていたのに。


 机の上にメタ吐露ンを置く。

 ……動画でも見て、時間をつぶそう。



 ・・・・・・・・・・



 寝たフリをしていた。機械だって寝たい時はある。フリだが、眠気が来ている気がする。

 ちらと、ベッドの方を見れば彼女はスマートフォンで動画を見ている。


 足をパタパタしている、可愛いアピールか?

 中性的な見た目だが女……だよな?


 しかし、スマートフォンとやらは大変だなぁ。

 二十四時間、ほとんど動いている。


 スリープモードなんてあるが仮眠だろあれ。実質ブラック企業では……。

 まぁ、自分は自由だがやる事をやらなくちゃいけないんだけどね。


 メタ吐露ン? だかそんな名前を付けられた自分はおじさんに、あの子達を手助けしてくれないか? と言われた。


 おじさんの所にいても、大して相手をしてくれないので暇だった。

 から、承諾した。


 思った通り、こちらは楽しい。

 なにか言えば、返事をしてくれる相手がいる。


 言葉も覚えれて楽しいし、この機能をつけてくれたおじさんには感謝だ。

 しかしあの時の自分を渡したおじさん、誰だったんだろう。


 似てたから気づかなかったけど、


 あのおじさん、分身とかできるのか……?

 ……よくわかんないし、もう寝るか。

 目をつむるだけだけど。

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