第5話

 逃げ場をなくしたおじさん。

 じりじりと詰め寄る奏太と彩。


 張り詰めた状態が続き、やがておじさんはフッと諦めたように微笑む。


「よし、一旦落ち着こう。そして話し合おうじゃないか」


 と、言いながらおじさんは先程の木に背を預けて座る。

 奏太と彩が俺に近づき話をしてくる。


「どうする? 話を聞くか?」

「私は聞いた方がいいと思うわ」

「お、俺も……なんでこんなことしたか知りたいし……」


 三人とも意見は同じ。

 おじさんの元へ向かう。



 ・・・・・・・・・・



 昼下がりの木漏れ日、葉が風に吹かれる音もあいまって、とても穏やかだ。

 まぁ、雰囲気は穏やかじゃないけど。


 俺たちは、円を描くように地べたに座っていた。

 奏太は難しい顔をしており、彩はずっと黙りこくっている。おじさんは変わらず微笑んでいる。


「ふふふ……なにか聞きたいことがあるんじゃないか? 答えられるやつだけ答えてあげるよ」

「……なんで、理央を今のようにした?」


 おじさんが言ったことに、奏太が冷静に返す。


「うーん……それはまだ、言えないかなぁ」


 しかし、おじさんは教えてくれなかった。


「こいつからビーム撃たれた、って聞いたんだけど」

「ああ、これかい?」


 彩の質問に対し、おじさんはウェストバックを開けてあるものを取り出す。

 ……あの時の、銃だ。


 てか、バックから色々出てくる。めっちゃ入ってんなそのバック。

 例の銃に、もう一つおもちゃみたいな……。


 ただ、もう一つの方は壊れている。

 というか真っ二つに割れてる。


「……? ああ、これね。さっき木から降りようとした時、使ったんだけど壊れてて」


 そう言い、おじさんはその銃を手に取る。

 鉤形のものがついたロープを先端から射出でき、それを使って降りようとしたらしい。


 さっき見た通り、落っこちたけど。

 他にも色々な物があったが追求しないでおこう。

 それより本題だ。


「なぁ、おじさん」

「なんだい?」


 おじさんは依然、微笑んでいる。


「俺は、元の状態に戻れるのか?」

「…………」


 正直、不安だった。もしかしたら、ずっとこのままなんじゃないかって。

 おじさんをじっと見る。


「……大丈夫、戻れるよ」

「じゃ、じゃあ」

「だが、今はまだ、できない」


 一瞬期待した。けど、今はまだ……?


「???」

「時が来たら理由を教えるよ」


 そう言ったおじさんの顔に、微笑みは無く、眼差しは真摯に煌めいていた。



 ・・・・・・・・・・



 おじさんは話すことを終えようと、よっこいしょと立ち上がる。


「いやまだ聞きたいことがあるんだが」

「クールを装う君のクエスチョンには答えてあげたいが、すまない。わたくしは忙しいのでね」


 奏太がまだ問い詰めようと、引き留める。

 が、おじさんはそれを振り払う。


 そして、腰につけたバックをごそごそと漁る。

 そして、あるものを取り出し、手渡してきた。


 ……何コレ?


「何よこれ」


 俺が思った事を彩がそっくり聞いてくれる。


「ふふふ、使ってみればわかるよ」


 そう言って、よくわからないものを押し付け、おじさんは足早に立ち去った。

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