第3話
「はぁ、はぁ」
学校に向かってダッシュしている。
「はぁ、はぁ、ん……はぁ」
「妙に色っぽい声出して走るのやめて!?」
「だ、だってぇ……」
「あああかわいああああああ」
なんかごめんね……気持ち悪くて……。
色っぽい声が出るのは許してほしい。
ビームを撃たれてから少し経ち、なぜか声が少し高くかわいくなった。
おまけにいつもより疲れやすくなった気がする。
男の時は余裕だったのに。
それでもなんとか走った。
・・・・・・・・・・
「ん、はぁ、なんとか……着いた……」
「ふぅ……間に合ってよかったわね……」
ギリギリ学校に間に合った。ホワイトボードに貼ってあったクラス分けの紙を見る。二人とも同じクラスだと確認。
一つ目の問題はクリア。
それと同時に次の問題。
すっと扉を横にスライド。クラスの視線が一気に集まる。
だいたいは、ちらと見られておしまい。
だが今日は違う。
頭のてっぺんからつま先まで、じーっと見られてる。
俺は恥ずかしさを覚え、身を
クラスのどこかから「おおっ……!」と、聞こえた。ん? あいつは――、
恥ずかしさで顔を伏せながら俺は、あらかじめ決められていた自分の席を確認し座る。
座るとまたザワついた。
「あいつ、なのか……?」「うそ……」「うへへ……ええなぁ」と聞こえてくる。
てか最後の彩かよ。お前何言ってんだ。
ザワザワしていると先生が教室に入ってくる。昨年と同じ先生だ。
一瞬で話し声が止み、みんな前を向く。
先生はじっと俺の事を見てから、今日の日程を伝える。
先生スルーかマジか……と思っていると、
「はい、今日の連絡は終わり。伊藤はあとで先生の部屋……じゃなくて職員室に来なさい」
欲望か? あれが先生の本性か?
なんか見ちゃいけないものを垣間見た気がする。
いやまぁ、呼ばれるよね。うん。覚悟はしてた。
おとなしく、行こう。
・・・・・・・・・・
なんもありませんでした。
事情聞かれただけでした。
しかも納得してくれたし。
あ、目つきがいやらしかったよ。
そのあと、始業式も終えたのでもう帰れる。
教室にはほとんど人がおらず、いたとしても部活に行く準備をしている者だ。
教室に残る俺と彩。
そして、もう一人の男。
「んで……理央、だよな? 何があった?」
そう言う彼、
中学一年からの親友で、今でも仲が良く、俺の事をよく心配してくれる。
……心配ついでにキャスケット被してくるのはなぜ……?
しかも彩がカシャカシャ写真撮ってくるし、えぇ……。
さっき見えたが奏太のカバンの中に大量のキャスケットが見えた気がする。気のせいだろうなうん。
とりあえず事情を説明。
・・・・・・・・・・
みなさんどうも。沢村奏太です。
同級生の伊藤理央に思いを寄せている男です。今日起きた事なんですけど――
――朝、登校しクラス分けの紙をじーっと見る。
今年も理央と同じクラスだ、内心飛んで喜ぶ。
決められていた席に座り、窓の外を見ながらため息をつく。
中学に入って、理央と過ごし、この気持ちに気づいた。
同じ高校にも行き、あいつと過ごしたが今日まで友だ……親友以上になれない。
もし、僕がこの気持ちを伝えれば、それ以上になれるかもしれない。
けど、周りにとやかく言われたり、理央がいじめになどあってしまうかもしれない。それがとても怖かった。
けど、早く言わねば、前からそういう素振りを見せている彩が先に仲を更に深めてしまいそうだ。
いっそ理央か僕が女にでもなれたらなぁ、とかこのキャスケットを理央に被せれたらなぁ、とか。
キャスケット大好きな僕は、いつでもノリに乗じて被せれるように大量に常備しているぜ!
そんな事を思いながらちらと時計を見る。
八時五十九分……理央はまだ来ない。あと彩も。
そう思っていると、不意に扉が開く。
やっと来たか……と思いそちらを見ると、彩と息を切らしたかわいい女の子がいた。
…………だれ?
ぽかんとしながら見ていると、女の子は身を捩る。なぜか僕は「おおっ……!」と言ってしまった。
そして、空白を埋めるように、空いていた席に女の子……理央が座る。
は!? え!? ま!?おまおままさか……理央なのか!?
頭の中が混乱した。話を聞いたがあそこはついてるらしい(彩情報)。
ぼ、くの好きな、人が、女の……男の娘に。
チャンスだと思った。
ここから更に親身になって接していき、周りが理央を女と認められれば、今後なにも言われずにこの気持ちを伝えられる!
そして付き合いハッピーエンド!
もう勝利の道は見えた気がした。
理央と、親友以上の関係になる!
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