第17話 クエストの準備④模擬戦
テディ君を店番に残し、ベアッグさんは俺達を店の奥の中庭に通してくれる。お店の裏に中庭を挟んで本宅があり、中庭を運動場みたいに使っているそうだ。
そこは壁に囲まれたテニスコートほどの大きさの
「散らかってて悪いが、勘弁してくれよな」
「いえ、こちらこそすいません。お邪魔しちゃって」
「なぁに、これも仕事のうちだ。それに俺が見たいってのが理由の半分だしな!」
「そっちに刃を潰してある練習用の武器があるから、それを使ってくれ。クリムちゃんは実際に動いたときに、鎧に違和感があったら教えてくれよな」
はい、と少し緊張した様子で返事をするクリムさん。
クリムさんと共に俺とラビー君もそれぞれ刃を潰してある片手剣と小型の盾を借りて、軽く振ったりして具合を確かめる。いかにも練習用って感じだ。
くいくいっと
――ぬこにゃんも参加したいらしい。
「そうだね、一緒にやろうか。ぬこにゃんの装備はどうしようかな……?」
多分、大丈夫だとは思うけど万が一ケガをしないよう、鎧だけ防御力の高い物に変更したほうがいいだろう。
俺はステータス画面を開き、ぬこにゃんの装備を見る。
現在のぬこにゃんの装備はあまり目立たないように、洋服っぽいおとなしめの装備にしてある。
サポートお供の装備も色々な種類のものがあって、こちらもガチ装備から
とゆーか、お供の装備のほうが見た目に関して、圧倒的に色物装備が多い。例えば忍者服やナース服、ロボットやゴーレムの姿のもの、コラボ企画による某有名ゲームキャラクターのマ〇オの服や某有名海賊漫画のチョッ〇ーの着ぐるみ、などといったキャラ物装備なんてのもある。
……普段着としてはハードルが高いw
散々悩んで、俺はぬこにゃんの装備をなるべくオシャレでそれなりに高防御の装備に設定する。
にゃぽんっ♪ という効果音とともにぬこにゃんの装備が、白い羽飾りのついた赤い帽子と赤いサーコート付鎧に変更される。俺の勝手なイメージだけど、三銃士みたいな感じ?
ぬこにゃんの黒い毛並みに鮮やかな赤色のコントラストが良く
「おぉ~、良く似合ってる、似合ってる!」
俺がそう言うと、帽子の両端をつまんで嬉しそうにこちらを見上げてくるぬこにゃん。
「にゃふふ♪」
あ~もう、うちの子ほんと可愛いわぁ! 誰かカメラ持ってきてっ!
俺が親バカ的思考に
「お、おい、今、一瞬で変わったぞ!? どうなってんだ!?」
「あ、え~と……今のは猫妖精の特技なんですよ! すごいでしょ!」
「そ、そうなのか? ……それにその子が着ている装備もすごいな! 洗練された美しさとしなやかな力強さが感じられる!」
ふんすっ♪ と自慢気に胸を張るぬこにゃん。
「ぬこにゃんちゃんにとっても良く似合ってますね!」
「す、素敵な装備です……! か、カッコイイです!」
クリムさんとラビー君もぬこにゃんの姿に驚きつつも感嘆の言葉をこぼす。クリムさんはしっぽブンブンだし、ラビー君は白いウサ耳が興奮したようにピコピコしている。
ああ、ぬこにゃんとクリムさん、ラビー君の三人を並べて写真を撮りたいですっ!
…………。
――ってあれ? あるじゃん! そういえば! 『ハンタークエスト』にはプレイ画面を撮影するスクリーンショット機能が! 普段使わないからすっかり忘れてた!
早速、激写開始だっ!
みんなに褒められてご満悦のぬこにゃん――カシャ!
しっぽブンブンの金髪ワン娘クリムさん――カシャ!
真っ白ウサミミ美少年ラビー君――カシャ!
不思議そうに小首を傾げる三人の可愛い仕草、プライスレス――カシャ!
……ん?
ベストアングルで撮影しようと三人の周りをうろうろし始めた俺に、皆が
いかん、完全に
四、五枚撮影したところで我に返り、慌ててごまかす。
「じゃ、じゃあ、俺とぬこにゃんチーム対クリムさんとラビー君チームで模擬戦闘をやってみましょう! 最初は俺達は防御に専念するので、軽く攻撃してみて下さい」
「はい!」
「は、はい!」
クリムさんとラビー君がそろって返事をすると、二人とも真剣な表情で武器を構える。
「ぬこにゃん、最初は攻撃しないで我慢だよ」
にゃ、と小さく頷くぬこにゃんを確認し、俺はゲーム視点に切り替える。
いつでもいいですよ、と声をかけるとクリムさんとラビー君は少し緊張気味に攻撃を開始する。
俺は繰り出される攻撃を構えた盾でガードして様子を見る。ガードボタンを押せば前面からの攻撃は、スタミナゲージの続く限り自動的に防ぐことができるので簡単だ。あと、ぬこにゃんはちゃっかり俺の後ろに隠れている……だって猫だもの。
しばらく防御に徹してクリムさんとラビー君の動きを観察する。
二人の攻撃はまるで吸い込まれるように俺の盾にガツン、ガツンと防がれる。
最初は二人ともかなりぎこちない感じだったが、俺がことごとくガードするので安心したのか、段々と動きの硬さが取れてくる。
――ガツン!
「すごい、全然ユーキさんに攻撃が届かない!」
美しいブロンドを跳ねさせながらクリムさんが声を上げる。
――ガツン!
「た、たった一人で飛竜を追い払ったっていう話はやっぱり……⁉」
上気した頬に白髪を貼りつけながらラビー君が呟く。
息を
ガツン! ガツン! ガツン! ガツン! ガツン! ――二人の攻撃を連続でガードして、みるみるスタミナゲージが減っていく。そして……
パキンッ! ついにスタミナゲージが0になり俺のガードが解除され、そこへクリムさんの上段斬りが振り下ろされる!
ザシュッ! ――クリムさんの攻撃がクリーンヒットする!
俺の
うん、ゲージは一切減っていない。
我ながらゲーム視点だと本当に冷静に分析できるもんだ。
俺は微笑んだ。
「二人ともお見事! 今のはいい連携攻撃でした! それじゃあ、そろそろこちらからも攻撃しますね?」
俺はぬこにゃんと並ぶと、無造作に剣を構える。俺の前にクリムさん、ぬこにゃんの前にラビー君という形だ。
「ぬこにゃんも準備はいい?」
「にゃ♪」
「それじゃあ、いくよ!」
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