第13話 初めての素材換金

 俺達は一階カウンターのミケーネさんの所で初級クエストの受注手続きをお願いした。

「くれぐれも無理はしないで下さいね。無事にクエストを達成されることを願っています」

 ミケーネさんは丁寧な説明を交えながら手続きを済ますと、そう言って送り出してくれる。

 するとステータス画面に、クエスト【ウッサー村に出没するグレイウルフを討伐せよ!】という文字がババン! と表示される。

 そして俺は気づく。ステータス画面の中にクリムさんとラビー君の簡易ステータスが表示されていることに。

 なるほど、『ハンターズクエスト』と同じようにパーティーメンバーのステータスが見れるようだ。


名前:クリム

ハンターランク:0

攻撃力:-

防御力:5

スキル:採取・調合・追跡

武器:-


名前:ラビー

ハンターランク:0

攻撃力:78

防御力:45

スキル:聞き耳・採取・探知・跳躍

武器:ラビットソード


 貧弱! 貧弱ゥ!

 お母さんは心配です!

 まさに初期装備という感じだ。

 予想はしていたけど、装備が貧弱過ぎる。まあ、駆け出しだから当たり前なのか。クリムさんは鎧を着てないし。

 俺の余りまくっている装備を渡せればいいんだけど……。残念ながら『ハンターズクエスト』では装備やモンスター素材は譲渡できない仕様だ……どうにかならんもんかな?

 ただ、ふたりともスキルを持ってる。亜人さんは種族的にスキルを持っているのかな?

 これは出発前に一度、ちゃんと作戦会議をしたほうがいいだろう。

「一度打ち合わせをして準備をした方がいいと思うんだけど、どうかな?」

 俺がみんなに声をかけるとクリムさんも賛成する。

「そうですよね、お婆ちゃんに報告しないといけないし……。ラビーさんは何処に滞在しているんですか? 良ければ家に来ませんか? 宿代も大変だと思いますし」

「え、い、いいんですか? とても助かります!」

 クリムさんの申し出に喜ぶラビー君。そういえば宿代で思い出した! 持っている素材を換金してもらおう! そうすれば無一文から脱出できる! 旅の道具も買わないといけないだろうし。

「ミケーネさん、素材の換金をしたいのですが」

「素材は奥の専用カウンターで鑑定専門の職員が鑑定してくれますよ」

 早速そのカウンターへ行ってみると、そちらは半個室のようになっていて、俺より一回り小さい身体の年嵩としかさの亜人さんがたたずんでいた。

 目から頬にかけての黒い斑紋はんもんたぬきのようなしっぽには縞模様しまもようが入っている。アライグマ亜人さんだ!

「いらっしゃい、鑑定士のラスクールだ。今日は何を見ればいいのかな?」

 ……名前w 思わずラス○ルって呼んでしまいそうだ!

 気を取り直して、俺は袋から取り出すフリをしつつ、ステータス画面を操作して素材を取り出す。

「狼の毛皮が五頭分なんですが……」

「どれどれ……ほぉ~、随分綺麗な状態の毛皮だ。これなら色を付けて銅貨二十七枚、いや二十八枚出してもいいな」

 最初に出した狼の毛皮を見てラスクールさんがとても感心している。どうやら俺が剥ぎ取りした狼の毛皮は品質が高いらしい。

「凄いな! 全部が非常に綺麗な状態だ。戦闘に関して腕の良いハンターは多いが、剥ぎ取りに関して腕の良いハンターは少ない。君はどうやら本当の意味で優秀なハンターらしい。初めての取引だが、全部で銅貨一四〇枚出そう」

 素材の相場は全くわからないけど、良い値で売れたらしい! やった! 無一文からの卒業だ!

「すごーい! ラスクールさんが褒めてるの初めて見た!」

 ミケーネさんがいつの間にかこちらに来ていて、そんな声を上げる。ユーキ君、只者じゃないわね……とかつぶやいている。そんなに珍しいことなのか。

「あと、こちらの毛皮も見てもらえますか?」

 ついでに『ハンターズクエスト』の素材アイテムを一つ、試しに鑑定してもらおう。モンスターの素材『大赤猿の毛皮』を出す。これはゲーム中盤で出てくる赤色の派手な色をした大猿のモンスターの素材だ。どのくらいの値がつくのだろう?

「おお! これは珍しい! 確か南のほうに生息するスカーレットエイプの毛皮だな! 色艶いろつや共に文句無し。うーむ、これなら……金貨八枚出そう!」

 金貨八枚は銅貨八〇〇枚だから……8万円くらい? すっげ、八万なんてまとまったお金、お年玉でも見たことないよ!?

「それでお願いします!」

 俺は一も二もなく換金してもらうことにした。

 八万円なんてあったらゲーム本体や新作ソフトが沢山買えちゃうじゃないか! ひゃっほう! などとテンションが上がったが、よく考えたら異世界にテレビゲームなんてあるわけないのだ。

 どんだけゲーマー脳なんだよ、俺!

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