百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.9-135 フルレイド『大穴の果てへの参道』 五日目 scene.1
Act.9-135 フルレイド『大穴の果てへの参道』 五日目 scene.1
<一人称視点・リーリエ>
レイドゾーン『大穴の果てへの参道』に突入してから五日目、現在、時刻は三時四十五分を過ぎました。
で、ボク達がいるのは巨大な扉の前――この扉を抜けた先には巨大な
つまり、ここがボク達が目指していた旅の終着地点ということになる。……まだ冒険は続くけどねぇ。
「俊身ベースでしっかり睡眠と三食取って五日か。普通の冒険者ならここまで十日は必要かもしれないねぇ。……それじゃあ行こうか?」
扉を開けて中に進む。中に待ち受けていたレイドボスはボクも見たことのある魔物だった。
翼を持つ巨大な狼――かつて、一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』と呼ばれていたフルレイドランクのレイドボス。
割と初期の方のレイドボスだったから強さはそこまでじゃなかったけど、あのクエストはギミックが面倒だったからねぇ。
鑑定スキルによれば、名称は一なる大穴の守護者『ヴォル=ウルウィング』……まんまだねぇ。もうちょっと捻ろうよ。
「一なる大穴の守護者『ヴォル=ウルウィング』、見た目通り翼を持つ狼だ。一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』時代は空中に浮かんだ六つの足場が繋がったフィールドを舞台に足場から足場へ移動して追いかけながら戦う面倒な敵だったけど、バトルフィールドがこれならそういった煩わしさはないと思う。ゲーム時代は飛び立つ際に翼を打ち振るって突風を巻き起こし、ダメージを与えると共に足場から落下させようとする『
「ってか、なんでわざわざ足場から足場に移動するんだよ?」
「なんでって、基本的に特技のほとんどが別の足場に届かないんだよ」
「空飛べばいいんじゃないのか?」
「飛べる種族ばかりじゃないからねぇ? ボクは飛べたけど」
はい、自分達で設定しておきながらルール無視して一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』と空中戦繰り広げて勝利したゲームブレイカーです。……一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』の面倒臭い設定、考えたのボクなんだけどねぇ。だって面倒じゃん。
「まずはボク達の攻撃でどれくらいダメージが入るか確認を……ってもう勝手に指示出す前に動いちゃっているし」
空歩使って飛行している一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』に迫るラインヴェルドとオルパタータダ、天使の翼と影の翼を顕現してその後を追うアクアとディラン……アイツらボクの言ったこと忘れてない?
武装闘気と覇王の霸気を纏わせた斬撃が連続で放たれ、一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』のHPが面白いくらいに消し飛んでいく……ってか、一方的過ぎない!? まあ、フルレイドクラスのエヴァンジェリン達相手でも互角以上の戦いを繰り広げる陛下達だから当然と言えば当然なのかもしれないけど。
『Eternal Fairytale On-line』ではちゃんと推奨レベルのレイドメンバーで特技連発してようやく勝てるようにデザインしてある。……流石に奥義クラスの特技の連発にフルレイドレベルのボスでは耐えられないんだけど。
時計みたいな課金アイテムを使わなければ単体での奥義連発は不可能。……ちゃんと歯応えがある筈なんだけどなぁ。
いや、寧ろラインヴェルド達の攻撃を諸に喰らって生き延びている一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』の方が凄いのか? あっ、六十秒ごとに麻痺の状態異常を発生させる青い雷で広範囲攻撃を行う『
「……ローザ殿、先を越されてしまったがどうする?」
「ったく、折角ミスルトウさんとメアレイズさんを無理を押し通して勧誘して、メンバーも揃えたのに全部無駄だって言いたいのかよ!? まあ、あの四人だけで暴れても十分に倒せそうだけどあんな指示を出す前に突撃するような連中に遠慮する必要はないッ! ――好きに暴れろ」
「ろ、ローザさんがガチギレなのですよぉ〜!!」
「ま、まあ、気持ちは分からないでもないでございます。……私もちょっとイラッとしていたのでございますが、ローザさんが怒っているのを見てちょっと溜飲が下がったでございます」
ヴェルディエの問いに怒り混じりに答えたらエイミーンに怯えられ、メアレイズに同情された。
「巽風八卦掌!!」
「朧黎黒流・九閃覇突」
「
「
「『
「ルナティック・ムーンライト・ファントム!!」
「
「大噴雷火!」
「夜魔の女王の息吹」
「
「
「魂魄の
「【機械帝神の権能】――全武装一斉掃射ッ!」
「
「武装闘気硬化!
「武装闘気硬化! 万物両断ッ!」
「【獅子連撃】、【大地鳴動】!」
『
「
「
『漆黒無双両太刀・
『
『
『
『
『
『
作戦も何もあったものではないフルレイド全員による総攻撃を浴びた一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』が生き延びられる筈もなく、山のような硬貨と無数のドロップアイテムを落として消滅する。
「さて、これでレイドボスは倒したことだし、扉の証の一つが解放されているんじゃないかな? 来た道を戻ることになるのか、それとも……」
戦闘開始と同時に閉まった扉が解放され、反対側の扉も同時に開く。その先には転移魔法の魔法陣が――いや、まさか二体以上レイドボスが出てくるかと思ったけどそんなことはなく、これで一エリア終了か。
「おーい、どうした親友? 魔法陣乗らねえのか?」
「ごめんねぇ、考え事していて。すぐに乗るよ」
ラインヴェルド達が既に乗っていた魔法陣の上に乗る。どうやら、レイドパーティメンバー全員で乗らないと起動しない仕様みたいだねぇ。
転移の光に包み込まれ、目を開けるとそこはレイドゾーンの入り口のリスポーンゾーンだった。
「おっ、鍵が一つ空いたみたいだな! 青い光を放ってやがるぜ!」
塞がれた通路の壁に青白い光が一つ点灯したのをオルパタータダが目ざとく見つけたらしい。
鍵は残り二つ。恐らく、その鍵も二体のレイドボスが守っているんだろうけど……。
「おい、さっきからどうしたんだ?」
「いや、人数が合わないなぁ、と思ってねぇ。あの感じだとレイドボスは九体。でも、鍵を守っているレイドボスはこの感じだと恐らく三体で、その先のエリアもこの規模だと最初の通路と同程度の広さか、それよりちょっと広めだと思う。……いずれにしても、残り六体が一体ずつ待ち受けているってのはちょっとアンバランスな気がするんだよねぇ」
二つ目の通路を進んでいく。レイドエネミーの顔触れにも変化は無し。
……やっぱり、バランスを考えてもこの先にいるレイドボスは一体だと思う。……となると、最深部へと続く道に出現するのは多くて二体かな?
レイドに出現するボスの数は五体から十体……まあ、レイドの種類によってはそれ以上もあるけど。
そして、レイドボスの数はレイドダンジョンのエリア数と連関している。例えば、『フルレイド:ランザニールの九界楽園』の場合は九つのエリアに九体のレイドボスがいた。
例外的にレイドボス数が多かった『オーバーハンドレッドレイド:銀ノ鍵と門』もエリアの境目が明らかに変わるように設定していたし、「レイドボスの数はレイドダンジョンのエリア数と連関している」という法則から逸脱していることはない。
「……圓殿、一つ思ったのだが、レイドボスが各エリアに必ずしも一体ずつ出現するという訳ではないのではないか? 私達が三十二人で徒党を組んでレイドに挑んでいるように、レイドボス同士も協力し合う――その可能性もゼロとは言い切れないのではないか?」
「プリムヴェールさんの言いたいことは分かるけど、二体以上のフルレイドクラスのレイドボスって、それ六十四人――レギオーレイドが必要だと思うんだけど」
「でも、それはゲームでの常識でございますよね? そもそも、こちら側にはフルレイドのレイドボスクラスの強さを持つ方々もいるでございますし、先程の戦い、ほとんど一方的なものになっていたでございます。徒党を組んで丁度釣り合いが取れる気がしないでもないでございます」
「メアレイズ殿、計算がおかしいぞ。もし、その理論でいけばこのフルレイドのレイドボス全員で徒党を組んでも釣り合いは取れない。……フルレイドのボスが六人に加えて、フルレイド相当が二人、それにラインヴェルド陛下達はある意味でレイドボスよりもタチが悪い強さだ」
「おい、ミスルトウ! まさか、俺達がレイドボスよりも厄介って言いてぇのか!?」
「……まあ、確かにねぇ。それに、仮に徒党を組んでも空間魔法で分断して戦力削れば問題ないか」
「というか、俺達より圓の方がヤバいだろ? こいつ単体で『ファイナルレイド・
「なんでボクに飛び火しているんだろうねぇ? ってか、無傷で生還ならともかくエンノイア戦は何回も死にながら辛くも勝利だし、アントローポスとエクレシアの時も死んでいるからねぇ? 蘇生できなかったら普通に死んでいたよ?」
「……いや、普通ならいくら蘇生しても勝てないものは勝てないと思うのだが」
ミスルトウ達にジト目を向けられた。……はいはい、分かりましたよ。
ボクもレイドボスに匹敵しますよ、って認めればいいんだねぇ。……でも、それを認めても何か具体的に変わる訳じゃないじゃん。まあ、いいけどさぁ。
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