百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.9-136 フルレイド『大穴の果てへの参道』 十日目 scene.1
Act.9-136 フルレイド『大穴の果てへの参道』 十日目 scene.1
<一人称視点・リーリエ>
レイド攻略は順調そのもの。レイド挑戦から十日目にして、二つ目のレイドボスの待つ大部屋前に到着。
このまま挑んでもいいんだけど、丁度十二時になったので昼食を取ることにした。
どうやら、ヴァンヤール森国のエルフ達も大勢第三砦を訪れて昼食を取るようになったらしい。
リーティアナとアレクサンドラが口コミを広げてくれたのが大きいみたいだねぇ。朝食と夕餉の時間はまだまだ人は少ないけど、まあ、朝は割と早めだし、夜もレイドの進み具合によってかなり変動するからねぇ。時間が一定の昼に集まるのは当然といえば当然か。
この食事を通してヴァンヤール森国のエルフ達との交流は増え、蟠りも少しずつだが解消されている。例の一件で、緑霊の森に吸収されることが決まっているし、蟠りはできるだけ消しておきたい。
正直、緑霊の森では結果を急ぎ過ぎたと思う。もっと時間を掛けて説得すれば、【
【
それも含めて三極化する事態に直面しているのが、昨今のエルフ達だ。……まあ、同じエルフ同士でもこれまでも対立は起こってきたようだし、あんまり状況が変わったとは言えないのかもしれないけど、いずれは【
一日目は大鍋で作れる料理だったけど、次第にラインヴェルド達の要求もエスカレート。あんまり同じ料理だと飽きるだろうし、と、手を変え品を変え、気づいたら手の掛かる料理が増え、一度に作る品数も増え……これ、いずれはコース料理頼まれるようになるんじゃない? って思ったよ。まあ、やらないけど。ここレイドゾーンの中だし。
本日はグラタン、ハンバーグなどなどのヘビー級のメインから活き造り、タラのムニエル、煮付け、鯖の銀紙焼きなどの魚料理、スープ系、味噌汁などの汁物も数種類、数種類の野菜や海藻を使ったサラダ数種にご飯、おにぎり、パン、麺類……とにかく品揃え豊富なメニューから好きなものを選んでもらうことにした。まあ、中にはアクアやディランのように選ばず全種類持っていく連中もいるんだけど。
当然、品数も増えれば準備にも手間取るけど、お腹減ったとラインヴェルド達がうるさくすぐに準備をしないといけない。最近は夜にみんなが寝静まった頃、明日の三食の仕込みを……ということも増えて、結果として労力はレイドゾーンに入る前から変わっていない気がする。昨日はレイドゾーンに入ってから封印していた『三千世界の烏を殺し』を使おうかと思ったほどだからかなり重症かもしれない。一応、時間短縮で光の速度まで加速して準備は進めているけど、それでもなかなか大変なんだよねぇ。
とりあえず、全員に食事が行き渡ったところでラインヴェルド達にこれから挑むレイドボス戦に関する重要な通達事項を伝えておくことにした。勿論、猛烈な抗議を浴びせかけられることは想定済み。覚悟はしている。
「さて、今日のレイドボス戦だけど、種類を問わずにジャイアントホール組に討伐を任せるつもりだ」
「おい、そりゃねぇだろ!」
「俺達五日間も頑張ってきたのによぉ!!」
「今回のレイドは元々交互にレイドボスを討伐する予定だった。ジャイアントホール組を手持ち無沙汰にするのも申し訳ないし、レイドパーティの負担を減らす目論みもある。これでレイドが終了って訳じゃないし、次のレイドボスはボク達の担当だ。……それに、このペースで回ると藍晶の参加できるレイドボス戦は今日だけでねぇ。今回のボスをボク達が引き受けて、次のボスを……っていう訳にもいかない。まあ、今回仮にボク達が引き受けたとしても、次回は次回で『俺達が討伐するぜ!』とか言い出すだろうけど、この強欲な国王共は」
「おいおい、酷くね!? まあ、そういうことなら分かったよ。今回のレイドの全権は圓のものだしな」
「異論はないのですよぉ〜。でも、もし、プリムヴェールが言っていたみたいに二体以上出てきた場合はどうするのですよぉ〜?」
「二体なら一体を向こうに引き受けてもらう。三体以上は……ジャイアントホール組でもどうになるだろうけど、流石にヴァンヤール森国への影響を考えると一体が限界だねぇ」
『良かったです。……正直、レイドボスを一体引き受けるという話だけでも恐ろしいのに、その上、二体以上となればどうなるのかと冷や汗が出ました』
ヴァンヤール森国の君主であるリーティアナとしては、ヴァンヤール森国が最優先。防衛のためのレイドがヴァンヤール森国に更なる危険を呼ぶ可能性があるとなれば、恐怖を覚えるのも無理はないか。
「実際、防衛組にはフルレイドパーティに匹敵するメンバーを揃えている。勝手に暴走する奴らがいない分練度も高いし、まず落とされることはないんじゃないかな?」
「「おい、誰だ! 勝手に暴走する奴って!!」」
「鏡見たらどうかな?」
昼食を食べ終え、いよいよ巨大な
ボク達を待っていたのは女の上半身、下半身部分が巨大な蛸のような姿でヘイトリセットや守護獣召喚を繰り出す二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』だった。
「《
二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』が動き出す前に《白刃転移》を使って二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』をジャイアントホールに転移させる。
二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』が消えたことで予想通り扉が開いた。
さて……今日はジャイアントホールの防衛組が全員揃っている。二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』の討伐報告がボク達に届くまでどれくらい掛かるか楽しみだ。
◆
<三人称全知視点>
圓から連絡を受けたスティーリアはレイドゾーンへと続くジャイアントホールの最深部で一人、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』と交戦していた。
正確に言えば、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』が『
大切な主君である圓の意志を尊重し、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』への攻撃は他のメンバーが集まってから行うつもりでいた。
カリエンテ、ラファール、真月、紅羽、レジーナ、ユリア、ミーヤ、ミリアム、藍晶、イリーナ、プルウィア、ネーラ、ヴァルナー、リヴァス、ホーリィ、ヴァーナム、イルワ、セリーナ、ダヴィッド、ヴァケラー、ジャンロー、ティルフィ、ハルト、ターニャ、ディルグレン、ダールムント、ジェシカ、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、榊、槐、椿、榎、楸、柊、日長、月長、玻璃、紫水、翡翠、碧羅、ポーチヴァ、ポーチュラカ……他の面々が到着するまでの間、スティーリアと二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』は無傷で生存し、大勢の魔物達が命を散らして無数のアイテムや金貨を残していった。
『フハハハ! よく我のために見せ場を取っておいてくれたッ! 後は我に全て任せよ!』
『カリエンテ、その馬鹿を取り押さえなさい。圓様は「皆で協力してレイドボスを討伐せよ」と仰いました。わたくしを含め、四十九名全員に見せ場のある戦いを繰り広げなければ圓様にはご満足頂けないでしょう』
カリエンテが渋々と言った様子で、ポーチヴァを取り押さえた。
カリエンテもポーチヴァと同じく前線に立って戦いたいが、一方で圓の思惑も理解できる。レイドボスとの戦いは貴重な経験だ。
できるならば、その経験をより多くの者に分け与え、それぞれが刺激を得て更なる飛躍に繋げられるようにしてもらいたい、そのためにわざわざレイドボスを転送するという面倒な手を使ったのだろう。
圓一人で倒した方がずっと楽なのだ。それをしないのは、多種族同盟の
『
『
鋼鉄並みの強度を持つ特殊な竹と灼熱の炎を纏った刃が激突する。力が拮抗するかと思いきや鋼鉄並みの強度を持つ特殊な竹が綺麗に両断され、続いて至近距離から放たれた『
『苦無連投撃』
続いて月長が無数の苦無を裏武装闘気で作り出し、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』を狙い放つも、脚が全てドリルとなっている冷気を纏った蜘蛛――『
『これではなかなか近づけませんな。瞬撃斬』
全身に雷を纏った鷲獅子――『
『
それに加え、『
一人一人が例え猛者であったとしても無策で挑んで勝てる相手では当然ないのだ。作戦を立てて挑む必要がある。
『突破は困難、でも不可能という訳ではありませんわ。カリエンテ、ラファール、ポーチヴァ、わたくし達で道を作ります。その隙を突いて残る戦力の一斉攻撃で『テンタ・クルーサ』を撃破してください』
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