百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.9-132 ジャイアントホール防衛戦 一日目 scene.1
Act.9-132 ジャイアントホール防衛戦 一日目 scene.1
<三人称全知視点>
圓達がレイドゾーン『大穴の果てへの参道』に突入した頃、ジャイアントホール待機組はヴァンヤール森国の防衛のために魔物討伐に勤しんでいた。
リーティアナとアレクサンドラは圓達をヴァンヤール森国で見送ってから、ジャイアントホールに足を運んだ。
初日はやはりレイド初日ということもあって防衛に参加する面々も全員勢揃いしていた。ヴァンヤール森国の女王としては一人一人と顔を合わせ、ヴァンヤール森国の代表として感謝の意を述べたい。
そして、ヴァンヤール森国で暮らす者の一人として戦いたい――ヴァンヤール森国の民の反対を押し切ってこの危険な戦場に足を踏み入れたヴァンヤール森国のツートップだったが……。
リーティアナ達を待ち受けていたのは、自分達の力が遠く及ばない戦場とすら呼べない蹂躙の場だった。
『モード
赤き翼と尻尾、竜の角を生やし龍人の姿と化したカリエンテが両手に灼熱の焔を纏わせ、ジャブからストレートとパンチを繋げていく。軽い拳ですらジャイアントホールに出現する魔物の中では最も硬い
まあ、そもそもカリエンテはフルレイドクラスまで強化された
『
カリエンテと同じ
武装闘気や覇王の霸気を纏わせることなく放った風の刃が
魔力を込めれば魔法は強くなる。初級クラスの魔法でも本人のポテンシャルにより魔法の威力は変化する。
しかし、理由はそれだけでない。簡単に作り出したように見える風の刃の正体は無数の風の刃を収束させたものだ。「
これほどの魔力操作は風魔法の専門家であっても一朝一夕にはできない。それをラファールは即興で組み上げてしまった。
流石は風の
『フハハハ! 喰らうがいい!
カリエンテとラファールがジャイアントホールの環境に影響を与えないように気を配りながら戦闘を続ける中、全く配慮せずに容赦なく土属性のブレスを放つ
オーバーキルもいいところの攻撃を連発するポーチヴァのすぐ近くで戦うのは山エルフの代表であるポーチュラカだ。
「――汝、六属性の一角を担う水の精霊王よ! 汝、六属性の一角を担う風の精霊王よ! 汝、六属性の一角を担う土の精霊王よ! 今こそ契約に従い、我が下に馳せ参じ給え! 精霊召喚! イセリア! シュタイフェ! ロイーゼ!」
精霊王を三柱召喚したものの、ポーチュラカはイセリア、シュタイフェ、ロイーゼに指示を与えることはなく、それぞれの判断で魔物を討伐してもらうことにしたようだ。
ポーチュラカ自身は「
「
『
『
『
ポーチュラカは回転する無数の爪を模した弾丸を放って魔物を次々と撃ち抜いていく。武装闘気を纏わせた無数の爪の強度は
イセリアは次々と激流を放って魔物の群れを蹴散らしていく。激流は宛ら竜の如く縦横無尽に動くため運良く回避することに成功した魔物達も完全に逃れることはできずに激流に飲まれていく。
更に激流は無数の小さな水刃を多分に含んでいる。ただでさえ高威力の激流に更に無数の斬撃が加わることで威力は倍増しており、並の防御力では到底耐えきることはできない。それが精霊王という水を司る存在から放たれるのだから結果は推して知るべしである。
シュタイフェは無数の暴風を固めて宛ら巨大な鉄槌の如く落下させた。
暴力的な暴風の前では魔物も無力である。巨大なハンマーに上から殴られたように、簡単に押しつぶされて無数の肉塊を散らして命を落とした。
ロイーゼは無数の大粒のダイアモンドを生成して放つ得意技で魔物を仕留めに掛かる。ただでさえ強力な攻撃に更に武装闘気が込められ、尋常ならざる威力と化した金剛石の砲弾は
◆
リーティアナとアレクサンドラが訪れたのはジャイアントホールの中心から最も離れた第三砦の区画だったが、他の第一、第二砦でも同様に魔物討伐が進められていた。
まずは第二砦から見ていこう。
『
『苦無連投撃』
『瞬撃斬』
『紫電閃斬』
日長が灼熱の炎の塊を投げつけて爆発させ、
紫水は雷属性魔法で生み出した紫電を纏わせると空歩を使って上空まで駆け上がり、大振りで剣を振り下ろして
『
聖人の領域に達し、神聖魔法を獲得した翡翠が聖なる光の柱を顕現し、巻き込まれた
『
武装闘気を纏わせた黒刀『魑魅魍魎』に膨大な魔力と霊力を纏わせた碧羅が高速の振り下ろしを放って
ただ、斬り下ろしを放ったにも拘らず傷を負うだけに留まらず魔物そのものが跡形もなく消滅してしまったのは斬撃に込めた霊力によって魔力を爆発的なほどに強化してしまったからだ。
霊力を燃料の如く使うことで闘気で強化された「終焉の光斬」のレベルまで高められた碧羅の斬撃にただの魔物が耐え切れる筈がない。その結果が魔物の消滅である。別に霊力そのものによって魔物が浄化されたという訳ではない。
一つも固有名称を持つ技を持たない碧羅が編み出した唯一にして最大の魔法剣技。霊力も魔力も消費が少ないため燃費もいい。弱点は攻撃を耐えきれない相手では消滅してしまうため、魔物相手の討伐には向かない点だろうか? しかし、今回は討伐がメインで部位証明を求められないため、碧羅は一切出し惜しみなく「
『『『『『『『『『『『『『星砕ノ木刀』』』』』』』』』』』』』
欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、榊、槐、椿、榎、楸、柊は一様に最も使い勝手の良い「星砕ノ木刀」を使い、武装闘気を纏わせて次々と魔物達に斬撃を浴びせて撃破していく。
欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻は霸気も覚醒しているが、使う気配は一切なし。ジャイアントホールに出現する魔物達の底は見切っているので使う必要がないと判断したのだろう。
『そろそろ、この辺りの魔物達も片づきそうね。お義姉様に
『そうね。レイドゾーンの魔物なら少しは歯応えがありそうだわ。でも、戦闘中に電話を掛けるとお邪魔でしょうし、メールを送っておきましょう』
欅の提案を聞いた梛が右手で剣を振るいながら左手で素早くスマホを叩いて圓にメールを送った。
◆
「『ジュワイユーズ流聖剣術 聖ノ型 聖纏魔祓』」
欅達の戦場からかなりの距離を取った第二砦の防衛圏内でミリアムと藍晶は聖属性の魔力を纏わせて『剣聖』の剣技を放ち、魔物の群れを討伐していた。
ミリアムは特に予定がないため全日参加の予定だが、現場監督の仕事のある藍晶は片手で数えられる日数しか参加できない。
ミリアムはこれまでラインヴェルド、オルパタータダ、アルベルト、ルークディーン、ギルデロイ――多くの弟子達に剣を教えたが、最も背中を任せられる安心感を感じる剣士は藍晶だと考えている。
考え方は随分と違うが、不思議と波長があった。そのため、人と魔物――生まれも、過ごしてきた時間も、そこで得た経験も、何から何まで違う中でも長い時を共に暮らしても苦にならなかったのだろう。
ミリアムは藍晶と共に戦えるこの日を楽しみにしていた。願わくば未知なる強敵に藍晶と共に挑みたい。
藍晶が参加できる日数が少ない以上、チャンスは限られているが、その願いは圓に伝えていた。圓も叶えるつもりではいるが、そもそも今回は未経験のレイド、計画した通り物事が思い通りに運ぶ可能性は極めて低い。
期待と不安を抱えつつ、ミリアムは藍晶と共に戦える
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