百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.8-56 優勝祝いのチェイン・デート scene.1
Act.8-56 優勝祝いのチェイン・デート scene.1
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト>
誕生日の二次会もドリームチームトーナメントの閉会式で一区切りついた。
優勝したエヴァンジェリン、ペルちゃん、欅、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻の優勝祝いについては今日中にボクの部屋で希望を聞き、明日以降にプレゼントすることになっている。
えっ、ボクの優勝祝いは? って? 主催者に優勝祝いなんてある訳ないでしょう? ……これってボクの誕生日会だった筈だよねぇ?
まあ、当初の予定通り後で一人誕生日会をするからいいんだけど……って思ったらスティーリアが美味しいチョコケーキを用意してくれていてねぇ。結局、二人で楽しく誕生日を祝えたから良かったよ。
しかし、この日のために頑張ってケーキ作りの練習をしてくれていたなんてねぇ。本当に嬉しいねぇ。
流れ解散になったんだけど、一応主催者だから二次会終了後に参加者へのお礼周りをしていたらソフィスから二次会の埋め合わせのお茶会のお断りをされてしまった。
代わりに七日後、手ぶらでアクアマリン伯爵家に来て欲しいとお願いされたんだけど……気を遣わせてごめんねぇ。
今回のトーナメントは得るものが大きな大会だった。
今後多種族同盟として活動する際に、互いの戦闘パターンや癖を知り、あまり組んだことのない者達同士で連携が可能かどうかを確認できたのは良かったと思う。
それと、
誕生日会が終わり、ゲストが全員帰ったところでボク達は会場の清掃をして、その後ボクは欅達と共にボクの部屋に向かった。
優勝祝いの願いを聞かないといけないからねぇ。
エヴァンジェリンからは迷宮の改造を、ペルちゃん、梛、樒、椛、槭、楪、櫻からは王都を一緒に散策して欲しいと、欅は当日に欅が割り当てられている屋敷の部屋に来て欲しいとお願いされた。
まあ、実質デートのようなものを希望した梛達曰く、「当日は身一つで来て欲しい」とのこと。用意するものは特にないらしいねぇ……しかし、随分と謙虚だねぇ、もっと我儘言ってもいいんだよ。
一通り話を聞いたボクは予定変更をして残った時間をエヴァンジェリンの願い――迷宮の改造に当てることにして、ボクはエヴァンジェリンと共に【アラディール大迷宮】へと向かった。
◆
エヴァンジェリンによれば、最近聖人を目指す者達が【アラディール大迷宮】を試練の場所として利用しているらしい。……まあ、妥当な判断だよねぇ。
そこで、エヴァンジェリンは迷宮を改造して【アラディール大迷宮】をより聖人試練特化のものにすればいいのではないかと考えたそうだ。
「……君も真面目だねぇ」
『ニーズに合わせて迷宮を作り替えていくのも
「……もっと他のことに願いを使ってもいいと思うけどねぇ。まあ、実際にボクも多少迷宮に手を加えておきたいと思っていたから丁度いいよ。いくつかプランも考えていたから」
異世界もののテンプレといえば、迷宮の改造だからねぇ。
難易度自体は大幅に上がる。全千階層の迷宮を縦にも横にも大幅に拡張し、地下二千階層の迷宮へと仕上げる。
勿論、これだけの広い迷宮だから一度の挑戦で攻略することは不可能。そこで、特定の階層まで転移可能な転送装置を設置するつもりでいる。
百階層とか特別なフロアには街とか作ってもいいかもしれないねぇ。この階層まで来た人にしか買えない装備とか、名物料理とか。
とりあえず、今後いくらでも加工できるように余白を残しつつ迷宮を上から順番に改装していく。リアル迷宮リフォームだ! どこかの目つきの悪い異世界転移者が喜びそうな案件だねぇ。
階層ごとにテーマを変えたり、ギミックを設置したり、やっていて楽しかった。
真月の技からヒントを得た時空魔法「三千世界の鴉を殺し-パラレル・エグジステンス・オン・ザ・セーム・タイム-」を使ったからこれだけの大仕事も夜までには終わらせることができた……流石のエヴァンジェリンも呆れていたねぇ。
とりあえず、百階層、五百階層、千階層、千五百階層のボスの間の先にある特別なフロア――市街区については、更地のままでそれ以外のフロアについては魔物を含めて配置済み。これまであった打ち抜き螺旋階段も取り除いて攻略難易度自体は大幅に上がった。
さて、後は市街区だけどビオラ商会、冒険者ギルド、後は多種族同盟諸国首脳達と各宗教団体と話し合いをして決めていかないとねぇ……こっちの方が大変そうだなぁ、特に決定後の具体的なところを詰めていく文官勢が。メアレイズの叫びが聞こえた気がしたけど聞かなかったことにした。
◆
多種族同盟諸国の首脳と各宗教団体トップには昨晩のうちに連絡を入れ、今朝ビオラ商会のアンクワールとモレッティに話をして、ヴァケラーにイルワへの伝言を依頼した。
ラインヴェルドからは「またクソ面白いことしているみたいだな! いいぜ、アーネストが全力でフォローするからな!」とアーネストの胃をキリキリさせそうな本願他力かつクソ野郎な発言を賜り、アンクワールとモレッティからは「本当に休んでください!!」と懇願され、ヴァケラーからは「昨日の今日で本当に何を始めているですか?」と半眼を向けられた。
冒険者関係は、まあ内部に冒険者ギルド施設を置いた方が便利なんじゃないかな? って程度の話だから別段重要って訳じゃないんだけどねぇ。
主な利用者は聖人を目指す動きのある天上の薔薇聖女神教団、兎人姫ネメシア教の二つに絞られるだろうから、新たにエルフを中心に形成されつつある金色の魔導神姫教、
金色の魔導神姫教は魔法系統だし、竜皇神教は竜を崇める団体って感じたからねぇ。
崇めている主神がマリーゴールドとラナンキュラスだから(非公認だし、勝手に連中が崇めているだけなんだけど)、聖人の方に興味を持たないのは当然の流れだねぇ。
まあ、魔法分野で聖属性の魔法に興味を持つ可能性もあるだろうし、宗教問わず成人を目指す者もこの先増える可能性は高い。宗教者の他には特に冒険者にターゲットを絞った動きをしているけど、各国騎士団が聖人による騎士組織というものを構築する可能性だってある。……既に仙人と聖人の領域に到達しているジルイグスもいる訳だし。
さて、本日のメインイベントは優勝祝いのデート擬き。
順番はペルちゃん、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、欅ということになっている。みんなで相談して決めたみたいだねぇ。
今回、ボクは何も持たずに計画も立てずにただ来て欲しいとだけ言われている。……とはいえ、統合アイテムストレージの中に入っているものは常に持ち歩いているんだけどねぇ。
まず、ペルちゃんとのデート擬きの内容は王都の散策だった。
ローザの姿で出歩くのを見られると少々面倒なのでアネモネの姿で桜色のスライムのペルシウムを胸元に抱えて街を散策する。
「ペルちゃん、どこに行きたい?」
『一度王都の名所巡りをしてみたいと思ってましたので、ご主人様と一緒に巡れたら嬉しいなと思いまして』
「そーいえば、名所巡りとかしたことなかったねぇ? ペルちゃんが良ければ名所巡りにしよっか?」
『ありがとうございます、ご主人様♡』
ポヨンと嬉しそうに腕の中で跳ねる。可愛いねぇ、ペルちゃん。
さて、名所巡りか……ブライトネス王国の王都で名所というと、初代国王テオノア=ブライトネス時代に建築家が作った王都広場の噴水と、ブライトネス王国で演劇を国家事業にまで押し上げた四代国王陛下が建造した
王都には闘技場みたいなものはないからねぇ……王都を離れれば大きな領地とかだとあるのかもしれないけど、剣闘士文化はないし。
ここ最近のものを入れる、となればビオラ商会が出資して建てた複合劇場施設の
まあ、見慣れたブライトネス王宮はわざわざいく必要もないだろうし、王都広場の噴水と
さて、プランは決まったねぇ。いつまでもここにいても仕方ないし、出発しようかな?
◆
王都広場の噴水にはとある言い伝えがある。後ろ向きにコインを泉へ投げ入れると願いが叶うというまあまあありきたりなものだけどねぇ。
コインを一枚投げ入れれば再び王都に来ることができる。二枚投げ込めば商売繁盛と出世の夢が叶う。三枚投げ込めば大切な人と永遠に一緒にいることができる……まあ、どこぞの国の泉の言い伝えに似ているものだけどねぇ、誰が設定したんだか?
この噴水から王宮へと続く王都中央通りには半分ほどまで出店が立ち並び、祭りの日でもないのに様々な屋台が出されている。
適当に五枚(二枚プラス三枚)のアーカムコインを投げ込み、あんまり信じてないけど祈願しておく。ペルちゃんが「ご主人様とずっと一緒にいられますように」と可愛いことを言ったので頭をよしよしと撫でてあげた。
そのまま屋台を巡って鹿肉の串焼きを二人で一緒に食べたり、どこぞの誰かが広めた綿飴とかベビーカステラを食べ歩いたりして楽しんでいたんだけど……。
「おっ、アネモネじゃねぇか! 珍しいな、お前がここに来るとか?」
……なんでいるんだよ? ラインヴェルドとバルトロメオ。
「あっ、アクアとディランなら二人で食べ物巡りに行ったぜ?」
……あっ、アクアとディランも来ていたんだねぇ。
屋台のおじさんは特に気にせず、ラインヴェルドにナチュラルにたい焼きを手渡している。……凄い胆力だねぇ。
「あの、国王陛下? どうしてここにいるんですか? もしかしなくてもサボりですか?」
「おい、コラ! ここで俺を敬称で呼ぶな。一応、俺達はお忍びで来ているんだから陛下はやめろ! いいか、バレたら騒ぎになるだろーが! ……この店主は昔馴染みだからいいけど」
「あら? わざとですわよ? 騒ぎを起こしてラインヴェルド様とバルトロメオ様を揃って王太后様のところ送りにして差し上げようかと思いまして」
「……クソ過ぎる! ローザ、流石にそれはキツいぜ」
「私のことはアネモネとお呼びください。このタイミングで身バレさせたらぶっ殺しますわよ? ……まあ、今回は見逃すよ。で、なんと呼べば?」
「バレないように俺のことは『ラインヴェルド』と呼べ。バルトロメオは王弟じゃなくて『バルトロメオ』って呼べよ。それでバレないから」
「まあ、それでバレないからな。王弟の名前がバルトロメオだって知っている奴なんてそういねぇだろ?」
「前々から思っていたけど、それ高確率で諸バレするからねぇ。……お久しぶりです、ゲルノアさん」
「お久しぶりです、アネモネ師匠。その節はどうもありがとうございました。おかげさまで繁盛しています。特にカスタードの鯛焼きが人気ですね」
「あれ? 知り合いだったのか? ってか、師匠なの?」
「バルトロメオ様、本気で知らなかったの? この辺りの屋台は随分前に梃入れさせてもらってねぇ、その時に色々メニューを提案させてもらったんだよ」
まあ、感謝されるような話でもなんでもなくて、ビオラ商会で料理方面に融資してスイーツや食事が充実してきたことで屋台の売り上げが減少した――その件で抗議に来たのがゲルノアさん達だったんだけど、その時に住み分けを提案して、屋台には屋台の良さがあるからそれを活かせる料理を提案していったって訳。
この通りの屋台はほとんどボクの手が入っているし、店によってはビオラ商会のお金も入っている。……まあ、そこから更に独創性を出していっているんだけどねぇ、彼らは。
『ご主人様、凄いです!』
「本当に凄いよな、お前達のご主人様って。……しかし、珍しいな。ペルシウムと二人で何やってんの? デート?」
「ほら、例のトーナメントの優勝祝いだよ。ペルちゃんからは王都の名所散策を提案されたんだけど、後
「グサグサ言い過ぎじゃねぇ? まあ、いっか、事実だし。……まあ、名所ってそうねぇよな? でも、
「……それも、考えたけどねぇ。歴史ある名所じゃないし」
『……あの、ご主人様。お願いを変更してもいいですか?』
「うん? どうしたの?」
『僕、ご主人様のことを実はあまり知らなかったんですね。……僕はご主人様がこれまでどんなことをしてきたか、頑張ってきたか知りたいです。……申し訳ございません』
「おっ、それいいじゃねぇか!」
「……本当はこのクソに同意したくないんだけど、ボクもペルちゃんがそれでいいならいいよ? 楽しんでもらいたいし、それにずっとペルちゃんには頑張ってもらってきたからねぇ。……大したものではないけど、ボクが関わったお店とか巡ってみようか?」
ボクはそこでラインヴェルド達と別れ、ペルちゃんと二人でこれまで融資したお店などを巡った。……本当にこんなことでいいのかと思ったけど、ペルちゃんも満足みたいだし、まあいいかな?
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