百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-76 竜の巫女と古代竜の会場入り〜神祖の兎人族vs火竜帝の古代竜〜 scene.1
Act.5-76 竜の巫女と古代竜の会場入り〜神祖の兎人族vs火竜帝の古代竜〜 scene.1
<一人称視点・ネメシア>
真紅の鱗に覆われた巨大な翼竜がボク達を睥睨していた。その圧倒的な威圧感を前に会場に来ていた獣人族のほとんどが怯えていたけど、ヴェルディエは冷や汗を垂らす程度で済んでいた……本当胆力あるねぇ。或いはボク達にあってから鍛えられたのか?
その後ろからもう一体の翼竜が姿を現す。獣人族達からは「またドラゴン!? そんな、我々はここで滅ぶのか!?」と世紀末を前にしたような恐慌状態に陥っているけど、アクア、ディラン、プリムヴェール、マグノーリエの四人はここでようやく合点がいったようで「だからその竜がリルディナ樹海に現れたのか」と安心した様子で武器から手を離した。
『我が名はカリエンテ=カロル・ヴルカーノ! ヴォルガノン火山に棲まう火竜帝の
「やぁ、久しぶりだねぇ、ナトゥーフさん。そっちは前に話していた竜の巫女の女の子かな? えっと、名前は……聞いてなかったねぇ」
「はじめまして、パパの娘のオリヴィア=ドランバルドです。パパに素敵な名前をつけてくれたのってお姉さんなんだよね? ありがとう!」
その天使の微笑みに撃沈したのが約一名――「相変わらず相棒は本当に小さくて天使みたいに可愛い子が好きだよな」と慣れた手つきでハンカチを取り出してディランがアクアの鼻血を拭き取っている。この二人は
「それで、ナトゥーフ=ドランバルドさん? なんで、
『……うーん、ボクも頑張って交渉したんだけどね。「ナナシがなんと言おうと
……というか、もしかしてそのドラゴンの姿で行ったの? 騒ぎになっていないといいけどねぇ、王宮。
「とりあえず、そのナイフは地面に突き刺せばいいと思うよ。……しかし、アーネストさんも大変だねぇ。今度甘いものでもご馳走しないとねぇ」
『甘いもの? ボクも食べたいなぁ』
「あっ、オリヴィアも!」
「はいはい、後で用意するからねぇ。その前にこの会場の周りで出店が出ているし食べてきたらどうかな? 後でお祭り好きの二人も来るみたいだしねぇ」
『「お祭り好きの二人?」』
ナトゥーフの刺したナイフを中心にして《
「あっ、決勝戦終わっちゃったの? 乱入して掻き乱してやろうと思っていたんだけどな……そしたらクソ面白くなっただろ?」
「相変わらずクソ野郎なのですよぉ〜。でも、娘とプリムヴェールさんの試合が終わっているから別にどうでもいいのですよぉ。どうせ、やる前から決着が見えている試合ですしぃ、とっとと屋台に行って美味しいもの食べるのですよぉ」
「……エイミーン様、なんでここに」
「……お母様、恥ずかしいからやめてください!」
二人は獣王決定戦の結果を見越して、同盟の話を詰めるために表向き来たんだろけど、実際はラインヴェルドがあわよくば決勝戦に乱入、エイミーンが屋台巡り目当てだよねぇ。……クソ陛下、乱入したら戦い仕切り直しになるからねぇ、流石にクソ野郎でもそこまで面倒なことはしな……い? いや、人があたふたするのを見て楽しんでいる人だから、多分やるだろうな。
『おい、貴様ら! 我を放置するとはいい度胸だなッ! ローザ=ラピスラズリとやら! 貴様に決闘を申し込むッ! 我が炎で貴様を消し炭にしてやる!!』
「アクア、ディランさん。二人ともお腹減っているんじゃない? 金貨あげるからこの二人とナトゥーフさんとオリヴィアを連れて屋台巡りつつジーノさんに声を掛けてきてもらっていいかな? プリムヴェールさんとマグノーリエさんはお腹いっぱいだよねぇ?」
「流石にお腹いっぱいです。……すみません、お母様をよろしくお願いします」
「私もお腹いっぱいだ。……この二人はどれだけ食べられるのだ!? アクア殿は一体その小さい体のどこにあれだけの食べ物が消えていっているのだ!?」
プリムヴェールが戦慄するのも無理ないよねぇ。アクアとディランの食べっぷりは尋常じゃないし。
『だから我を無視するなと言っておろうがッ!! 矮小な人間、いや、今は最弱の兎人族だったか? 我の圧倒的な力を前に平伏すが良いッ!!』
「うるさいねぇ……平和的な話し合いをしたかったけど仕方ない。そこの赤い交戦的な蜥蜴、ボクは別に君を従えるつもりはない、ただ協力関係を築けたらいいねぇ、と思っていただけなんだよ。でも、そんなに戦いたいならボクの恐ろしさを思い知らせてあげるよッ! 別に
『おのれッ! 矮小な人間が我を蜥蜴呼ばわりするなど……我を愚弄した代償、高くつくぞ!』
カリエンテが大きく息を吸い込み……おいおい、ここでブレス吐くの!? どんだけ見境ないんだろうねぇ。
「琉璃、真月! 延長戦みたいだから、実況と解説頼んだよ。――「E.DEVISE」起動、『異世界ユーニファイドサーバー』へのログイン成功を確認、「
『わ、分かりました! 会場の皆様にお知らせです! たった今、獣王決定戦の延長戦が決まりました! ご主人様に挑むという無謀な戦いを始めるのはヴォルガノン火山に棲まう火竜帝の
◆
『我が炎の前では全てが灰塵に帰す!
カリエンテの口から炎の球が放たれ、上空で炸裂すると無数の炎の球と化して降り注いだ……ボクしかいないのに広範囲攻撃とか意味ないよねぇ。
「闘気昇纏・武装闘気!」
武装闘気を纏わせた拳で炎の球を殴り消しながらまずはカリエンテのいる闘技場の中心部を目指す。カリエンテは闘技場の上空に居座っているけど、「
『なっ、
カリエンテの周囲に赤い魔法陣が出現して、そこから大量の炎の槍が雨のように降り注ぐ……だから、なんで広範囲攻撃? どこの世界に蟻を殺すのに戦車を持ってくる奴がいるんだよ……いや、用心に用心を重ねて高火力で殲滅するのは別にいいんだけどねぇ。ほとんど当たらない、かつ対処できる攻撃をなんで広範囲で放ってくるんだろうねぇ? ブレス放った方がよっぽど建設的だと思うけど。
「八百万の神祇に捧ぐ御神楽舞!
神職系四次元職の神子が習得する奥義を発動し、ダメージ遮断の効果のある障壁と一回だけあらゆるダメージを無効化するバリアを張り、体力を全回復した上で三百秒間永続する数秒毎の回復を自身に付与し、味方一人の全ステータスを上昇させる聖女の特技を勇者ではなくボク自身に付与し、爆発的な踏み込みにより一瞬でトップスピードに達し、相手の間合いに入るおおぐま座α星の名を冠する鬼斬の技でカリエンテの真下に到達する。
「
武装闘気を纏わせた武闘家系二次元職の格闘家が習得する光り輝くオーラ状のエフェクトを纏った武器で打ち抜くか切り裂く特技で火の槍を両断し、「
『ヌッ! まさかここまで跳んでくるとは! 最弱の兎人族としてはなかなか戦えるようだな! だが、そんな見え見えの攻撃、我には通じぬぞ!』
あっ……避けられたねぇ。いくら速度を上げても流石に見え見えの軌道だと避けられるか。
「魂魄の霸気――《天ツ巫女姫》」
チャイナドレスのようなボディコンシャスなワンピースから巫女の衣装に変わり、背中に現れた光背が翼代わりとなってボクを空中に留まらせる。
まさか、ネメシアで打てる奥の手を決勝戦じゃなくてカリエンテ戦で使わされることになるとはねぇ。
会場の獣人達から向けられる熱の篭った視線から目を逸らし、カリエンテと正対する。
『我の独擅場たるこの上空に足を踏み入れるか! 余程死にたいようだな! ならば、終わらせてやろう!
おっ、遂にブレス放ってきたねぇ。勿体ぶらずにとっとと放ってくれば良かったのに。
炎のブレスじゃなくて、溶岩流を猛烈な勢いで放ってくるタイプのブレスみたいだねぇ……溶岩ってケイ素や金属物質が入っているけど、それってどこから来たんだろうねぇ? 溶岩を食って金属物質やケイ素を溜め込んでいる……とは思えないし、口元に魔法陣があるから魔力を変換して溶岩流ブレスにしているのかな?
「《金烏・天磐戸開き》」
両掌の間で生み出した光線に覇王の霸気を混ぜ込んで溶岩流ブレスに向かって放つ。
太陽の象徴たる光の奔流と、大地の血液たる溶岩の奔流が激突して優ったのは金烏の光線。
『――な、なんだとォ!?』
広がりながら攻撃範囲を拡大させた光の奔流は溶岩流を丸ごと飲み込んで消し飛ばし、そのままカリエンテに命中した。……これで撃破したと思ったんだけど、なかなかしぶといねぇ。かなりダメージを受けたみたいだけど、まだ飛べるみたい。
地面に落下して「飛べねぇドラゴンはただの蜥蜴だ」って言ってやろうと思ったのに……ボクとしたことが目算を見誤ったねぇ。
『ぐぬぬ、こうなったら! 次で貴様の最期だ!!
全身の鱗に炎を纏って遥か上空まで飛翔――そのままボク目掛けて急降下して突撃してきた。……ブレスといい、それといい、最初から使えば良かったんじゃないかな? 攻撃の的はこんなに小さくて絶世の兎人族のお姉さんなんだし。
「阿修羅刹降龍拳!」
でも、そんな見え見えの攻撃じゃ、迎撃してくれって言っているようなものだよ?
武闘家系四次元職の武闘帝の習得するフィニッシュ技の奥義を発動し、竜のエフェクトが出現すると同時に、のけ反るような宙返りを決め、空中に身を置く状況であることを忘れてしまったように物理法則を無視して縦の回転を加速させていき、そこから突きと蹴りを暴風雨のように放つ。
武装闘気と覇王の霸気を纏わせた手や脚から繰り出される攻撃に成す術なく、火達磨のカリエンテは攻撃の嵐に見舞われながら地上に落下した。
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