百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-69 獣王決定戦開戦〜模擬戦を含めて全試合、実況の琉璃と解説の真月でお送りします〜(3) scene.1 上
Act.5-69 獣王決定戦開戦〜模擬戦を含めて全試合、実況の琉璃と解説の真月でお送りします〜(3) scene.1 上
<一人称視点・ネメシア>
「……な、なんなんだ、その強さは!? お前らは本当に兎人族なのか!?」
結局、アクア達が全く手加減しなかった結果、死体が山のように積み上がり、生き残った僅かなメンバーがさっきまでの威勢はどこへやら、固まってブルブル震える中、イベント職の聖女が習得可能な最上級の範囲蘇生魔法「
「狐人族のお姉さんもいるっスよ? しっかし、この
「弱過ぎて拍子抜けなのでございます。闘気と仙術で強化すれば狼人族や猩々人族、梟人族や虎人族、熊人族や蛇人族もいった武闘派にも勝てるのでございますね」
最弱と侮られ、蔑まれてきた兎人族の族長と妖術さえなければただの雑魚と陰口を叩かれてきた狐人族の族長に揃って見下され、あっという間に頭に血が上った獣人族の若者達がラウンドⅡを始めかけているけど、六人相手にしたって勝ち目はないと思うよ?
面倒なので覇道の霸気を気絶しないギリギリのレベルで放って再び戦意を砕く。
「それでどうしようねぇ、コイツら。このまま帰ったら任務失敗、闇討ちの証拠を消すために処分されるだろうし、無傷で戻れば裏切り者扱いされて粛清される。君達が生き残るためにはボク達を抹殺しないといけない訳だけど、力量差分かったでしょう? さて、君達はこれからどうする? 一、ボロボロになった風を装って帰って闇討ちの証拠を消すために処分される。二、このまま無傷のままで逃げ帰って裏切り者であると疑われて粛清されるか、弱者の兎人族と狐人族、人間に恐れをなして任務を放棄して逃走した臆病者として同胞から白い目で見られ惨めに生きる。三、ここでボク達に再選して今度こそ命を落とす。好きなの選んでもいいよ? まあ、どれも嫌っていうなら第四の選択肢もあるけど」
「…………第四の選択肢か。そいつは、俺達に首輪をつけて奴隷にするってことか?」
「そんなつもりはないよ? 奴隷とか要らないし、寧ろブライトネス王国に蔓延っていた奴隷の風習を破壊して他種族と友好関係を築くために活動しているボク達が獣人族を隷属させるなんて示しがつかないし、ああいう制度には嫌悪感しかないからねぇ。まあ、どうしても働きたいってのなら雇われるって選択肢もあるし、起業する気なら融資も吝かじゃないけどねぇ。……ボク達は真剣に獣人族と人間の関係を修復したいと思っている。そのためにやることはしてきたつもりだし、大きな障害は全て排除したつもりだよ? 人の中にある差別意識ってものは残念ながらすぐに消えないから日にち薬に頼るしかないけど、マグノーリエさんやプリムヴェールさんをはじめとするエルフは人間と同盟を結ぶことを自分達で選んでくれた。別に獣人族に同盟を強要するつもりはない。ボク達に干渉しないで欲しいというのなら、ボク達は二度と君達に関わらないことを約束する。勿論、エルフとの交易を盾にするつもりはないから、ボク達と同盟を結ばなかったとしてもエルフとの交易はこれまで通り続けて問題ない、ってことでいいんだよねぇ?」
「はい、お母様も獣人族がどのような選択をしても交易は続けるつもりだと仰っていました。これまでの縁で獣人の皆様が危機に瀕した場合はエルフも戦力を派遣しますが、人間も同盟を組んでいない場合はアネモネさんを始めとする人間側の戦力を当てにすることはできなくなります。……ただ、アネモネさん達人間と組んだからこそ危険な目に遭う可能性もあるので、どちらがいいかは分かりません。ただ、エルフはそれでも人間と同盟を結びました。その方がいいと私達が思ったからです……ただ、今でもそれに納得できず、あの手この手を使って人間を根絶やしにしようと策を弄している愚かなエルフもいるようですが」
まんまイーレクス達だねぇ。まあ、こいつらの処遇はエルフに一任にしているからよっぽどのことがない限り関わる気はないけど。
「それで、第四の選択肢なんだけど、どうせ戻ったって立場が悪くなるんだから、この一件が片付くまでボク達の側につかないかって話。君達を裏で動かし、イーレクスに出場権を与えた同盟反対派の族長達は闇討ちが失敗したとなれば自分達が動くしかなくなるでしょう? しかも、
「……この程度の戦力、だと!?」
「だって実際君達は負けているじゃないか? ご自慢のパワーも力任せに滅多矢鱈に攻撃していても仕方ないよねぇ? 力をコントロールして、的確なタイミングで使うからこそ意味があるんだよ。君達みたいな恵まれた身体能力を持つ種族がパワーで劣るヴェルディエさんに負けるのも彼女が力をコントロールする武術を心得ているから。それでも、君達が兎人族に勝てたのは圧倒的な力があったから。逃げ足と隠業で攻撃する術を持たない彼らに勝つことは実に簡単だったと思うけど、その彼らが身体強化の術を手に入れ、力の扱い方を学んだらその仮初の強さは意味をなさなくなる」
「……確かに、俺達は負けた。いくら力があってもその力を使いこなすことができなければ意味がないということか」
そういえば、ヴェルディエが嘆いていたねぇ……『最近は強さというものを履き違えているものが多いのじゃ。ただ何も考えず力を振るうことではなく、その使い方を考え、制御するのが真の強さなのじゃ。更に言えば妄りに力を振るうのではなく、己を律し、守るためにその力を振るうのが本来の武術なのじゃ。今は年寄りにも若者にもそれを理解していない者が多過ぎる。そもそも、強さとは一つの物差しで測れるものではない。肉体的なものだけが、強さではないにも拘らず、腕っ節の強さだけで強さというものが決まってしまう。だからこそ、必要な人材が登用できず、衰退の一途を辿っている……せめて、儂が現役であり続けられる限りは獣王で居続けなければならんのぉ。もし、獣王の地位までそのような奴らの手に落ちれば獣人族という共同体は崩壊し、人間から受けてきたような差別を今度は獣人族の中でするようになってしまうじゃろう……いや、既にもうそうなっておるか』って。
まあ、力で捻じ伏せるってやり方も、兎人族や狐人族が強くなれば不可能になるだろうけどねぇ。そうなれば、兎人族や狐人族からこれまで自分達がしてきたことの報いを受けることになりかねないし……まあ、メアレイズ達はそんなつまらないことをするような人達じゃないけど。
「で、君達はどうしたいのかな? 選択肢は四つ、好きなのを選ぶといいよ。ただ、敵対するっていうなら次は命を奪いに行くけどねぇ」
「「「「「「「「「「もう敵対しません!!!!!」」」」」」」」」」
ということで、結局ボクが提案した四つ目の「嵐が過ぎ去るまで身を隠す」ということに決まった。……うん、無駄に意地張って「命を賭けてもお前らを殺す!」にならなくて本当に良かったねぇ……死体の処理とか面倒だし。
「また奇襲受けても面倒だし、ここに念のため結界と奇門遁甲を使っておくねぇ」
「承知致しました。ローザお嬢様の術式が破られることはまずあり得ないとは思いますが、もし仮に破られても獣人族の皆様には指一本触れさせませんのでご心配なく。ローザお嬢様、アクア――お二人の健闘をお祈りしております」
陰陽術の「奇門遁甲」を発動し、「護光結界」と「遮音結界」を張ってから、ボクはアクア、ディラン、プリムヴェール、マグノーリエと共に会場に戻った。
◆
『第三回戦を始める前に業務連絡です! つい先程、現獣王のヴェルディエさんからのご提案で第四回戦のルールを一部変更することが決まりました。それに伴いトーナメント表からゴリオーラ選手、オルフェア選手、ウルフェス選手の三名を除外しました。第四回戦では、この三名のチームとこの第三回戦第一試合の勝者――ご主人様かアクア選手がぶつかることになります! 試合外で闇討ちを行うほど勝利に貪欲なお三方なのですから、三対一という提案も快く受けてくださることでしょう』
琉璃、かなり怒っているみたいだねぇ……言葉の節々に嫌味が込められているよ。
『ちなみに、この勝負に関しては勝者が敗者に一つだけ言うことを聞かせられる権利を与える特別ルールが採用されるようです。良かったですね! その後のトーナメントに関してですが、万一お三方が勝利した場合はトーナメント表を再調整することになりますのでよろしくお願いします! それでは、第三試合第一回戦! 開幕です!』
闘技場の中央でアクアと対峙する。あのバトルロイヤルからアクアは更に強くなった――さて、どれくらい強くなったのか楽しみだねぇ。
「……お嬢様、バトルロイヤルの時は負けましたが、あの時から私も強くなりましたわ! この勝負、私が勝ちます!」
「――剣で勝負してあげられないのは残念だけど、ボクだって負けるつもりはないからねぇ! ボクの武術の使い手としての本領――見せてあげるよ!」
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