百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜
Act.5-48 最奥のガーディアン〜迷宮統括者の暗黒戦乙女〜
Act.5-48 最奥のガーディアン〜迷宮統括者の暗黒戦乙女〜
<一人称視点・リーリエ>
「これは……とんでもない力を得てしまったようじゃのよう」
近辺の魔物は全て討伐し、とりあえず目ぼしい素材を全て回収した頃、ヴェルディエが呟いた。もしかしなくても『
「しかし、本当にいいのか? 敵に塩を送ってしまって。儂は獣王決定戦で獣王を目指すライバルの一人じゃぞ」
「ライバルじゃないよ? そもそも、ボクは獣人族の皆様に同盟のご提案に来ただけであって、獣人族がボク達との同盟に反対ならそれは致し方ない話だからねぇ。そりゃ、勿論願わくば獣人族と交易して貴重なスパイスを取引したいけど。獣王決定戦も成り行きで参加が決まったけど、ボク達が勝ったら無条件で同盟を結ぶってのは不本意だからねぇ。自分達の進む道は自分で決めるべきでしょう? ボク達は獣人族を支配するためにこの国に来た訳じゃない、対等な友好国として共に歩みたいという思いを伝えに来た訳だからさ。付き合う相手は誰かに強制されるものじゃなくて、自分達で選んでいくものでしょ、それと同じ。それに、どっち道ヴェルディエさんは開国派だからねぇ。ヴェルディエが勝ったって結局、ボク達の願いは成就するんだから問題無いんだよ」
「…………難儀な性格じゃのう」
「緑霊の森のエルフにもローザは同じスタイルを取っていた。私達はローザ達と――ブライトネス王国と同盟を築いた……が、それを私達はユミル自由同盟に強制するつもりはない。例え、ユミル自由同盟がブライトネス王国と同盟を結ばなかったとしても緑霊の森はユミル自由同盟と取引を続けるつもりでいるとエイミーン様は仰っていた。……そうでしたよね、マグノーリエ様」
「ええ、確かにそう仰っていました。これからも獣人族の皆様とは良き隣人でありたいと思っています。……私達エルフもこの選択が正しかったか、間違っていたのか、その結果は今も分かりません。だからこそ、獣人族の皆様には自分達で自分達の未来を選んで頂きたいのです。……勿論、獣王決定戦に出場するからには、ベストを尽くすつもりですが」
「まあ……そりゃ、俺と相棒と陛下を纏めて相手して余裕だった
「今回はリーリエじゃなくてネメシアで出場させてもらうよ。エルフの時にマリーゴールドを選んだように、最終的には関連種族で相対したいからねぇ……まあ、そうなるとドワーフの時はどうするんだって話なんだけど」
「ネメシア……か。あのウサミミ殴り僧侶は色々な意味で獣人族のトラウマを量産しそうだな。……俺達はまあ、慣れているから大丈夫だが」
「そんなにもそのネメシアやらは恐ろしいのか?」
「ほとんど素手で、殴られても、蹴られても、複雑骨折しても、顔面をボコボコにされても、即座に傷を癒して笑顔で拳を振るってくる、この世界では
「それは…………恐ろしいな」
全く、アクアもディランも失礼だよねぇ。ネメシアは癒し系のウサミミお姉さんイメージなんだよ? ……ちょっと露出度がお高めだけど。
そういう一見ぽやぽやしているお姉さんに限って実は強いってテンプレだよねぇ。
「そうだねぇ……どう転んでもいいように、ヴェルディエさんには闘気の使い方を知っておいてもらいたいねぇ。余計なお世話だとは思うけど」
「何から何まで忝いのぉ。そうじゃ、代わりに獣人族に伝わる気功――勁の技術を伝授しよう」
「嬉しい話だけど、なんとなく分かるからねぇ。呼吸法や重心移動、星の重力、身体内部の操作、意識のコントロール、これらを複合的に絡めつつインパクトの瞬間ではなくて、超密着した間合いから重い攻撃を打ち込むという技術だよねぇ。何回か
「その通りじゃ……しかし、数度見ただけでその技術の根幹を読み解けるものかのぉ?」
「ローザお嬢様ならその程度のこと朝飯前ですわ。ローザお嬢様の双眸はまるで照魔鏡の如き観察眼――その眼はあらゆる技術の根幹を解き明かし、それが身体的に可能であれば習得してしまう。お嬢様であれば、私の喧嘩殺法もそのまま模倣してしまえるでしょう」
「まあ、できると言っちゃできるけど……あれってアクアの馬鹿力……じゃなかった、見た目に似合わない力があるからこそあそこまで強力な訳だからねぇ。……漆黒騎士団のメンバーは基本的に馬鹿力……じゃなかった、とんでもない身体能力を持っていると思うけど」
ジト目を向けながら「馬鹿力って言いやがったな。しかも二回も。やっぱり、お前俺達のことを脳筋だって思っているよな! 俺達はウォスカー=アルヴァレスじゃねえぞ!」と心の中で叫んでいるアクアとディラン……いや、あの漆黒騎士団団長補佐は本当に別次元だと思うよ? あのランデス=R=S=エラルサに匹敵する意味不明な思考回路しているし。……その癖、出会った瞬間にボクら強さのピラミッドを見抜いていたからねぇ……実際、黒幕だったら化野さんの方が強いんだろうけど、彼って肉弾戦の方はからっきしだからねぇ。……ちょっとズレたねぇ。
「そうだねぇ、どうしても見返りが必要だということなら……この闘気っていうのは未だに全てが解き明かされていない技術なんだよ。だから、ヴェルディエさんにはこの闘気の開拓を手伝ってもらえたら嬉しいねぇ。幸い、ヴェルディエさんも『王の資質』があるみたいだし、今発見されている大きく三つの派生系も習得できそうだからねぇ」
「やっぱり、獣王になるようなお方は『王の資質』を持ち合わせているものなのか?」
「……うーん、プリムヴェールさんの解釈は微妙に外れているように思えるねぇ。別に確率が高いというだけで上に立つ人が必ず『王の資質』を持ち合わせている訳じゃないんだよ。ただ、『王の資質』を持つ人の元には自然に人が集まる……それと、より強い人のもとに『王の資質』を持つものも惹かれるように思えるねぇ。アクア、ディランさん、お父様……クソ陛下のもとにはこれだけの『王の資質』の保有者が揃っているからねぇ。まあ、ボクもその末席に座らせてはもらっているけど」
「なんかどうにも腑に落ちないよな? クソ陛下、バルトロメオ、ヴェモンハルト、カノープス、アクア、俺、エイミーン、マグノーリエ……全員どう考えてもお前を中心に集まっているじゃねえのか、これ」
……いやいや、それはないでしょ、ディラン。一国の国王よりも強い『王の資質』って一体何!? ボクはただの前世が投資家の悪役令嬢です!
◆
【アラディール大迷宮】の地下千層はこれまで辿り着いたどのボスの間よりも圧倒的なプレッシャーを感じた。柱の彫刻や巨大な扉から考えても、想定した通りこの
あるとすれば、この下にもう一部屋。何かの宝物が隠されているボーナスルーム的なものはあるかもしれない。
ゲーム的な世界観ならキリのいい階層でダンジョンが完結するか、ボスの間が設定されていることが多いからねぇ。そして、この迷宮でもそのルールから外れたボスの配置が行われていなかったことは、八百層まで穴を掘る間に確認し終わっている。
「それじゃあ、開けるよ」
片手で扉を押すと簡単に開いた。武装闘気すら纏っていないのに……やっぱり
中は円形の闘技場になっている。その中心には漆黒の
『ようこそ迷宮へ。私はこの迷宮の
ガゴゴゴゴ……と音を立てて扉が閉まった。あっ、ボス戦でお馴染みの逃げられない奴ねぇ。
「また、つまらぬ物を斬ってしまった……ゼヨ」
まあ、そんな迷宮の仕様に付き合ってあげるつもりは更々ないけどねぇ。
『漆黒魔剣ブラッドリリー』に武装闘気を纏わせ、斬鉄剣で扉を斬る要領で素早く剣を走らせる。
呆気なく扉が切り刻まれて崩れ落ち、外の色とりどりの金属結晶に彩られた世界がポッカリと姿を表した。
「……雰囲気が台無しになったのぉ」
「まあ、ローザさんですからね。とりあえず、退路は確保できましたね。……それで、どうします?」
「勿論、エヴァンジェリンさんを倒すよ? ちょっと琉璃と真月を預かっていてくれないかな? ボク一人で戦ってみたいし」
小さくなった琉璃と真月をプリムヴェールとマグノーリエに預けると、『漆黒魔剣ブラッドリリー』と『白光聖剣ベラドンナリリー』を比翼のように構えた。
「おう、それじゃあ俺と親友は外の魔物狩ってくるぜ! 行くぜ相棒!!」
「行くか、ディラン」
想定されていないラスボスの間からの脱走に『はっ?』と一瞬面食らってから『逃すか!』と二人を追いかけようとするエヴァンジェリンだけど――。
「君の相手はこのボクだよ? さあ、勝負しようか!」
『くっ……まずはお前を倒して、奴らを追いかける! 何人たりともこの迷宮からは決して逃がさん!!
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