Act.5-12 第一回異界のバトルロイヤル 一日目 scene.1 中

<三人称全知視点>


 漆黒の竜巻は黒い稲妻を纏いながらヌル・リヴァイアサンに命中し、ヌル・リヴァイアサンの胴体に大ダメージが加わる。

 これまで一撃で倒してきたため、全く気にしてこなかった全ての敵に存在するHPバーが半分を切り、ヌル・リヴァイアサンから僅かに湯気が立ち昇った……気がした。


「――ッ! 来るか!!」


 ヌル・リヴァイアサンがその場で回転を始め、全方向に何度も波を放った。

 一回転して全方位に波を放った一度目の攻撃よりも遥かにダメージは大きい……が、バルトロメオは壁に張り付いて上手く激突ダメージを無効化した。


 が、間髪を入れずにヌル・リヴァイアサンの尻尾に小さな魔法陣が展開され、バルトロメオの周囲に泡が生まれて爆発し、HPを減らす。

 更にヌル・リヴァイアサンがその大きな口をガパッと開け、口の前に魔法陣が生まれ、真っ直ぐに一条の青白い水が物凄い速さで放たれた。


(――ッ! いくらなんでもアレに当たったら負けるだろッ!!)


 咄嗟に左に泳ぎ、バルトロメオは間一髪難を逃れる。


(これならどうだ? 魂魄の霸気!!)


 バルトロメオの魂魄の霸気の形は《剣》。無数の剣を顕現し、縦横無尽に攻撃を仕掛けることができるというものだ。

 その一本一本に武装闘気と覇道の霸気を付与し、ヌル・リヴァイアサンに同時攻撃を仕掛ける。


(まだまだ! 風刃円斬、武装闘気硬化、覇道の霸気付与!!)


 と同時に、風の円形の刃を放つ風魔法を発動し、武装闘気と覇道の霸気を付与してヌル・リヴァイアサンへと解き放った。

 無数の剣に貫かれ、最後に黒く染まった雷を発する風の円形の刃を受けたヌル・リヴァイアサンのHPバーは空になり、黒い粒子となって散っていった。


 それに伴い、溜まっていた水が全て抜けていって中央に大きな宝箱が現れる。


「これがローザが言っていた報酬って奴か?」


 「Lリリー.ドメイン」内で使える青いウィンドウを開いてランキングを確認し、五ポイントが付与されているのを確認したバルトロメオは、宝箱を開けた。


-----------------------------------------------

【ユニークシリーズ】(『World Sphere on-line』)

 単独でかつボスを初回戦闘で撃破し、ダンジョンを攻略した者に贈られる攻略者の為だけの唯一無二の固有装備。

 一ダンジョンに一つしか存在しない。

 譲渡は可能だが、譲渡した場合は装備に施されたあらゆる強化が消去されて初期の状態に戻る。


『溟渤のマフラー』

【HP+20】

【MP+5】

【STR+5】

【VIT+20】

【AGI+50】

【DEX+20】

【INT+5】

スキル:【幻影・蜃気楼】、【破壊成長】


『溟渤のコート』

【HP+30】

【MP+5】

【STR+20】

【VIT+30】

【AGI+100】

【DEX+20】

【INT+10】

スキル:【大海嘯】、【破壊成長】


『溟渤のスリーピース』

【HP+60】

【MP+5】

【STR+5】

【VIT+60】

【AGI+100】

【DEX+5】

【INT+5】

スキル:【慈愛の湧水】、【破壊成長】


『溟渤のシューズ』

【HP+10】

【MP+5】

【STR+5】

【VIT+10】

【AGI+60】

【DEX+5】

【INT+5】

スキル:【水流噴射】、【破壊成長】


『深海のダガー』

【HP+60】

【MP+60】

【STR+150】

【VIT+5】

【AGI+5】

【DEX+50】

【INT+5】

スキル:【泡爆】、【破壊成長】

-----------------------------------------------


「……あー、前にローザが言っていた『World Sphere on-line』って奴の特別な装備品か……というか、これ本当に貴重品じゃねえの!?」


 高槻斉人とフルール・ドリスがタッグを組んだ第二十九作『World Sphere on-line』。

 前衛的な「E.DEVISE」での失敗を経た結果、他社に遅れて開発されることとなったヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグル)とセットになったVR対応ゲーム機器「Play Gimmick」用のVRソフトとして開発された。


 キャラクターメイキングはこれまでと同様に自由度が高く身長、体重、年齢、三サイズ、髪型、容貌に至るまで幅広く選択可能。

 更に、パーツの数もこれまでよりも大幅に増やされている。


 チュートリアルでは大剣、片手剣、盾、槍、メイス、杖を選択可能で、その後初期ステータスを設定することが可能となっている。ただし、ジョブ制ではないため途中でビルドを変えることは可能となっているものの、これまで振ってきたステータスに応じて成立するビルドと成立しないビルドが存在するため、無策でステータスを振ることは推奨されていない。

 また、装備ごとに装備に必要なパラメータの最低値が決まっていることが往々にしてある。


 チュートリアルで手に入る武器以外にも様々なものが存在し、それらはゲームを進めるうちに入手又は購入が可能になる。


 通常の魔法は巻物、特技は煌短剣アーツナイフで習得することができ、巻物や煌短剣アーツナイフはショップで売っている他、高位のものはレイドなどで入手することができる。チュートリアルで杖を選んだ場合は巻物が三つおまけでついてくる。

 また下級の魔法を極めたり、アレンジしたりすることで上位の魔法を解放したり独創魔法を作り出すことや、武器攻撃職でもモーションを設定することで独創技を開発することは可能で、自分の使える範囲の技術を組み合わせて一連の技として使う連鎖チェインと呼ばれるシステムも搭載されている。


 一方で、魔法・特技の他にスキルが存在し、これらは様々なプレイ中の様々な挙動によって手に入れることができる。

 例えば、魔物の捕食や何度ダメージを受けるなど……その種類と入手方法は千差万別。


 第二回アップデートの際にはクランシステムが搭載され、最大百人までという制約があるもののクランを結成することが可能になった。


 『Clans in the wilderness』のプレイヤーの傾向を参考にしつつ運営側の趣味が詰めに詰め込まれた【運営達の悪巫山戯】が数多く搭載されており、その多くが超高難易度の条件を満たす必要があり、また内容の多くも矛盾したもののため(一度も死なない/今までに一万回以上リスポーン)、全てを習得するためには余程ゲームの内容を熟知している必要がある。


 世界には階層が設定されており、特定の迷宮を攻略することで上の世界を目指すことが可能となる。基本的に上の階層の方が広くなり、難易度も向上していく。


 と、大まかな内容はこんなところだ。ユニークシリーズはそのゲームに登場する特別な装備品で、原則として全サーバーで一つしか存在しない。

 まあ、全てのダンジョンのユニークシリーズが回収されても、次のアップデートで下階層のダンジョンの追加や世界拡張が行われるため、初心者がユニークシリーズを手に入れられない状況になるということはなかなかないのだが……。


 また、どこかの防御に極振りした化け物プレイヤーがいるVRMMOとは異なり、ユニークシリーズ自体は譲渡可能で、マーケットで法外な価格で取引されることもある。


 バルトロメオが手に入れたユニークシリーズは、その中の一種で入手には鍾乳洞窟の最奥にある地底湖に潜り、地底湖を経由してのみ行くことができる水晶の洞窟の最深部にある水晶の湖に棲まうボスモンスター、白い巨大魚を討伐する必要があるというかなり面倒な方法を取らなければならず、一層にありながらもかなりの時間放置されていたという貴重品だ。


 ちなみに、ヌル・リヴァイアサンのモデルとなったリヴァイアサンは、『Clans in the wilderness』に登場するリヴァイアサンをモデルとしており、『World Sphere on-line』には登場しない。

 他のボスモンスターもそれぞれ異なったゲームにデータ元があるのだが、参加者の中ではローザだけ(つまり設定した本人)しか、その仕様に気づくことはないだろう。全くもって無駄に凝ったシステムである。


「こりゃ確かにやべえな。……他のユニークシリーズを手に入れられる前に倒すか、或いはユニークシリーズを独占して戦力強化を防ぐか、いずれかはしないといけねえだろうな」


 バルトロメオは装備の効果を確認して、その恐ろしさを実感すると、その優位性を失わないために他のプレイヤーのユニークシリーズ獲得を阻止すべく行動を開始する。


「さて、どうするか?」


 目の前には砂漠、雲、火山、本の四つの意匠が施された魔法陣が存在した。間違いなく、これがエリアを移動する魔法陣なのだろう。


「それじゃあ、相性のいい火山エリアに行くか!」


 バルトロメオは火山の意匠が描かれた魔法陣に乗り、転移する。

 その魔法陣の場所は、奇しくもバルトロメオの兄――ラインヴェルドが転移した場所、溶岩島であった。



 〜バトルロイヤル 三時間経過時点の成績〜


一位 バルトロメオ +5p(エリア:溶岩島)

二位 アクア +2p(エリア:極乾砂漠)

三位 ラインヴェルド +1(エリア:溶岩島)


四位タイ エイミーン ±0(エリア:???)

四位タイ ミーフィリア ±0(エリア:???)

四位タイ ディーエル ±0(エリア:???)

四位タイ モーランジュ ±0(エリア:???)

四位タイ シモン ±0(エリア:???)

四位タイ メリダ ±0(エリア:???)

四位タイ ヴェモンハルト ±0(エリア:???)

四位タイ ミスルトウ ±0(エリア:???)

四位タイ プリムヴェール ±0(エリア:???)

四位タイ イスタルティ ±0(エリア:???)

四位タイ ローザ ±0(エリア:???)

四位タイ ディラン ±0(エリア:???)

四位タイ スザンナ ±0(エリア:???)

四位タイ ホネスト ±0(エリア:???)


五位タイ ジルイグス -1(脱落)

五位タイ ペルミタージュ -1(脱落)

五位タイ マグノーリエ -1(脱落)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る