1話

 目の前をドラゴンみたいなのがひいてる馬車が、土煙りを上げながら通っている。


「すげぇ。ここが、異世界か!!」


 思わずさけんでしまった。

 どうやらここはどこかの村のようだ。


「まじですげぇ。ドラゴンがいるぞ?魔法とか使えんのかな?あ⁉︎あっちには獣耳もいるぞ!?」


「うるせぇ!!」


 驚いて俺はふと後ろを向いた。

 そこにはいかにも役場に働いているようなイケメンの男の人が立っていた。ちょっとムカつく顔だと失礼ながら思ってしまった。服は、俺の世界でいうスーツ?っぽいものを着ていた。


「誰だお前?見かけない顔だなぁ?この村のやつじゃないな?どこの出身だ?」


 あぁ。やばい。なんて答えよう。とりあえずここは...


「はい。遠くの東の国の日本というところから来ました。」


「ニホン⁇聞いたことないなぁ。その服もなんか妙だし...。職業は?」


 え?なに?おれ職務質問でもされてんの?いきなり⁉︎

 まぁ、この世界で学ランなんて来てたら怪しまれるよなぁ。


「いえ、なにもやっていません。ですが、冒険者を志望しています。」


「そうか...。ならば、この村の中央にある冒険者ギルドに行くがいい。そこで、冒険者カードと魔法詠唱カードを作ってもらえ。」


 なるほど。この人親切だなぁ。

 俺はそんなことを思った。


「そうだ。自己紹介が遅れたな。俺の名前はキットだ。どうぞよろしく。職業は剣士と治安隊員だ。」


 治安部隊?俺の世界でいう警察のことか?まぁ多分そんなところだろう。


「俺はカズキだ。親切にありがとう。これからもよろしく!」


 キットと握手を交わした後、早速俺は冒険者ギルドに向かった。


 歩き始めると、学ランのポケットからなんかジャラジャラした音が聞こえてきた。

 俺はポケットからそれを取り出して見てみた。


「なんだこれ?」


 何やらお金みたいなものが入っていた。金色のコインが10枚ほど入っていた。どれくらいの価値なのかもわからないが、とりあえずこの世界で使える金貨なのだろうと思った。...???あれ?


 そこで、俺は重大なことをおもいだした。


「ああっ⁉︎《ブーストセイバー》!!」


 俺は急いで身体を探った。


「ない!ない!ないっ!!俺の《ブーストセイバー》!!」


 あまりにも大きな声で叫んだもんだから周りの人がみんな俺に注目する。


「ねぇねぇ、あのお兄ちゃん。変だよー?」


「ほらっ!そっち指ささない。」


 そうなるよな。こんな変な服着てて、大声でさけんだらそうなるよな。


 俺は一度冷静になった。多分、あの女神が、俺を転生させる前に渡すのを忘れていたんだろう。

 あぁ。こうなるならあの時ちゃんと確認しておけばよかった。

 恨むぞ、あの女神!!


 俺はとても後悔した。


 そうやって歩いているうちに、俺は冒険者ギルドらしき建物の前まできた。


 その建物は石のブロックでできていて、少しコケも付いていた。そして、気になるのは、何やらとても美味しい匂いがしているのだ。


 ここ、本当に冒険者ギルドであってんのか?と、扉の前でうろちょろしていた。


「ねぇ、邪魔なんだけど。そこ、どいてくれない?」


 驚いて、後ろを振り返る。

 すると、何やら冒険者なのだろうか?そこそこ大きな袋を持っていて、いかにも魔法を使いそうな杖ととんがり帽子の女の子が立っていた。


「ねぇ。聞いてる⁉︎」


 やべぇ、怒らせちゃった。


「あぁ。ごめん。すぐにどくよ。あの、一つ聞きたいんだけど、ここって冒険者ギルドであってるの?」



「そうだけど。わかったらさっさとどいてちょうだい。私、今メンバー集めで忙しいの。」


 あ。これはチャンスだ。

 俺はこの子に案内役を頼もうと思った。


「俺、さっきこの村に来たばかりでさ。冒険者になりたくてここにきたんだよ。それでさ...!!」


 俺が話している途中に、俺の顔にその女の子がものすごい勢いで近づいてきた。

 思わず俺は話すのをやめてしまった。


「じゃあさ、じゃあさ、私がいろいろお手伝いしてあげるからさ、私のメンバーに入ってよっ!お願いお願い〜!!」


 俺が言おうとしてたことを言ってくれた。このチャンスは逃すわけにはいかない。


「本当⁉︎俺も今同じようなことを考えていたんだよ。奇遇だね。」


「やった!!じゃあ決まりね。」


 その女の子はものすごい笑顔だった。

 俺はその笑顔にドキッとした。


 あれ?なんかドキドキする...

 やばい。一目ぼれってやつかっ!?


「おうっ⁉︎よろしく。俺はカズキだ。」


「カズくんね。私はセリア。大魔法使いをやってるよ。セリって呼んでね!!」


 いきなりあだ名でよばれて、ものすごくドキドキしたが、なんとか平然な顔を保つことができた。

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