孤独な誕生日

会いたい

39歳の誕生日

その男は昼過ぎに仕事を終え帰宅した。

「お誕生日おめでとう」は母親と姉と彼女からのメールのみ。

彼女に会いたかったが昼の仕事が残業になるので無理とのこと。

「俺の誕生日でさえ会ってくれないのか・・・」

溜息を洩らしスマホを取り出す。

「次はいつ会えるのかな？」

返事は来ない。

夜のお店に出勤の日でないと会えない彼女。

夜のお店に出勤の日でないとメールが来ない彼女。

彼女…

お金を払わないと会えない女。

男は一人で行きつけの純喫茶で食事をした。

寂しい30代最後の誕生日

孤独なのはいつもと変わらない。

その男はふと昔を思い返す・・・

「10年前の今頃。

人生初めて出来た彼女に誕生日を迎える前にメールで振られた。

あれから一人。

あの頃と何も変わってない。

今まで誕生日に誰とも過ごしたことはない。

今更どうにかなるとも思えない」

一人コーヒーを啜りながら、誰かとの待ち合わせのために

時間を潰しているかのように装いつつただ時間を過ごした。

「期待なんかするな。俺は俺

これが俺らしい生き方だ」

スマホが一瞬振動し、彼女から「会いたい」とメールが来た。