第五章 狂った筋書き
――――
辺りは闇に包まれていた。
――夢を見ているのだ、と思った。誰もいない、何もない、果てさえない闇の中で、紫杏は林崎を探していた。
どこにいるの? どこへ行ってしまったの? 探しても、探しても、彼の姿は見つからない。彼は消えてしまったのだ――紫杏の前から。
嫌だ。こんなの悪い夢だ。そうに決まってる。現実じゃない、ただの夢。でも、それならどうして、目が覚めないの……?
知らないうちに、頬を涙が伝っていた。
――私がいけないんだ。私が何も出来なかったから、だから林崎くんは消えてしまった。一人で行ってしまった。どうしていつもこうなんだろう。いつもいつも、あとから悔やんでばかり。
紫杏は歩き続けた。
ああ、林崎くん――お願いだから戻って来て。もしまた会えたら、その時こそ、その時こそ私は……。
足下にぽっかりと穴が開いた。叫ぶ間もなく、紫杏は落ちた。
――私は、二度と、あなたのそばを離れない。
「林崎くん――!」
泣きながら、彼の名前を呼んで――そこで、目が覚めた。
「あ……」
紫杏はベッドの上に身を起こし、激しく喘いだ。
「……夢……」
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