第20話 ウルトラマングレートについて

 オーストラリアで制作されたウルトラマングレートですが、全十三話という短さながら非常にまとまった作品であると思います。

 いわゆる第一部『ゴーデス編』、第二部『大怪獣編』と僕が勝手にわけているのですが、これだけでもかなりメッセージ性も強くアクションやストーリーにも深みのある作品でしょう。


 物語の始まりは火星の調査を行っていた主人公ジャック・シンドーと友人のスタンレーがゴーデスと呼ばれる怪獣が現れる。それを追うようにしてウルトラマングレートが登場し、両者は戦闘に。

 そのさいに、ジャックは巻き込まれ負傷。ジャックは友人のスタンレーを逃がす為、自分を置いていくように諭し、宇宙船での脱出を促すのですが、スタンレーはゴーデスの攻撃を受け宇宙船が破壊されます。

 途方に暮れるジャックを救ったのはグレートでした。

 そして彼らは一体化して地球に降り立ち、すでに暗躍していたゴーデスとの闘いに身を投じるのです。


 ここで面白いのは主人公ジャックとグレートは一体化しつつも、個別の精神を持っていて時々会話をしているんですよね。ただ、他人には二人の会話は意味不明で、グレートの声は聞こえないので、ジャックがいきなり独り言を話すみたいな風にみられちゃうんですよね。

 そのほかにも防衛隊に参加するかどうかでちょっと言い合いをしたり、怪獣に対するスタンスでもめることもあるのですが、基本的にグレートはジャックの意思を尊重するのです。


 対するゴーデスはそのインパクトある見た目から結構人気な怪獣じゃないかと思います。邪悪なエネルギーの集合体ともいえる存在で、グレートによって倒されたかに見えたゴーデスは細胞単位で逃げ出し、地球にいる怪獣や人間たちを操って暴れさせるのです。

 ここでもジャックとグレートの意見の相違があって、ジャックとしては(やるときはやるんですが)怪獣たちはゴーデスに操られている、助けられるものなら助けたいというスタンスで、グレートは倒さなければならないと結構ドライなんですよね。

 この関係はのちの平成シリーズであるコスモスにも似通っています。

 またウルトラマンは地上では三分間という活動限界がありますが、グレートでは地球の環境悪化のせいでという一風変わった理由が設けられました。このあたりはさすがはオーストラリアといったところでしょうか?


 グレートは先にも述べた通り、倒さなくて済むなら倒さないという一定の考えがあり、ゴーデスに操られた、もしくは生み出された怪獣の中には倒されることもなく、いずこへと去っていく怪獣、環境をよりよくする為に働いてくれる怪獣もいました。

 そしてゴーデスとの決戦では、冒頭で死んだと思われていたスタンレーが再登場し……


 そんな第一部を終えて、第二部ではゴーデスという共通の敵ではなく、歴代ウルトラマンに沿った単発のストーリーが続きます。

 ですがここでも怪獣とは倒すだけにあらずという考えがあって、例えば地球で静かに暮らしたいだけという夫婦の宇宙人が出てくるのですが、これが結構コメディで好きなエピソードなんですよね。

 もうなんつーか夫婦末永く幸せに! ってなります。まぁ旦那さんのやらかしは結構なもんですが、愛する妻を助ける為ならそりゃあそうしますよねって感じ。

 なお、なぜか日本版だとバッドエンド風な最期になる予定だったとか?


 そのほかにも森林開発に怒った森の守護神が暴れたり、農薬で怪獣となった昆虫が暴れたり、科学者をそそのかして地球を侵略しようとする植物がいたり。

 一癖も二癖もある怪獣たちが登場しますが、何よりグレート最大の敵は……地球でした。


 ここで、コダラー、シラリーという怪獣がラストを飾ります。

 コダラーは地球の海底奥深くに眠る怪獣、シラリーは宇宙の果てからやってきた怪獣。この二体は地球の環境汚染を進める人類を抹殺するべく『地球』が呼び寄せた怪獣なのです。

 そう、地球そのものが人類を抹殺するべく動いたのです。この二体のパワーは圧倒的でコダラーはグレートを倒し、シラリーは迎撃で打ち込まれた核ミサイルすら無力化して見せました。

 人類最後の時、グレートは、ジャックは、人類はどうなるのか!?

 それはぜひともみなさんの目でご確認ください。


 グレートは環境メッセージというものが随所にちりばめられていますが、実はドストレートな説教臭い話はあんまりないんです。確かに農薬うんぬん、森林開発がどうのとかはあるんですが、まぁこれもエピソードの一つとしてみればよくある話に収まりますし、気を付けようねぐらいで終わります。

 ですが、最終回にぶち込んできた地球そのものが人類を処すという選択を下していたというのはなかなかにどぎついインパクトがあるんじゃないでしょうか。

 よくよく、地球の意思は人類を救ってくれる、ヒーローに力を貸してくれるという展開があるなから、むしろ真っ向から敵対ですからね。

 多少、駆け足な部分もあるのですが、十三話という話数の中でこれらの要素が喧嘩することなく綺麗にまとまり、ウルトラマンをしていたのを見るとグレートは初心者にもおすすめしやすい作品かもしれません。

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