第17話 ウルトラマンレオについて

 ウルトラマンといえばM78星雲の光の国からやってきた宇宙人である。 

 というのはウルトラマンを詳しく知らない人でも聞いたことはあると思います。近年では全く別の出身地のウルトラマンも珍しくはない、そもそも出自がよくわからない人たちもいますが、昭和の頃にはすでにこのM78星雲出身ではないウルトラマンたちがいました。

 そうです、ウルトラマンレオ、そして弟のアストラですね。

 彼らはしし座L77星雲の出身で、ウルトラマンに非常に近しい種族という設定でした。このあたりはいくつか外伝作品などで掘り下げられることがありますね。


 レオ兄弟はその星で王子として暮らしていたそうです。ですが、そんな星もとある宇宙人たちによって滅ぼされ、レオは弟と生き別れ地球にたどり着きます。

 そこでレオはおおとりゲンという名で生活を始めていた……というのが基本にあります。

 ただレオがいつ頃からおおとりゲンとして活動していたのかは不明なんですよね。まぁこのあたりは別に突っ込むような話でもないんですけど。


 そんなレオが地球で平和に暮らしている間、地球の防衛を任されたのはなんとウルトラセブンだったのです。前作、ウルトラマンタロウにおいて主人公であるタロウが旅に出てしまったので、急遽やってきたとかなんとか。

 そしてセブンは地球防衛と同時に防衛軍であるMACの隊長としても活躍していました。

 ですが、セブンに絶体絶命のピンチが訪れます。地球を侵略しにきたマグマ星人という宇宙人。実はレオの故郷を滅ぼした宇宙人であり、こいつが使役するのが双子の怪獣であるレッドギラス、ブラックギラスでした。


 でまぁこの怪獣が強いのなんの、セブンは足の骨を折られるという重症を負い、レオも初戦では歯が立たずという結果でした。

 そう、ウルトラマンレオはウルトラマンが華々しく戦うのではなく、泥臭く、敗退の中で修業を積み、乗り越えるという一種のスポコン要素があるのです。

 この背景にはどうやら当時のカンフーブームもあったとのことですが、実際のところはどうなんでしょうね?


 さて、変身すらできなくなってしまったセブンの跡を継ぎ、地球防衛のために戦うこととなったレオ。前述したとおり、彼は怪獣や宇宙人との闘いの初戦で敗退する、もしくはなんとか追い払うことで敵の弱点を突くための特訓をセブン=ダンと行うわけですが……これは界隈では有名な話ですが、特訓の方法がもうほんとそれ特訓? 殺す気でやってない? みたいな連続なんですよね。

 まぁ元々戦士としての訓練も心構えもできていないひよっこを育てるにはスパルタじゃないといけないってのはあったんでしょう、たぶん……でもジープで追いかけるのはまずいですよねぇ?

 一応、レオは宇宙拳法の達人という肩書があり、実際、格闘アクションはなかなかに見ごたえのあるものです。時にはヌンチャクなどを使うこともありましたね。


 レオの苦難はこれだけではありません。

 これまでもたびたびレオを助けに来てくれた弟、アストラの様子がおかしい。アストラはなんとウルトラマンたちの故郷、光の国からウルトラキーというものを盗み出したというのです。

 それを追って歴代のウルトラマンたちもやってきて、さぁてんやわんや。

 危うくレオ死亡、地球と光の国も全滅しかけるという大惨事でしたが、それはババルウ星人という敵の罠であり、アストラに化けていたという話でした。

 その後、レオとアストラは誤解が解け、ウルトラマンキングによってウルトラ兄弟に迎え入れられるというわけです。


 また前作のZATが和気あいあいとしていたのとは打って変わり、MACはちょっとぎすぎすしてるんですよね。レオ=ゲンに辛く当たる他の隊員が大半なんですよ。

 まぁこのあたりは中盤、さすがにまずいと思われたのか緩くなっていって、ゲンも他の隊員と談笑したり肩を寄せ合って仲良くしたりするシーンがたびたび挟まれるんですが……なんとこの防衛隊、壊滅します。

 終盤、とでもいえばいいんでしょうか。今でいう新章突入という区切りの初回で、なんの手立てもなくMACは基地もろともシルバーブルーメという円盤怪獣に飲み込まれてしまいます。

 そのシーンがえらい生々しくて、隊員たちが戦闘機に乗って脱出しようとするんですが、その先が怪獣の口の中で絶叫を上げながら飲み込まれていくんですよね……しかもゲンの地球でのガールフレンドや友人、そしてその家族までもがシルバーブルーメによって殺されてしまいます。


 これはメタなことを言えば当時の経済的な問題もあったそうです。予算削減というところですね。なので、ごっそりと役者を減らして、ついでに防衛隊も消したというわけです。

 この時、ダンも生死不明となるのですが、のちのシリーズでは無事が確認されました。どうやらウルトラの母が助けたという設定らしいですね。


 防衛隊も友人も失ったレオは悲しみに暮れる暇もなく戦いを続けます。彼に残ったのは近所の仲のよい少年だけで、一応、知り合いの家に居候することにもなるんですけどね……。

 とはいえ孤独な闘いです。助けてくれる防衛隊も隊長もいません。一応、MACとは別の防衛軍がたびたび援護を行ってくれたりもしますけど……あとたまにキングが助けてくれます。


 いわゆる円盤怪獣編から、レオは格闘技だけではなく光線技を多用することになります。それまでも一応、使えてはいたんですがスペシウム光線などのような必殺技と呼べるものはありませんでした。

 ですが、終盤では結構色んな光線技を繰り出し、最終回ではなんと惑星すら破壊する攻撃までできたりするんですよね。


 ウルトラマンレオは当時のブームにあやかった部分もありますが、M78星雲出身ではないとか、格闘技の達人であるとか、他のウルトラマンには見られない特徴的な頭部デザインだとか、双子だとか色々と新機軸の設定も多かったです。

 またぎすぎすしたばかりではなく、ストーリー内でも愉快な話は多かったんですよ。

 日本の民話、童話をモチーフにした明るい話ですね。鶴の恩返しとか一寸法師とか。

 問題なのはそういう明るい話が終わった直後のストーリーが防衛隊全滅というのはなんともねぇ?

 メタな事情があるのでそこはしかたないですけどね。


 そして当初の路線からの何度かの変更。現場も結構混乱してたんじゃないでしょうか?

 しかしながらレオはその生い立ちなどから根強いファンも多いのも事実です。

 特に師匠でもあるセブンとの関係はその後もクローズアップされ、のちのシリーズでは大きな役目も果たしました。

 このように昨今の多様なウルトラマン像はレオからの派生とも考えてもいいでしょうね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る