二.愛雨

8.光明

暗い。


何も見えない暗闇の中に俺は一人でいる。

手に持つ短剣が、冷えた温度を手に伝える。

己の存在を意味する、俺の力。

人の血は、かつての仲間や親であろうと同じ温かさを与える。

その温かさは、俺を凌辱し乏した奴らの皮膚より確かなものだ。


返り血を浴びる度に俺は俺の輪郭を手に入れる。

刃を振るう度に俺は自分の進む方向を知る。

死体が失っていく命の熱を奪って俺は命を得る。


これ以外に何も要らない、知らなくていい。

もうずっと、このまま。











そうやって生きていたのに。











その光は、泣きたくなるほど温かく、強く、美しく、儚かった。











その光を、手放すことなんて考えられない位に、俺は知らず救われていたのだ。

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