6.断罪

一通りの仲間が集まった所で、拠点に戻って話し合うことになった。魔法で拠点にどこでも転移出来るというのは便利だなといつも思う。


「じゃあ、まずもう本題に入るけど、さっきの彼をどうするかっていう話ね」

コールが話題の先陣を切る。

「やはり危ないからこのまま生かすってのは反対だな」

「あえて殺すまでしなくてもいいんじゃ」

「万が一があったら困るだろう」

「せめて敵の情報は炙りだそうよ」

様々な意見が飛び交う。やはり大事をとるべきだ、という意見が多かった。

そんな中、ぱん、と手を叩いたのはアカネだった。

「うん、まぁ私もみんなの意見に賛成だけどさ、私は意見を聞くべき人がいると思うよ?二人ほど」


「...ちょっといいかしら」

アカネの声の後に続いて声を上げたのはエルサだった。

「彼は、私の幼馴染...いや、だからと言って何か同情する権利はないのだけど、責任の一部は私にも存在すると思うの。あと、少しは他の人より彼のことは分かるつもり」

そう言うと彼女は私の方を向いた。

「今回の件、彼を止めたのは知っての通りモークシャなんだけど、その止め方について、皆に一回聞いて欲しいんだ」

「...エルサ?」

「大丈夫、いいから。...彼女、彼の意識に介入してきたっぽいの」

仲間達から動揺の声が上がる。どうやってそんなこと、無事なのか、何か影響は、と様々な声が上がる。

アカネも驚いた顔で此方を見てくる。

「えっ何それ...やば...」

「...私自身にも何が起きたのか...」

「ええ...そんな力あったっけ...前に謎だった神化の影響...?」

「...恐らく」

「女神怖...」

そんな会話を横目にエルサが話を進める。

「んで、実際彼に会ってきた訳だから、ここは彼女の意見が大事じゃない?」

そう彼女が呼び掛けると、周りも確かに、それならば、という風に此方を見る。

こう話題を振られたなら仕方が無い。話の続きを受け持つ。

「私が介入して思ったのは、彼は本当はこんなことは望んでいないということ。それと、彼はもう私達に刃を向ける理由がない」

「何故?」

「話してきたんだ。刃を振るう以外にも、生きる意味があるんじゃないか、って」

誰かが声を上げる。

「でも、俺は信用出来ない。何をするか分からないなら安全策を取りたい」

「...」

至極真っ当な意見だ。私の解釈で、仲間が潰されてしまったら私には取り返しがつかない。

言葉に詰まった私の横で声を上げたのは、またもやエルサだった。


「じゃあさ、モークシャがあいつを監視すればいいじゃない」


「...?!」

「敵になる理由がないって言うなら、寝返ってもらうの。もしもの事態が起きた際は、モークシャと私が責任をおってトドメを刺す。それでどう?」

「な...」

そんな突拍子もない。開いた口が塞がらない私に、彼女は笑顔を向ける。

「だって、助けたいでしょ?こいつの事」

ハッとする。彼女は私の意図を汲んでこんな意見を。

それならば、断る理由は無い。

「...ええ。私に出来ることはするし、皆に危害は加えさせない」

そういうと、彼女はにっこりと笑顔をより輝かせた。

「そうこなくちゃ。異論はある?」

そこまで言われて、声を上げるものはいなかった。信用をしてくれる仲間に頭が上がらなかった。

コールも安堵したように言った。

「じゃあそうしてもらおうかな、とりあえず空いていた部屋に彼はいるから、一応交渉をよろしくね。...武器は取り上げてあるけど、くれぐれも、警戒は怠らないように」

そうして、私はその部屋に向かうことにした。

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