第587話どうにもおかしい(ビリダス視点)

 何かがおかしい。俺はそう思い、何度もブレイデルにその事を伝えに行ったが。奴は俺の話など一切聞かず。いくらこいつが馬鹿だとはいえ、なるべく早く精霊の石を奪うためにも、少しはブレイデルを動かそうと思ったのだが。奴は騒ぐだけで結局何もせず、その場から動こうとしなかった。


 それにしてもこの違和感は何だ? 精霊の石を奪うために、それを守っているだろう結界を破り、またその結界を守るために覆っている霧を消すために。囲んでいる闇魔法にさらに魔力を流し、今までで1番囲い自体は狭まったが。


 どうにも何かがおかしい。私も1度魔力を流しに行ったが、確かにちゃんと闇魔法が発動していて、少しずつだが霧も消え始め。確かにそこに石の気配を感じるのだが。

 闇魔法を一旦消し中を確認したかったが、この闇魔法が次も発動するとは限らないためそれは出来ず。何とか中の様子を細かく調べようとしたが、それも上手くいかなかった。どうしてこう上手くいかないのか。


 奴に渡したあの魔力石が、自然に発動するまでもう少し。だが待っているのは限界だ。もし精霊の石に何か起きていたら? だったら早く魔力石を発動させ、ブレイデルを、奴の仲間を操った方が楽だろう。まぁ、操るまでに少々時間がかかってしまうかもしれないが。


 その間は俺の部下に、あの精霊達の相手をさせておけばいい。ブレイデルとその仲間達が全員集まっても、俺の部下達の力には遠く及ばない。奴らが抜けても少しの間なら、精霊達の相手はできる。俺はスポーツを呼んだ。


「スポーツ!」


「はい!」


「予定を早める。どうにも様子がおかしい。しっかりとした確認はできないが、どうにもそこにある精霊の石が偽物に思えて仕方がない」


「偽物ですか?」


「ああ。そんな事はないと思うが。だが本当に偽物だったら、ただただアレに魔力を流して魔力を無駄にするのは。精霊達のあの強さ。おそらくエチゾラム様のおっしゃる通り、子供が力を与えられているのだろう」


 俺達の武器についている、新しい魔力石。最初の魔力石より改善はされ、奪われる魔力は少なくなったとはいえそれでも。もし何かあり、奴等と戦う時間が長くなれば、俺達が石に取り込まれかねない。そのためにも今魔力を無駄にするわけには。


「少しの間お前達だけで精霊達の相手をしろ。俺はブレイデル達の魔力石を発動させ、奴等をコントロールする」


「かしこまりました」


 俺はすぐにブレイデルの元へ向かった。


      *********


 主達の声に奴等の持っている剣を確認すれば、確かにあの魔力石がついている。全く我とした事が。ハロルドが言った通り我もアレは剣の飾りだと思っていた。あれだけあの石の気配がすると言っていたのに。やはり外の結界がかなり影響してしまっているようだ。


 それにしてもよくぷには気づいたな。そういえば確か、あの精霊の石を取りに行った時も、ぷにが色々気づいたと。ぷにはこういう細かい事に気づく能力があるのか?

 そんな事を思いながら、我はアンドレアスに少しの間我の方の黒服達を任せ、すぐにハロルドの所へ。


「マシロどうした?」


 我は黒服達には聞こえないようにハロルドに話す。


『良いか。おそらくもう少し、あの闇の方に囲まれている物は持つだろうが。アレが全てを押しつぶすのが先か、それとも偽物が入っていると気づくのが先か。さらに囲いが狭まれば、バレる可能性が出てくる? …もうバレた可能性も』


 そう、精霊石があった場所には今、別の魔力石を入れてある。その辺の魔力石を入れれておけば良いと、ハロルドが持っていた魔力石を、主が開いた場所が閉じる前に投げ入れたのだが。もし中を調べられた時に、少しでもバレないようにするため、ないよりは良いだろうと。


 が、先程黒服の1人がじっとアレを見つめ、一瞬おかしな顔をしたのだ。すぐにまた攻撃に戻ったが。あの黒服はおそらく、今いる黒服達の中で1番できる人物だろう。その黒服がおかしいな表情を見せたのだ。もしかすると精霊の石が別の石になっている事も、そして精霊の石自体がそこにない事もバレた可能性がある。


『まだ、あの闇魔法から離れてはいないが、いつ奴等がこちらへ来ても良いように、なるべくもう少しこちらの敵を減らしておきたい』


「分かった」


『気をつけろ。こちらに来ている黒服は、あそこで騒いでいるだけで何もしない黒服、それとそいつと共にいた黒服達よりもレベルが違う。気をつけないとやられるぞ』


「あと半分は減らしておきたい感じだな。できる限りやるさ。ユーキを守らないとな」


 話し終えると1度主の元へ。主はすぐに我に抱きついて来て。ほんの少しだったが、それでも主達に元気をもらい、我はアンドレアスの元へ戻って、再び黒服達を倒し始める。

 と、あの黒服が、騒いでいる黒服の方へ。そしてなぜかまた揉め始め。奴等は組織で動いているはずなのに、どうしてこうも揉める者達が多いのか。

 

 しかし今回も今までの揉めかたと違った。煩い黒服は今までで1番喚き始め、妖精の国で見たものとは少し違う、赤紫色の魔力石を懐から取り出した。何だ? 新たに別の魔力石同士を組み合わせたのか? 黒服の周りに、奴と共にいた黒服達が集まる。奴らも同じ石を持っていた。そしてその石に魔力を流す。


 流した瞬間、あの揉めていた黒服が、ニヤッと笑ったのが見えた。




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ご愛読ありがとうございます。ありぽんです。

今日、11月28日、小説家4年目を無事に迎える事が出来ました。

今年前半は色々あり、長い間お休みをしてしまい、皆様には大変ご迷惑をお掛けして、本当にもしわけありません。

ですが万全ではないものの、少しずつではありますが何とか活動を再開し、こうして新作を書く事もでき。

たくさんの感想と応援をいただき、今日この日を迎える事が出来ました。

本当にありがとうございます!!

気づけば最初の小説を書いてもう4年目。もう4年目かと、改めてよくここまで続けてこれたなと思い。本当に皆様の応援に励まされ、ここまで続けてこれました。


また新しい1年がこれから始まります。

皆様に楽しんでいただけるよう、精進してまいりますので、これからもよろしくお願いします。

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