第497話モグラさんの特別プレゼント

 アースはよく見てろって、2つの袋をそれぞれのお手々で持って、それから袋に魔力を流し始めました。流すのはすぐに終わったよ。


『フーリーの毛の一部には、不思議な毛が混じっていてな。魔力を流すと冷たい気を放つもの。温かい気を放つものがある』


『そう言えばそうだったな。森の魔獣達がその毛目当てに、フーリーの周りによく集まって寝ていた』


『そう、それだ。これはそうやって使う物だ。先ずはこっちから触ってみろ』


 アースが右のお手々に持ってた袋を、僕に渡してきました。僕はそっと袋を受け取ります。


「ふわっ!! ちゅめちゃい!!」


『そうだろう? じゃあ次はこっちだ』


 左に持ってた袋を受け取ります。


「ポカポカ!!」


『そう。そっちの冷たい袋の中には、魔力を流すと冷たくなる毛が。こっちの袋には、温かくなる毛が入っているんだ。お前にはエシェット達が居るから、暑い時はすぐに冷やしてもらえるし、寒い時には温かくしてもらえるが、外だとそれができないときがあるだろう?』


 そういう時に、お洋服のポケットにこの袋を入れると良いって。暑い時は取り出して頭に乗っけて涼しくしたり、寒い時はポケットにお手々を入れてお手々を温めたり。服に入れておくだけでも、涼しいしあったかいって。


 今はアースはちょっとしか魔力を流さなかったから、すぐに元の袋に戻っちゃうけど、たくさん魔力を流せば、長い間ずっとそのまま使えます。もし途中でもとに戻ったら、また流せば良いんだって。


『ユーキは魔法の練習をしているからな。自分でやっても良いし、まだ魔力の制御ができていないからマシロ達にやってもらっても良い。それに、温かくなる方は、これから寒くなるからすぐに使えるだろう』


「アース、ありがとでしゅう!!」


 お話してる間に、普通の袋に戻っちゃったから、マシロにまた魔力を流してもらいました。それで今度はディル達が袋を触って。みんな良いなぁって言いました。そしたらアースがアシェルを呼んで。アシェルが大きな袋を持ってきました。


『そう言うと思ってな。お前達の分も作って来てやった。1人、各1個だからな。ケンカするんじゃないぞ。全員分ある』


「アースありがとう!」


『ありがとなのぉ!』


『わぁ、ありがとう!!』


 みんながありがとうをして、袋の中から1個ずつ袋を取っていきます。そっちが涼しくなる方か分かるように、涼しくなる方には水色のリボン。あったかくなる方にはオレンジのリボンが付いてるんだ。


 今僕の右のポケットにはポカポカ袋が。左には涼しい袋が入ってます。冷たくてポカポカで何か不思議な感じ。雪が降ったらお母さんのじぃじのお家に行くから、ちゃんと忘れずに持って行かなくちゃ。


 アースのプレゼントが終わったら、最後にモグラさんのプレゼントを開けます。僕は小さなプレゼントの袋をそっと開けました。


「ふわぁ、きれいねぇ」


「ホントだな。オレ見た事ないぞ」


「ボクも見たことない」


 みんながプレゼントに集まって来ました。モグラさんがくれたプレゼント。綺麗な丸をちょっと潰した感じで、向こう側がもう少しで見えるくらいとっても薄くて水色。それからキラキラ光ってて、冒険者ギルドでもらった、冒険者の印のペンダントみたいなやつでした。

 それがうんとね、1枚、2枚…、全部で10枚。端っこに穴が開いてて、そこにツルを通してあります。


『なんだ。洞窟の奥にはこいつも居るのか』


『チュキ、チュッキ、チュキ』


 エシェット達はこれがなんだか知ってるみたい。それでね、お父さんの方を見たら、何かスンってお顔してました。王様じぃじのお顔はもっとニコニコになってたよ。


「モグラしゃん、エシェット、なんでしゅか?」


『ああ、これは洞窟にしか住んでいない魚の鱗だ。鱗は分かるか? 魚釣りをしたとき、透明でちょっと固いものが、手に付いている時があるだろう。それのことだ』


 うん、時々と透明の変なのが付いてた。それにお料理するとき、お兄ちゃんがそれをお魚さんから取ってたよ。


『名前はシュリン。我も何回も見た事はないが。とてもきれいな魚だが、絶対に人の前には出てこない。人間で見た者が居るとすれば、寿命が来て死んだシュリンを見たことがあるくらいだろう』


 そんなに珍しいお魚さんなんだね。そのお魚さんが、前住んでた森には居るんだって。


『チュキ、チュッキ!』


『こ奴はそのシュリンと友達らしい。この鱗でも分かるように、とっても綺麗な色の魚でな。ユーキのためにこ奴がお願いをして、貰って来てくれたようだ。良かったな』


「おともだち!! モグラしゃん、ありがとでしゅ!!」


『チュッキ! チュキィ』


『どういたしましてと。それとまだ楽しみがあると。そうだな確かこの鱗は…。ユーキ。そのツルを持って鱗を揺らしてみろ』


 モグラさんが早く早くって、お手々でやります。僕はそっとツルを持って、鱗を揺らしてみました。そしたら


 チリン、シャリン、シャリリン。


「ふわわ!!」


 とっても綺麗な音がなりました。


『どうだ。良い音だろう。これをカバンに付けて歩けば、いつでもいい音が聞こえるぞ。その鱗は丈夫だからな。我くらいの者が魔法で攻撃しない限り、割れることはないから、ユーキがどんなに動いても大丈夫だぞ』


「ほんと!!」


 僕はすぐにお兄ちゃんにお願いして、冒険のカバンに付けてもらおうとしました。でもその前にお父さんが待てって言って、僕のことを止めたの。

 それでこの鱗はとっても珍しいから、お外で出しちゃダメだって。お家の中なら良いけど、お外は絶対ダメ。お家に帰って、僕の乗り物に付けなさいって。


 僕、冒険のカバンに付けたかったのに。せっかくモグラさんがくれたんだよ。冒険のカバンの方が良いはず。

 でも、お父さんは何回お願いしてもダメって。う~ん。残念。モグラさん、僕お家に帰ったら、絶対に乗り物に付けるからね。

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