第407話キラキラの道を通って

 アシュリーさんに、もう1回ジュース貰って飲んで、少ししたらルディーがそろそろ大丈夫そうだから帰ろうかって言いました。

 僕は頷いて、ぴょんって立ち上がります。ルディーがみんなの所まで連れて行ってくれるって。だからルーカスさんとアシュリーさんとここでバイバイです。


 最初にアシュリーさんに抱きついて、


「またあしょびくるでしゅ! しょれで、みんなとあしょぶでしゅよ」


「ふふっ、そうね」


 次はルーカスさん。ずっとおでこがしわしわだったけど、でも笑ってるときのお顔と、怒ってるときのお顔、それから困ってるときのお顔、僕ちゃんと分かるようになったよ。時々分かんない時もあるけど、笑ってるお顔は絶対分かるようになりました。


「まただっこちてくだしゃい。しょれからなでなでも」


「ああ、そうだな。また会えたらな」


 ルーカスさんがいっぱい頭をなでなでしてくれます。


 それが終わって、僕はルディーとお手々を繋ぎました。


「そう言えばユーキ、どうして僕はルディーでルーカスとアシュリーはさんって言うの?」


 う? 何で? う~ん、ルディーはルディーって感じ? それでルーカスさんはお父さんみたいで、アシュリーさんはお姉さんみたい。

 僕がそう言ったら、アシュリーさんが笑い始めました。ルーカスさんもいつものおでこしわしわ笑いです。


「いやだ、もうユーキちゃんと見てるわよね。私達は大人に見えてるって事でしょう? それでルディーあなたは子供。アハハハハ」


「そんな髪型だしな」


「何それ、大体この髪型はアシュリーのせいなんだからね。ユーキ僕だってしっかりした大人だよ」


 違うよ。ルディーはね、カージナルの冒険者ギルドの前でいつもワイワイ騒いでる、冒険者さんに似てるんだよ。お兄ちゃん達みたいで冒険者さんになったばっかりの人達。いつも冒険者ギルドの前で騒いでるの。煩いんだよ。


 僕のお話聞いてもっとアシュリーさん達が笑い始めました。ルディーはブスッとして、納得いかないとか、あんな子供とぜんぜん違うよとか、ブツブツ。それでブスッとしたまま、僕のお手々を引っ張って歩き始めます。そしたら僕達の少し前に、光りの丸が現れました。あそこから帰るんだって。

 光りの丸の前まで行って、僕は丸に入りながら後ろを振り返ります。ルーカスさんとアシュリーさんがニコニコ、僕にお手々を振ってくれました。


「バイバイでしゅう!!」


「気を付けてな」


「あんまり無理して遊んじゃダメよ!」


 ブンブンお手々を振って、丸の中に入りました。


「加護はちゃんと付与した。大丈夫だ」


「ええ、でも何が起こっているのか私達でも分からない今、気を付けて見守っていてあげないと」


「そうだな。それよりもルディーはきちんと、送って行くだろうな」


「それを言わないでよ。やっぱりあなたか私が連れて行ってあげれば良かったかしら」


 僕は中に入ってすぐにお目々を開けます。光りの丸の中は、さっきまで居た所みたいに真っ白。でも他にもキラキラ、いろんな所が時々虹色に光ってて、とっても綺麗です。

 これからこの道を歩いて、お父さん達の所に帰るんだって。


 ルディーがみんなと遊べて楽しかった?って。うん、僕とっても楽しかったです。それからうさぎさんとルーリアと仲良しになれたし。またすぐにみんなと遊べたらいいなぁ。

 そうだ、モリオンかくろにゃんにここに来てもらって、場所覚えてもらって、いつでも遊びに来れるようにしたらどうかな? 僕のお家の近くの森みたいに。ネコさん達といつでも遊んでるでしょう?


 僕がそう言ったらルディーがね、ここは ルディーやルーカスさん、アシュリーさんじゃないと、連れてこられない特別な場所なんだって。だから今度もし遊びに来るときも、ルディーが迎えに来てくれるって。それから遊ぶ日はルディー達しか決められないの。


 う~ん、何かダメダメな気がする。いつでも遊べたら良いのに。どうしてルディー達しか決められないの。ねぇ、どうして?

 僕は歩きながらずっとルディーに何でって聞きます。ルディーは困ったお顔して、


「これが何で攻撃か…」


 何かボソッと言ってました。


 ずっと何でって聞いてたら、だんだんとキラキラが多くなってきました。


「もうすぐだよ。キラキラが多くなったのは、出口が近いって事。みんなの所までもう少し」


「みんな、おけがちてないかな?」


「大丈夫。ディルがみんな怪我治してくれてるから。ユーキが着くころにはみんな元気になってるよ」

 

 アシュリーさんは静かにしなさいって言ってたよね。魔力をあげるのもだめかな? だって帰った時、ディルがみんなのお怪我治してくれてて、疲れてるかも。そしたら僕が魔力あげてお元気にしてあげたいんだ。


「ユーキ、ディルには魔力あげなくて大丈夫だよ。ここに来る前にユーキがあげた魔力が、まだいっぱいディルの中に残ってるから」


 ルディーが僕の方見てニッコリ笑います。あれ? 僕今お話した?


「ディルだけじゃないよ。マシロもエシェットも妖精王もみんな、まだまだユーキに貰った魔力があるから大丈夫。だから少しの間、ユーキは魔力あげちゃだめだよ」


 ふ~ん。でも僕の魔力欲しい時はあげるからね。


 キラキラがさっきよりも多くなってきて、それで今はぜんぶが虹色にキラキラ光ってます。あと、前の方に真っ白な場所が現れました。あそこが出口だって。あそこを出ると、すぐにお父さん達の居る所に行けます。

 真っ白の前についてルディーが止まりました。どうしたのかなって思ったら、ルディーがここでバイバイだって言ったの。


 え~、何で? 一緒にお父さん達の所に行こうよ。僕はルディーの繋いでたお手々をギュっと握ります。それでぐいぐい引っ張りました。


「僕が行くと、ユーキのお父さん達が僕のこと攻撃するかもしれないんだよ」


「なんで? どちて? いっちょいくでしゅ!!」


「いきなり知らない人がユーキと一緒に来たら、敵だって思うかもしれないからね」


「だいじょぶでしゅ! ぼく、とうしゃんにいうでしゅ! マシロプレゼントのひとって、ごしょうかいでしゅ!」


「いやいや、もっとダメだから!?」


 僕は一緒行くって、でもルディーは嫌だって、ずっと順番に行く、いや。行く、いや。

 う~、絶対一緒に行くもんね!! 行かないと僕泣いちゃうもんね! 何か1人で行くの嫌なんだもん。


「うえっ…」


「ルディー、外に出るまで連れていってあげなさい。それですぐに帰ればたいした問題じゃないわ!!」


 いきなりアシュリーさんのお声がしました。僕ビックリしちゃったよ。


「でもさぁ」


「ユーキ、1人が怖いのよ! 分かっているでしょう? 良い、さっと行ってさっと帰る。無駄話はしない。それで大丈夫よ」


「もう、みんなユーキに甘いんじゃない?」


 僕はルディーのお顔をじっと見ます。


「はぁ、もう分かったよ。連れて行ったら、僕はすぐに帰るからね」


 えへへへ。僕はルディーのお手々を繋ぎ直して、真っ白の方を見ました。


「じゃあ、行くよ」


 2人で真っ白の中に入ります。


      *********


「!!」


「どうしたエシェット、マシロ達も」


 ディルに怪我を治してもらったウイリアムが、我らの方へ歩いてくる。この感覚。戻って来たな。1人で帰って来ると思ったが? まぁ良いか。マシロはすくっと立ち上がると、ユーキが帰って来るであろう場所へと移動する。奴め、ユーキに1番に会おうとしているな。


「おい、エシェット、マシロは何をしているんだ。まさかまた敵が?」


「いや、そんなものではない。大切な者が帰って来るぞ」


 我がそう言えば、オリビアがマシロの方へと走り出す。それを見てハッとしたウイリアムも、マシロの方へ。皆がマシロの方へと移動した。マシロのしっぽがブンブン振られている。ふむ。あれではフェンリルというよりも、ただの主人を待つ犬だな。

 さて、我もマシロ達の所に行くか。

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