第406話望まない結果(前半エシェット視点、後半ユーキ視点)
「オード! これはどういう事だ!!」
顔を歪ませたままアブラムが老人に叫ぶ。老人の名前はオードと言うらしい。
「石が俺の魔力を吸収し続けているぞ! しかも俺の腕を奪った!!」
「私の計画では、今頃あなた様の精神も石に取り込まれ、その石はこれから孫が引き継ぐ予定でいたのですが」
「どういう事だ!! オード!!」
アブラムが無理やりに体を動かし、オードに襲い掛かろうとする。しかし石の闇の力がアブラムをとらえ、アブラムは完全に動けなくなってしまった。そして再びアブラムが苦しみだす。
「今回はここまででしょうな。これ以上は私の大切なモノがなくなりかねない。あの者達と妖精王の力には、私達はまだ及ばないという事です。ですが、実験の第一段階は終了です。あなた様が私の計画通りにうごいてくださいましたのでな」
「ぐぐ、がががっ!!」
「ほう、まだ睨むだけのことはできますか」
ペラペラと良くしゃべる。今のうちにあいつらも倒してしまおう。我らはすぐに攻撃に移った。が…。
まただ。また奴らをあの変な空間が包み、我らの攻撃が届かなくなってしまった。そして、そんな我らをチラッと見る若い男。奴はアブラムの方に行くと、アブラムの持っている赤い石に手を伸ばした。
「は、なせ…」
「これは僕のだよ。あんたが次に身に着けるのはこれね」
男が赤い石を奪い取る。闇がアブラムから離れ、今度は男の方に群がり始めた。それと同時にアブラムが倒れ込む。
男はニヤニヤしながらその様子を見て、すべての闇が自分の移ったところで、自分の魔力を石に流した。石が真っ赤に光りはじめ、闇がドンドン石に戻って行く。そして何事もなかったように追いつくと、男が自分の手に石を取り付けた。
「うん、じぃ! とってもしっくりくるよ!」
「良かったのう。じゃが完全に完成したわけではない。気を付けるんじゃぞ」
「分かってるよ。つけっぱなしにはしないよ。僕だってこいつみたいになりたくないもん。と、アレを付けちゃわないとね」
男はポケットの中をゴソゴソあさると、その手に今度は黒っぽい濃い青の石を取り出した。それをアブラムの所に持って行くと、先程までアブラムの赤い石を付けていた右手に、石を取り付ける。
「ガアァァァァァァッ!!」
青い靄が溢れだし、またアブラムを包み込んだ。そして、その叫び声が消えると、すくっと、何事もなかったかのように立ち上がるアブラム。我らの方を見たアブラムの目の色は白目がなくなり、真っ黒に染まっていた。そう、我が昔見たことのある奴らのように。
「さぁ、じぃ、帰ろう。あっ、他の人達はどうするの?」
「そうじゃのう、石だけ回収して、後は放っておけ」
奴らの前に黒い空間がさらに現れる。そしてその中に入って行こうとするアブラム達。
先程からずっと攻撃を続けているが、1度も奴らに攻撃を当てられずにいた。このまま逃がしたら大変な事になる。皆分かっているのだろう。必死にすべての魔力を使って攻撃している。が、我らの攻撃はやはり奴らには届かなかった。
若い男が最初に黒い空間に入って行く。
「先に入れ」
オードがそう言うと、アブラムは何も答えず、静かに空間の中に入って行った。そしてオードがこちらを向いた。
「お主達のおかげで、わしの計画はかなり進み、次の計画に進むことができる。礼を言うぞ」
「ふん、礼と言うならば、今我にこの場でお前達を消させてくれると良いのだが」
「ほほっ、楽しみは後にとっておいた方が、より楽しめるじゃろう」
「我は今楽しい方が良いんだが」
「そう焦るでないわ。それに礼と言ったが、よくよく考えれば妖精の国は無事だったのだ。それで今回は十分じゃろ。ではな」
そう言い残しオードが空間に消えて行く。オードが消えたと同時に、すべての空間のゆがみが消え、赤い石の気配もすべてが消えた。残っていのは力を失った黒服の仲間と冒険者達だけだ。
シャーナも王子も、ハロルド達も、そしてアンドレアス達も皆無事だ。力を失った者達を次々と倒していっている。もうあとは時間の問題だろう。
「確実に倒したかったのだがな」
「今回は分からないことが多すぎた。これ以上は私達でもどうすることもできない。奴らは引いたんだ。今はそれで良かったと思わなければ」
我の隣に妖精王が立つ、そしてマシロ達も集まって来た。
見ているだろう。そちらはどうなった? ユーキは元気になったか? 我はウイリアム達の方を見る。皆が我のことを見ていた。さぁ、ユーキを。
*********
「そっちいくでしゅよ!!」
『『『わあぁぁぁ!!』』』
「ちゅぎはしょっちでしゅ!」
『『『わあぁぁぁ!!』』』
僕が起きたら、ルディーが帰って来てて、お星様のお毛々に変わってました。キノコもコケも面白かったけど、お星さまのお毛々も面白いね。
みんなで笑った後、ルーカスさんがもうすぐみんなの所に帰る時間だから、最後にもう少しだけみんなと遊びなさいって。
僕がマシロ達勝った? って聞いたらもうすぐだって。だからもう1回応援しようと思ったの。でも応援しなくても、もう大丈夫って。応援してたら遊ぶ時間なくなっちゃうって言われました。だから僕達急いで遊びます。大丈夫って言ったもんね。
みんなで最後に鬼ごっこしました。お友達いっぱい鬼ごっこ。とっても楽しかったです。お父さん達やマシロ達やディル達、みんな居たらもっと楽しかったのに。
たくさん走って、ふぃ~。汗いっぱい。アシュリーさんがジュースくれたよ。それでそれをみんなで飲んで、それが終わったらみんなとバイバイの時間です。アシュリーさんが光りの丸を出して、みんな僕にバイバイしながら丸の中に入って行きます。僕もお手々をぶんぶん、いっぱい振ってバイバイしました。
それで1番最後は、僕が1番最初に抱きしめたうさぎさんとルーリア。2匹は僕の所に寄って来て、最後になでなでしてって。だから僕たくさんなでなでしてあげました。2匹ともニッコリです。
なでなでの後はギュって抱きしめて、2匹が光りの丸の所に。
『ユーキまたね。僕すぐにユーキに会えるように頑張るから!』
『ボクも。すぐにユーキのこと見つけるから。だからまたギュってして、なでなでもたくさんしてね!!』
『『バイバイ!!』』
会えるように? 見つける? 良く分かんないけどまた遊ぼうね! バイバイ!!
2匹が光りの丸に入って、丸がすぅ~って消えます。なんかちょっと寂しいなぁ。そう思ってたら、ルーカスさんが終わったぞって。僕の頭をなでなで。みんなの所に帰れるって言いました。
「マシロ、みんな、かったでしゅか? かえれる?」
「ああ」
「やったでしゅう!! マシロみんなかったでしゅう!!」
僕はぴょんぴょん、マシロ達がアブラム達やっつけて嬉しいのと、帰れるのが嬉しくて、たくさんジャンプしちゃいます。
「勝ったというか、何というか」
「しっ!! ルディー黙りなさい。良いのよユーキにはそれで」
僕のジャンプが終わって、ルディー達が僕の前に並びました。これから最後にもう1回、ルディー達が僕がちゃんと元気になってるか、魔力さんはお休みしてるか見てくれるって。
ルディー達がみんなのお顔それぞれ見て、こくんって頷きました。それから1人ずつ、僕のおでこに自分のおでこくっ付けます。みんながおでこ付けると、お体ポカポカ。良い気持ち良いんだよ。
最後はルディーがおでこくっつけて。
「うん。大丈夫。とっても元気だね。これなら帰ってすぐにみんなと遊べるよ」
「ルディー!」
アシュリーさんが、ルディーのお星さま頭を叩きます。
「そんなこと言って、無理したらどうするの! ユーキ良い? 帰ってもあんまり無理しないで。ユーキがまたここに来たときみたいに、元気がなくなっちゃったら、お父さんお母さん達も、マシロ達もとっても心配するわ。ね、だから無理はダメよ」
うん、みんな心配はダメダメ。僕静かにたくさん遊ぶよ。
「ユーキ、分かっているのか?」
ルーカスさんがはぁ~って、大きなため息しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます