第385話エシェット何してるのかな? ふへへへへ

「我が石に魔力を流した瞬間、契約と同じ感覚に襲われたのだ。いや違うな、正確には似た感覚だな。ユーキと契約したときと似た感覚がしたのだ」


 不思議に思ったエシェットがジュードにも魔力石に魔力を流すように言った。

 ジュードはこの前の冒険で、そうシュプたちの事件の時、ユーキがシュプの中で息ができるようにしたとき、あの事が原因か分からないが、それ以降少しだけ魔力が戻ってきていた。


 エシェットに言われた通りに魔力石に魔力を流そうとするジュード。しかし。


「俺の魔力がはじかれたんだ」


 そうジュードの魔力を流すことができなかったのだ。


 そんな事をしていると他の人間が近づいてくるのが分かり、ついでだからその魔力石で攻撃をしながら戻って来たらしい。


「ちゃんとあの変な魔法も出たぞ。なんの魔法だか分からんかったが」


 戻って来てくろにゃんに私達を迎えに行くよう言い、エシェットはその間に魔力石を確認した。


 魔力石からは先程まで感じていた契約と同じ感覚はなくなっていた。そこでジュードに再び魔力を流すように言うエシェット。

 すると今度はしっかりと魔力を流すことができた。


「俺も魔力を流した途端、あのチビ…じゃなかった、ユーキ様と契約したときと似た感覚がした」


「その後我が、魔力石に魔力を流そうとしたら、今度は我の魔力が弾かれた。もしかするとこの石は魔力を流した人間にしか使えんのかもしれん」


「それは他の石だって」


「そうではない。他の石はもし別の者の魔力が残っていても、石を使うことができる。しかしこの石は、魔力を流した人間にだけ反応し、契約に似た関係を作り、その者の魔法の威力を上げる」


 エシェット達が魔法を使いながら戻って来た時、もう戻るだけだと思い、結界も限界だったため、かなり弱い魔力で攻撃したらしい。が、そのはずだったのだが。

弱い攻撃のはずがかなり強力な魔法が放たれたと。


 そんな魔力石があるのか? 魔力を流した者と契約? そんな意思を持っているような魔力石が?


「どちらにしろ、我はこれからもう少しこの石のついて調べてみよう。こんな石があってはユーキの安全にかかわるからな。お前達は我がせっかく捕まえた人間からさっさと石について聞き出せ」


 因みにと付け加えるエシェット。捕まえた男には特別な木の実を食べさせたと。前に「死黒の鷹狩り」の首領、ルオンに食べさせた木の実とは違うが、すぐには死なないように体を丈夫にする木の実だから、安心して尋問しろと。

 何だ、今度は何の木の実を食べさせたんだ。


 そんな話をしていると、アシェルが私達を呼びに来た。尋問の準備ができたらしい。交代で尋問にあたることにして、先ずは私から尋問にあたることにした。ハロルドやオリバー達にも交代で休憩に行かせ、順番に尋問と見張りについてもらう。


「おい、お前も今のうちに休んでおけ。ユーキの力があるとはいえ、お前がもしも倒れることがあったら困るからな」


「分かった。そうさせてもらう。が、先程のよう事はしないでくれ。安心して眠れない」


「分かった分かった、さっさと行け」


 妖精の王とアンドレアス達が部屋を出て行くのに続いて、私達も自分たちの向かう部屋へと移動した。


 アシェルに案内された部屋の1番奥にその男はいた。エシェットの言った通り、すべての足と腕が落とされていた。が、本人はいたって元気のようで、私達の姿を見た瞬間に喚き始めた。

 

 アシェルが男の腹を剣で刺しすぐに抜く。男は絶叫しその場に転がるが、ものの数秒でアシェルの付けた刺し傷が治っていく。


「試したのですが、足と腕は戻りませんが、他はすぐに再生を」


「はぁ。一体どんな木の実を食べさせたのか。が、これで少々無理をしても大丈夫そうだな」


「はい」


「よし始めるぞ」


 早くあの魔力石について聞き出さなければ、そしてアブラム達のことも。妖精の国を救わなければ、いずれ私達の国も街も影響を受けることになる。そうなれば…。ユーキのためにもオリビアやアンソニー、ジョシュア達のためにも、早く解決しなければ。


      *********


 ガタガタ


「すぅすぅ」


 ガタガタ、ガタガタ。


「すぅ~、う~ん」


 ガタガタガタガタッ。


「う~ん、うるしゃいでしゅう。だれでしゅか?」


 僕はお目々を擦りながら起きます。ベッドがガタガタ揺れてて、周りを見たらお兄ちゃん達もマシロもディル達も、みんな起きてました。ぷにちゃんだけ寝てたけど。

 木のテーブルの方を見たら、お母さんが木のお椅子に座ってお茶飲んでて、それでお母さんもちょっとだけ揺れてます。でもお母さんぜんぜん慌ててないの。揺れてるのにお茶飲むの止めないんだよ。


 僕はお兄ちゃんのお洋服引っ張ります。


「にいしゃん、わるいひと、きたでしゅか?」


「いや、これは」


「主、悪い人間ではない。安心しろ」


 マシロがベッドに上って来て、僕のお顔すりすり、それから説明してくれます。


 このガタガタ揺れてるのはエシェットがやってるんだって。なんか分かんないけどエシェットが悪い人じゃなくて、何かに魔法を使ってて、そのせいでお城がガタガタ揺れちゃってるの。


 悪い人達じゃないなら、何に魔法使ってるのかな。お城がガタガタ揺れちゃうくらいの魔法使ってるんでしょう。う~ん…ふへへへへ、何か面白そう。僕が笑ってたら、ディル達も一緒にふへへへへって笑ってます。みんなもおんなじ事考えてるのかな?

 このガタガタが終わったら見に行っちゃダメかな? それかエシェットにあとでおんなじの見せてもらうとか。


「ダメよユーキちゃん、みんなも。エシェットは別に遊びで理由もなく魔法を使っているんじゃないわ。きっと必要な事なのよ。応援は良いけれど、見に行くのもあとでやってもらうのもダメよ」


 お母さん僕何も言ってないのに、何で考えてたこと分かったの? 僕達みんなで何でだろうって、お首こてんってします。


「そりゃあ、あの笑い方してたらね」


「あの笑いは、あんまり良い事考えてないときだもんな」


 なかなかガタガタが止まらなくて、やっとガタガタが止まったとき、僕お目々パッチリです。アメリアがホットミルク作ってくれて、今日は特別、あとでもう1回歯磨きするならって、お母さんがミルクにたくさんハチミツ入れてくれました。ハチミツの匂いでぷにちゃんが起きてきて、みんなでホットミルク飲みます。


 それからちゃんと歯磨きして、アンソニーお兄ちゃんが絵本読んでくれて、ジョシュアお兄ちゃんは先に寝ちゃって、僕はマシロベッドでゴロゴロお兄ちゃんの絵本聞いてたら、いつの間にかまた寝ちゃってました。


 朝起きてお父さんまだ帰って来てませんでした。エシェット達も。おはようございますできなくて、ちょっとだけしょぼんです。

 でも僕ずっとしょぼんできません。だって僕これから妖精の王様の所に行かなくちゃ。


 王様にお願いしますするの。マシロやエシェット達、お父さんやお母さん、お兄ちゃん達みんなに、昨日僕達が貰ったお星さまのネックレスくださいってお願いしますするんだ。

 僕達はお星さまもあって、それからマシロもエシェット達も、お父さん達もみんなが僕達を守ってくれて。でもお父さん達は誰も守ってくれないでしょう。僕上手に魔法使えないから、魔法で守れないし。

 だからお星さまがあったら、お父さん達も安心でしょう?


 妖精の王様まだ寝てるかな? それともお父さん達と一緒で、お仕事しに行っちゃってるかな?

 僕がお母さんに妖精の王様のこと聞こうとしたとき、シマシマの妖精さん達が遊びに来ました。


「ユーキ、今日は何して遊ぶ? それともおもちゃ直してあげようか?」


 そうだ、妖精さんに聞けば妖精の王様のこと知ってるかも。

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