第341話新しいお洋服。そして作戦会議

「きょうはみんなといっちょダメ?」


「ユーキちゃんはお洋服買いに行かないといけないの。でもディルちゃん達は早くお家の人達に紹介して、お家の中だけでも自由に動けないと可哀そうでしょ」


「紹介はじぃじ達がしてくれるから、ユーキは洋服をちゃんと見てきなさい」


 なんか今日はみんなする事が違うんだって。僕はお店通りに行って、クロエさんの4つ目のお店で、クロエさんが用意してくれたお洋服買いに行かないと行けないの。クロエさんがカージナルのお店からミドルステアのお店まで、送ってくれたんだって。


 ディル達はじぃじがお家で働いてる使用人さんやメイドさんに、ディル達のこと紹介する日なの。みんなが居ないところだとディル達はいつもみたいにしてられるけど、使用人さん達が来たら光だけのディル達に戻ったり、マシロ達のお毛々の中に隠れたり。それだと遊べないでしょう?

 だから僕がお洋服買いに行ってる間に、じぃじが紹介してくれるんだって。


「ユーキちゃんが帰ってきたら、みんなきっとお家の中どこでも行けるようになってるわ。さぁ、お買い物に行きましょう」


 みんなが隠れなくちゃいけないのはダメダメ。ディル達にバイバイして、マシロと一緒にお母さんとアメリアと4人でお店通りに行きます。


 クロエさんの4つ目のお店は、お店通りの真ん中にありました。カージナルは真ん中に冒険者ギルドと商業ギルドがあるけど、ミドルステアは街に入ってすぐの所にあります。


 お店の中はいつものクロエさんのお店と、一緒のお洋服売ってました。お店の人がお洋服用意してくれてる間、僕はうさぎさんのお洋服の方に行きます。新しいお洋服があって、ハチさんのお洋服がありました。ちゃんとディル達のお洋服も置いてあります。


「ユーキ様はこのハチさんのお洋服が欲しいのですか?」


「ぼく、みんなとおしょろいなら、どのおようふくもしゅき。でもハチしゃんかわいいでしゅ」


「ユーキちゃん!!」


 お母さんに呼ばれて、お母さん達の所に戻ります。お店の人が袋をお母さんに渡して、僕とお母さんはお洋服着る小さなお部屋に入りました。

 袋の中から出てきたお洋服は、お父さんが着てる騎士さんのお洋服に似てる、カッコいいお洋服でした。模様が違うの。

 僕他にもカッコいいお洋服持ってるけど、このお洋服はお母さんが考えてくれた騎士さんのお洋服なんだって。


 ズボン履いて、上のお洋服着て、それからお帽子とお靴もありました。全部着たら大きな鏡の前に立ちます。


「とってもユーキちゃんに似合っているわ。お母さん頑張って考えたかいがあったわ」


「かあしゃん、ありがとでしゅう!」


「じゃあもう1回お着替えして、お洋服買ったら、お菓子のお店に行きましょうか。ディルちゃん達にお土産よ」


 僕はお母さんにハチさんのお洋服の事話します。新しいみんなとお揃いのお洋服。そしたらお母さんがそれも買いましょうって。

 お店の人が可愛い袋にお洋服入れてくれて、それをマシロのカバンの中にしまいます。


 お店の人にバイバイしてすぐ隣のお菓子のお店に入りました。いろんなお花の形したクッキー売ってるお店でした。ディル達に1つずつ小さな袋にクッキー入れてもらって、それもそっとマシロのカバンにしまいました。


 僕お花のクッキーで思い出しました。街に来た時、お花の入ってるスープ売ってたでしょう? あれ食べてみたい。

 お母さんにお願いしたら、じゃあちょっと休憩にしましょうって、お店に連れて行ってくれました。


 お母さんと一緒にお椅子に座って、アメリアがスープ買ってきてくれるの待ちます。  

 アメリアが買ってきてくれたスープは、この前みたいにとってもいい匂いです。スープが入ってるお椀はちょっと大きいからお母さんと半分こして食べます。


「熱いから気をつけてね。ふぅふぅよ」


 ふぅふぅ。パクッ! 


「ふわわ! あまくておいち!!」


 このスープはお花の蜜がたくさん入ってるスープなんだって。お母さんが見てって言った方見たら、お店の後ろにお店のお屋根ぐらいまでたくさんお花が積んでありました。


「1日であのお花全部スープの中に入れちゃうのよ」


 あんなにたくさん? そっか、あんなにいっぱいスープに入れるから、このスープはとっても甘くて美味しんだね。

 

 僕がお店見てたらスープを僕達が食べてるお椀じゃなくて、白い入れ物に入れて袋に入れて持って行くお客さんがいました。お母さんに聞いたらスープ持って帰れるんだって。だからこれもみんなにお土産。みんな美味しいお花好きだもんね。キミルが出してくれるお花の蜜大好きなの。


 スープを買って貰って、もうすぐお昼のご飯の時間だからじぃじのお家に帰ります。お昼はお家の中だけど、夜はいつもお外で食べるの。ふふふん、楽しいなぁ。


      *********


「よし皆集まったな」


 ユーキ達が出かけて、ユーキに話した通り、まずは使用人達に父さんがディル達の話を始めた。ここで働く使用人達は、昔から父さんに仕えている者やその家族が多く、そしてやはり、今の私の家の使用人達と同じで、信用できる者ばかりだ。

 

 思っていた通り、紹介はすぐに終える事ができた。ボトムとリースが先に少し皆に話をしておいてくれた。まぁ、父さんが家に帰ってきて、いろいろと匂わせるような話しをしていた事もあるだろうが。


「どうせいつかはこんな日が来ると思っておったんじゃ。いきなりよりも心の準備ができただろう」


 父さんが話したかっただけのような気もするが。とりあえず最初の予定はすんなり終える事ができて良かった。本当に大切な話はこれからだ。

 

 ユーキが帰って来るまで遊び部屋で待とうとするディル達とエシェット達。私は待つように言い、使用人達は皆仕事に戻って行った。


「オレ、ユーキが帰って来るまで、遊び部屋で遊んで待つんだぞ!」


「お話もう終わりでしょう?」


「これから大事な話がある。ユーキのための話だ」


 私がそう言えば皆が真剣な表情になった。


「そんなに身構えるな。ユーキにとっても、我々にとっても、とても良い話だぞ」


 私はなぜ今回家に帰らず、父さんの家に来たのかを話した。


 もちろん父さんが自分の家をくろにゃんとモリオンに教え、いつでもユーキがここへ遊びに来れるように考えたのもあるが、ならばと、ここで大切なパーティーを開こうと話がまとまったのだ。それはもちろんオリビアのお義父さん達にも伝えてあり、お義父さん達もそれで良いと、ちゃんと許可を取ってある。


 パーティー。何のパーティーかといえば、そうユーキの誕生日のパーティーだ。


 ユーキが私の家族になってもうすぐまる1年が経つ。本当の誕生日の日は残念ながら分からないが、オリビアと相談して、ユーキが私の家にきて皆と家族になった日を、誕生日にしようと、だいぶ前に決めていた。その誕生日がもうすぐなのだ。


「人間はそんな事するんだね。そう言えば酒場とかで、たまにそういう酔っ払い達が騒いでたっけ」


 そういうリュカ。魔獣や妖精に誕生日というものはやはり無いらしい。


「ユーキのおめでとうの日?」


「ああ、そうだぞシルフィー。ユーキにおめでとうで、とっても大切な日だ。ユーキは2歳から3歳に、1つ大きくなるんだ。そうやって小さい子供からお兄ちゃんになって、大人になっていくんだ」


 シルフィーを抱き上げながら説明する。

 そしてパーティーにはプレゼントが必要だと教えた。それも誕生日のパーティーまでユーキにバレないように用意しないといけないと。

 私達はもちろん用意しているが、ユーキが大切な家族でお友達と考えているディル達にも、プレゼントを用意してもらおうと思っていた。


 ただディル達の場合、あまり早くこういう事を教えては、パーティーまでにユーキに話してしまう恐れがあるため、なるべくプレゼントを用意できるスレスレまで、話をする事が出来なかった。


 私の話を聞き、一気に盛り上がるディル達。すぐにプレゼントの話を始めようとしたため、絶対にパーティーに日までユーキに話すなと注意する。


「分かった!」


『プレゼント用意なのぉ!』


 バタバタバタッと部屋から出て行くディル達とエシェットたち。本当に大丈夫だろうか。

 

 部屋に残った私と父さんとアシェルで、最終的にパーティーの開始時間を決めることにした。時間が決まったら、各方面へ招待状を配らなければ。

 さぁ、これから忙しくなるぞ。ユーキにバレないように、最高のパーティーにしてやらなくては。

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