第338話ボルフィスバイバイ! あれ、道が違うよ?

「おうしゃまじぃじ、しゃよなら。サルバドールしゃん、しゃようなら」


「また遊びに来るのだぞ。今度はワシも一緒に冒険に行くからのう」


「また美味しいお菓子用意して待ってるからね」


「はいでしゅ!!」

 

 僕が最初に馬車に乗って、最後にお父さんが乗ります。後ろの馬車にはじぃじ達が乗りました。


 今日は僕ちゃんと朝起きられました。お目々もぱっちり! でもリュカとシュプちゃんが、馬車の中に用意した、ディル達用のお椅子の上でぐたぁって寝てます。

 なんかね昨日の夜、僕が寝てた時、シュプちゃんが起きたんだけど、いつも僕が朝起きた時みたいにねぼねぼしてて、リュカのこと食べようとしちゃったんだって。びっくりして起きたのリュカ。朝までずっとシュプちゃんのこと怒ってたみたい。僕が起きるちょっと前に寝たんだって。だから今ぐったり寝てるの。


 お父さんが、リュカが怒ってる時の声がうるさくて起きちゃったって、お父さんも眠そうなお顔してます。ディル達も。僕とお母さんは全然気づかなかったの。いつもと反対だね。僕とっても元気!


 お父さんの方の窓開けて、王様じぃじとサルバドールさん達にお手々振ります。馬車がガタンって音がして動き始めました。


「バイバイでしゅう!!」


 ガタガタ、ガタガタ、門を出る時騎士さんに騎士さんのご挨拶。騎士さん達は挨拶してくれた後、僕にバイバイしてくれました。

 朝早いからお店通りにはあんまり人がいないけど、朝のご飯作ってるお店が多いから

とっても良い匂いがします。あっ、でも僕の乗ってる馬車の中も良い匂いです。昨日アース達が持ってきてくれたイノシシ魔獣、料理人さんが残ったイノシシ魔獣を全部料理して、僕達の馬車には乗せてくれたの。だからとっても良い匂い。


 どんどん馬車は進んでボルフィスの大きな壁を通り抜けます。今度はいつ遊びに来れるかな? 冒険もしたいし。あっ、でもお母さんのじぃじのお家にも遊びに行かないといけないし、う~ん、とっても忙しい。


 何回もお泊まりして、ずっと馬車に乗って、何日かしてあの道につきました。前にこの道の所でじぃじ達がじぃじ達のお家に帰っちゃった道です。窓からお外見ててすぐに気がつきました。僕窓からちょっとだけお顔出して、今日は前を進んでるじぃじ達が乗ってる馬車を見ます。


 じぃじ達の馬車やっぱりじぃじ達が帰る道の方に曲がりました。僕ちょっとしょんぼり。またこれから馬車が止まってじぃじ達にバイバイするんだって思ったの。

 でも、じぃじ達の馬車止まりません。それに僕達が乗ってる馬車もじぃじ達の道の方に曲がりました。僕急いでお父さんに報告です。だってお家に帰れないよ。


「とうしゃん! みちちがうでしゅ! まちがい!」


「ん? ああ、今日は間違っていないぞ」


「でも、おうちかえれないしゅ。じぃじのおうちはこっち。ぼくのおうちはあっち」


「あなた。そろそろちゃんと教えてあげないと」


「ははっ、そうだな。ユーキとっても嬉しいことだぞ。お家に帰る前に、これからじぃじのお家に遊びに行くんだ。だからこっちの道であってるんだ」


 ふぉ!? じぃじのお家に遊びに行く!? ほんとう? ほんとうに遊びに行くの?

 僕何回もお父さんに聞いて確かめます。お父さんだけじゃなくてお母さんにも聞いて、もう1回窓からじぃじの馬車見ます。


 じぃじ達の乗ってる馬車止まらない。僕達の乗ってる馬車も止まらない。この前みたいにバイバイもない。お父さんとお母さんがニコって笑いました。


 ほんとなんだ! ほんとにじぃじ達のお家に遊びに行くんだ!! やったぁ~!! 僕とっても嬉しくて思いっきりぴょんぴょんジャンプです。お話聞いてたディル達も一緒に飛び回ったり走り回ったり。お父さんが僕のお洋服掴んで止めます。ぶらぶら。僕ぶらぶらです。ディル達はお母さんがパパパパパって抑えました。


「うれちい! じぃじのおうちいちゅつく?」


「あ~、もう少しかかるな。もう少し馬車に乗ったり、宿に泊まらなといけないが我慢できるか?」


「うん!! えと、えほんとおままごとがんばる! だからかあしゃんも、えほんよむのがんばって! とうしゃんはおままごとの、ぼうけんしゃしゃんとか、おきゃくしゃんとか!」


「そうね。お母さんも頑張らなくちゃね」


「私もか?」


 まだまだ馬車に乗ったり、お宿にお泊りしないといけないけど、じぃじのお家に行けるんだもんね。僕ちょっとだけ馬車の中つまんないけど頑張る!


 じぃじ達のお家はどんなお家かな? 僕のお家みたいに大きいのかな? じぃじの木みたいな大きな木があったり、大きなお池があったり。

 あっ、アシェルみたいになんでもできる人がいるって、前にお父さん言ってたよね。じゃあじゃあアメリアみたいなメイドさんもいるのかな?


 僕嬉しくてまた窓からお外見ます。そしたら馬車が止まりました。あれ? じぃじのお家に行くんだよね。バイバイじゃあないよね。僕ドキドキです。

 お父さんが馬車から下りて後ろの方に歩いて行きます。心配で窓から乗り出してたら落ちそうになっちゃって、今度はルトブルが僕のお洋服持って、僕は馬車のお外に出ちゃってぶらぶらです。

 後はオリバーさん達がお馬さんに乗って、馬車の後ろついて来てたの。


「では団長、我々は先に戻ります」


「なるべく早く帰るつもりだが、よろしく頼む。かなり屋敷を開けてしまっているからな。またこの前のように、馬鹿な騎士達が入ってこられても困るしな」


 オリバーさん達は先にカージナルに帰っちゃうんだって。お仕事してたんだけど、シュプちゃんが大きくなっちゃって、みんなが街やボルフィス守りに来たから、まだお仕事が残ってるんだって。

 あっ、僕良いこと思いついた!


 僕は周り見て、それからルトブルに下ろしてもらって、お父さん達の所に走ります。オリバーさん達すぐにカージナルに帰れるよ。


「とうしゃん、いまだれもいましぇん。えと、ばしゃのところかくれて、くろにゃんにおうちにつれってもらうの」


 今僕達の周り誰もいません。いつもは人も魔獣もたくさんいるのに、なんか今日はいないの。だからくろにゃんの魔法で帰れるよ。


「ふふ、ユーキ君。私達は慣れていますから大丈夫ですよ。でもありがとうございます」


 え~、大丈夫だよ。みんないないもん。たくさん人がいるとお父さん怒るけど、今いないから大丈夫だよ。

 お父さんのお顔見たら、お父さんなんか考え事してます。それでうんうん頷いて、


「オリバー、それにみんなも、今日はくろにゃんで帰れ。たまには良いだろう。ユーキの言う通りだ。いつもオリバー達には面倒をかけているからな。くろにゃん馬車の後ろに隠れて、屋敷のじぃじの木の所までオリバー達を送ってくれ」


「分かった」


「団長よろしいのですか?」


「たまに楽も良いだろう」


「ありがとうございます」


 くろにゃんが影を広げて、オリバーさん達がその上に立ちます。僕がお手々振ったらオリバーさん達が消えました。それからすぐにくろにゃんが戻ってくるの待ちます。でもくろにゃんなかなか戻ってこないの。


 やっとくろにゃんが戻ってきたら、お家に住んでるスライムさんがくろにゃんの頭の上に乗ってました。

 お父さんが何で連れて来たんだって怒ります。スライムさんに気付いてシュプちゃんが近づいて来ました。


『あれぇ? この子供スライム、ヒュージスライムだね。ユーキお友達?』


 マシロがスライムさんのことシュプちゃん教えます。僕のお家で暮らしてる事、いろんな事に慣れたら僕とお友達になる事。


『そっかぁ。いつかこの子は僕より偉大なスライムになるよ。あっ、僕がこの子にいろんな事教えてあげようか』


 スライムさんとシュプちゃんがお話始めちゃいました。お父さんはくろにゃんのことずっと怒ってます。


「仕方ないだろう。ずっとユーキ達が帰ってこないと泣いていたのだ。しかも連れて行かないといろいろな物を溶かすと言ってきたんだ」


 わいわい、わいわい、みんなが騒いでたらお母さんやじぃじ達も馬車から下りて来て、もっとわいわいです。


 お父さんはスライムさんに帰りなさいって言ったんだけど、スライムさん僕から離れなくて、お母さんが時間がもったいないって言って、一緒にじぃじのお家に行って良いって言いました。そのかわり物を溶かしたり、お母さんがしちゃダメって言ったことはしない事ってお約束です。

 スライムさんとっても喜んでました。


 またみんなで馬車に戻ってすぐに出発です。えへへ、スライムさんも一緒。じぃじのお家楽しみ!

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