第333話キミルの力

『いくよぉ、中に入らないでね』


 シュプちゃんがそう言うと、シュプちゃんの体が光り始めました。それからシュプちゃんの下の所の地面にボココココって土が出てきて、その土が湖いっぱいに埋まって、湖の周りも新しい土が出てきました。


 光が消えてシュプちゃんが戻ってきて、ルトブルにこれでいいかって聞きます。ルトブルは土を触りながら、とっても栄養がある土だって褒めてます。それからホプリンが土の上を走って、僕の所にもどってきました。


『とってもふわふわで気持ちいい土だよ。ユーキ触ってみて』


 ホプリンがそう言ったからみんなで土を触ります。ふわふわでさらさらで、とっても気持ちいい土でした。

 僕達が触ってた土の所に、ルトブルがお水出してくれます。


「おぉ~」


 簡単に泥のお団子が出来ちゃいました。それからお家のお庭で作る泥のお団子は、僕が作るとすぐに壊れちゃうのに、このお団子は全然壊れません。


「ユーキ、家に帰ったら庭の土も変えてもらえ。キミルとシュプのおかげで、木も花も草もみんな元気になる」


「うん!!」


 みんなお元気はとっても良いことだもんね! 


 ルトブルが良しって言ったあと、ザババババッ!! ルトブルの魔法で湖の中いっぱいに水が入りました。それからお魚さんもいっぱい。この前僕がお魚釣りして、とっても美味しかったお魚さんも入れてくれたの。僕が冒険に来てお魚さん釣って、ご飯食べられるようにだって。ありがとうルトブル!!  


 お父さんとアース達が湖確認します。アースが前の湖より良い湖ができたって言ってました。


 ちゃんと湖直せたから、どんどん他の所も直して行きます。ルトブルとシュプちゃんが土を綺麗にしてくれてるうちに、僕達はキミルとどんな木やお花生やしてもらうかお話し合いです。


 僕は冒険の時に探したお花や、可愛いお花それからカッコいい大きな木が良いって言いました。ディル達はカッコいい花もいるって。ピュイちゃん達は雨が降った時に濡れないくらい大きな木が良いって。

 みんなが言ったことキミルが覚えなくちゃって、精霊さんの文字で土に書いていきます。僕はふにゃふにゃのもじに見えるけど、ディル達はちゃんと読めて、お父さん達は文字が見えないって言いました。


「またか。どうしてこうユーキは、なんでもかんでも見えるんだ」


「あらあなた、いつもの事じゃない。」


 みんなのお話し合いが終わって、ルトブル達も土の準備ができたから、キミルが新しい土の所に魔法で木やお花を生やします。

 僕ねいつもみたいに、ポワッて光って、いろいろな所から生えてくると思ってました。でも今日は違います。地面が光るのは一緒だったけど、一瞬でみんな生えちゃったの。こうボンッ!! って。僕ビックリです。ディル達も。キミルもビックリしてたよ。


「あれぇ~、キミルの魔法、いつもと一緒だよ」


 キミルが喋ったら、お父さんがキミルのこと怒りました。


「なんでいつもこう、お前はやり過ぎるんだ! 木も花も草も生やし過ぎだ! それにあんまり珍しい花は咲かせるなと言っているだろう!」


「キミル分かってるもん! だからいつもとおんなじにしたの! でもたくさん生えちゃったんだもん!」


 お父さんとキミルはいつも喧嘩します。あのね、木も花も草もとってもいっぱいで、道とか全部無くなっちゃったんだ。僕達はいっぱいで嬉しいけど、でも歩けないのはちょっとぉ~。


 マシロやエシェットが、どうしてこんなにたくさん生えちゃったのか調べてる間、ずっとお父さんとキミル喧嘩してました。


「キミルちょっと来い」


 マシロに呼ばれてキミルがマシロ達の方に行きます。それでボロボロになっちゃてるお花を元の元気なお花に戻せって言いました。


「キミル枯れちゃったお花まで戻せないよ。そこまで力ないもん」


「いいからやってみろ」


「もうなんなの?」


 ちょっとぷんぷんしてるキミルが、ボロボロのお花を触って光ります。そしたらすぐに元の可愛いお花に戻ったんだよ。


「あれ? 何で?」


「やはりな。キミルお前はディル達がそうだったように、少し力が強くなったのだ。ディルが一瞬で主の怪我を治しただろう。あれと同じだ」


「ほんと!? キミル強くなったの! キミルも変身できるようになる!?」


 ん? キミルが変身? いつもキミル変身してるよね。キミルは本当はわたぼこみたいに小さくてふわふわなボールみたいな姿でしょう? 変身してディル達みたいな姿に変身してるんだったよね?


 僕がキミルにそう言ったら、キミルが違うよって。ディル達みたいに頭に冠乗せたり、お羽がちょっと大きくなってキラキラ光ったり、そういう変身だよって言いました。

 エシェットがそれは分からないって。


「お前は妖精とは違う。精霊だからな。それに元の姿はその妖精みたいな姿ではなくワタだろう? もう少し経ってディル達のように変身できるようになっても、ワタが大きくなるだけかもしれないぞ」


「えぇ~!? 大きくなるだけぇ~!?」


 キミルがあっちを飛んだり、そっちを飛んだり、とっても慌ててます。僕は大きなわたぼこボールでもとっても嬉しいよ。きっともふもふでとっても気持ちいいもんね。みんなもそうだって。でもキミルは絶対可愛く変身するんだって叫んでます。


 エシェットがとりあえず、いつもよりも小さな力でやってみろって。お父さんも時間がないから、湖の周りはこのままで良いって言いました。だから直した所からちょっとだけ移動してまた森を直します。


 土を新しくして、キミルが今度はいつもよりも小さくポワッて光りました。今度はさっきみたいに道まで木も花も草も生えません。ちょっとたくさん生えちゃってる所もあるけど。


 その後もどんどん森を直して行きます。たまにアースとストーンが生やして欲しい木とかお花とかキミルに教えて、それをキミルが生やして。

 それから帰ってくる魔獣が、具合が悪くなったりお怪我しちゃったりした時、食べるとそれが治る葉っぱとかお花もたくさん生やしました。シュプちゃんがいっぱいあった方が良いって。


 どんどん奥に進んだら、僕がこの前冒険した洞窟の所に着きました。洞窟も全部潰れちゃってて、中に全然入れません。最初にルトブルとストーンが洞窟の壁を直して、それから洞窟の中を直すんだって。


 ストーンが魔法を使う時はちょっと危ないから、僕達は離れてないとダメって言われました。だから洞窟が見えない所まで戻って、ルトブル達が呼んでくれるの待ちます。

 でも時間がかかるのかなって思ったら、すぐにルトブルが呼びに来てくれて戻ったら、この前よりも大きな洞窟ができてました。


「中も前より少し広く作ったからな。さぁ、入ってみよう」


 ストーンが先頭でみんなで中に入ります。


「いろいろあったが、これからの事を考えて広く作ったんだ。きっとこちらの森には、ユーキのような子供達と遊びたい魔獣達が集まってくる。小さい洞窟ばかりでは、そのうち狭くなってしまうからな。オレもゆっくりユーキと遊びたいしな」


 中に入って行きながら、キミルが光る草とか、洞窟にしかできない木の実の木とか、前の洞窟にあったもの全部生やしてくれます。


 1番奥まできたら、前よりも広くて、僕のお家の玄関ホールくらいの場所ができてました。アースがそれを見てストーンに文句を言います。


「ちょっと広すぎないか? お前しかここを使わないんだろう」


「ユーキとゆっくり遊ぶためだって言っただろう。それからもう1つ隠し洞窟を作ったんだ」


 ストーンが歩いて行って、壁の所を手で触りました。そしたら壁に模様が出てきて、ゴゴゴゴゴッ! って音がして穴が空いたんだよ。


「さぁ、こっちだ」


 またまたストーンが先頭で穴に入って行きます。それで僕の遊びのお部屋くらいの場所に着きました。


「あいつが戻ってきたらゆっくり遊べるようにな。あいつは他の子供や大人にはそう簡単に会えないだろう。あの姿から変身できんしな。それでここならオレが結界を解かなければ入ってこれないから、ゆっくりユーキ達と遊べるだろう」


「ふん、お前にしては考えたな」


「オレはいつだって、いろいろ考えてるんだよ」


 あいつ? 誰だろう? 僕と遊ぶお約束してる人? 


「ユーキ、モス達のことだぞ。あいつは他の人間と遊べないからな。帰ってきたらこの部屋であいつらとたくさん遊んでやってくれ」


 モス達と遊べる特別なお部屋、ストーンが作ってくれました。僕達みんなで拍手です。


「それにお前もオレも、当分は他の人間と遊べないだろう。慣れるまではな? だからそれまではここでゆっくりユーキと遊べば良いさ」


「おいストーン、今度お前に良い肉を持ってきてやる」


「大きいのを頼むぞ」


 アースとストーンがガシッ!! 腕を組んで頷いてます。何してるの?

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