第325話泥の山へ攻撃
ユーキに魔力を流してもらい、なでなでとお菓子を食べて元気になったディルとピュイを連れ、くろにゃんと共にウイリアム達の所へ戻ると、泥の山は今消えている状態だった。
「向こうはどうだった?」
「心配するな、ユーキは元気だ。戻ってくるとき我らの応援とウイリアム達の応援をしていたぞ。それよりもこっちはどうだ」
「お前達が戻ってから、すぐにまた山が消えて、それ以来出て来ていない」
昨日城から森の反対へと移動し、何回も現れては消える泥の山を攻撃するため、我はディルとピュイを連れてウイリアム達のそばから離れ、森の中へと入った。
森に来てから何度か泥の山が現れたが、やはり大きさはまちまちで、そして1個の山の時もあれば、数個の山の時もある。山が出てくるたびに、魔力の塊を打ち込んだが効果はなく、しかし攻撃しないわけにもいかずに、無駄な時間を過ごす事になった。
途中レシーナ達が合流し、それぞれの状況を確認する。レシーナ達は我と違いピュイがいないからな。魔力による攻撃はできないが、物理的な攻撃を何度か試してみたらしい。しかしアースもストーンも、そして原因かもしれないモス達も、岩を投げようが大きな木を突き刺そうが、全て山に吸収されてしまった。
あの山を調べるため、自らが山に触るという方法もあるが、何せ正体が分からないからな。我自身が吸収されてしまうかもしれず、簡単にはできない。
どれくらい経ったか。ディルとピュイがユーキの所へ1度戻りたいと言い始めた。
その時我は、もし魔法の精度を上げたらどうなるのか、と考えていた。いつもの大きな攻撃ではなく、小さくともその小さい魔法に沢山の魔力を集中させれば? 濃密な魔力の塊を作り山に打ち込めば、もしかしたら山を消し去ることができるのではないか。そう考えている最中だったため、ちょうど良いと思いユーキの元へと戻ったのだった。
帰ってすぐユーキのことを確認すれば、少し心配そうな、ソワソワした様子でそれでもマシロからは離れず、マシロベッドでゴロゴロしていた。が、我らの姿を見ると、すぐにいつもの元気なユーキに戻り、ディル達になでなでを始めた。
なでなでが終わり、ディル達がお菓子を食べている間に、我はユーキから魔力を流してもらい、くろにゃんによるオリビアへの報告も終わり、すぐにここへ戻ってきたのだ。
今回の事はユーキにとってちょうど良かっただろう。そろそろ体に魔力が溜まり始めていたからな。魔力の発散になったはずだ。冒険ばかりで、魔法の練習どころではなかったからな。挙句この騒ぎだ。また魔力が暴走されたら大変だ。
「それにしても、今回のこの泥の山の正体は一体何なんだ。エシェット達の攻撃も効かないとは」
「それについてだが」
我は自分がこれからやろうとしている攻撃について話した。勿論これからレシーナ達にも話す。濃密な魔力の塊をあの泥の山に放つのだ。攻撃がいつも通り吸収されてしまえばなんて事はないが、もし攻撃が上手くいけばこちらの森1つくらいは消えるだろうからな。話しておかなければ、また文句を言われる。それは面倒だ。
「おい、それは本当に大丈夫なのか? 私達が今いるここや、ボルフィスまで消えたりしないだろうな!」
いつも通りのウイリアムの心配性攻撃が開始された。大丈夫に決まっているだろう。我が魔法を使うのだから、ユーキが泣いたり寂しがったりするものを消すはずない。まぁ、森は消えるが、それは後でレシーナ達やキミルやモリオンに直して貰えばいい。
ウイリアムとの話を何とか切り上げ、次はレシーナ達の所だ。行こうとした時、ウイリアムがまた話しかけてきた。今度は何だ?
「あれはどうしたんだ? 変な顔をしているが? 向こうで何かあったのか?」
ウイリアムが見ている方を見ればそこにはジュードとセオドリオが、ユーキに抱きつかれた時のあの何とも言えない表情のまま立っていた。あの時の2人の姿を思い出しまた笑ってしまう。
「くくくっ、気にするな。あれはユーキがいつも通りに行動した結果だ。これが終わったらゆっくり説明してやる」
「何だそれは?」
「では我々は行くぞ!」
くろにゃんでレシーナ達の所へ移動する。レシーナにこれからの事を話せば、森が消えてしまうのは仕方がないと了解を得た。ただそれをやる前に、もう1度森に魔獣達が残っていないか確認をしたいと。そのためすぐに我々は森へと移動した。
我がここへ戻ってきてから、まだ1度も泥の山は現れていない。レシーナが森を確認している最中、アースとストーン、モス達も集まってきた。
森が現れる時と消える時で、何か兆候のようなものがないか、例えば現れる時に一瞬でも魔力の反応がないかなど、改めて話し合ったが、やはり何も分からなかった。
山が現れる所に待機し、すぐに攻撃ができるようにしたかったのだが。
レシーナ達が確認を終え戻ってきたその時、また地面が揺れ、我々がいる場所とは反対の方に小さめの山が現れた。
ルトブルとジュード達と一緒に山の方に向かい、レシーナ達は人間の方へと戻る。アース達は一応元の森に避難した。
4人で結界を張り、我は魔力をため始める。小さく濃密にを意識しながら、できた魔力の玉は我の手の大きさと同じくらいの物だ。
「良いか! 投げるぞ! くろにゃん投げたらすぐに避難だ!」
玉を山に投げ込み、すぐにウイリアム達の所へ戻る。一応ウイリアム達の所にも急いで結界を張った。ふむ、張るのを忘れていた。レシーナ達の方はレシーナ達が何とかするだろう。
が、いくら待っても何の変化も現れない。あれだけの魔力、アレまで吸収されたか?
確認のため、まだ消えていない山をもう1度見に行く。そして先程程ではないが、魔力の玉を作り山に投げ込んだ。
「やはりダメか」
「お前の攻撃がダメならば、我が攻撃しても結果は同じだろう。ジュードやセオドリオも同じだ」
ルトブルの言う通りだ。
さて、どうしたものか。これだけの攻撃が効かないとは。我がドラゴンに戻って攻撃するか? 人に見られるのはあまり良くないが、ドラゴンとしての攻撃で何とかなれば…。
と、その時、ウイリアム達の所にユーキ達の気配が。何故ここに来た? 危ないでないか。マシロは何故止めなかった。
イライラしながらウイリアム達の所に戻ろうとした時、また地面が揺れ山は消えてしまった。
*********
もう誰? 僕早くこの気持ち悪いの治そうとしてるのに。邪魔しないでよ。石とか岩とか木とか投げないでよ。
あっ、でもさっきの丸い魔力の玉のおかげで、あの石の変な感じが少し無くなったかも。まだまだ気持ち悪いけど…。
う~ん、こっちに黄色い花無くなって来ちゃった。後はあそこに咲いてる花だけ。これ食べたら、隣の森に行こう。あっちはまだたくさん咲いてたもんね。
それから気持ち悪いの治しながら、プレゼント? も探さなきゃ。あの小さい子にあげるやつ。
この前見てた時、あの子ドラゴン達にプレゼントって言って、何か渡してたよね。それでドラゴン達が喜んでて。その前はヘビが小さい子にプレゼント渡したら、小さい子とってもニコニコしてた。プレゼントって、みんながニコニコできる物なんでしょう?
あの小さい子がニコニコしてたのは、キラキラの石でしょう、それから可愛い花とったり、ひかる草とったり、いつもニコニコ。う~ん。
!? また気持ち悪いのいっぱいになってきちゃった…。早く黄色い花で治して、プレゼント探そう。
モグモグしゅうぅぅぅ、モグモグしゅうぅぅぅ。あ~あ、無くなっちゃった。よし! 次は隣の森。小さくなって、泥の中に入っちゃった方が早く行けるもんね。みんな集合! 隣の森に行くよ!
『合体?』
「そうみんな僕の所に戻って来て」
『まだ気持ち悪いの治らないね』
「きっと隣の森の黄色い花も全部食べちゃえば治るよ」
『そうだね』
「また向こうで別れるから、みんなよろしくね」
『『『うん!!』』』
よし、みんな集まったから移動しよう。
さっき攻撃してくれた人、またあの攻撃してくれないかな。僕はぜんぜん平気だけど、変な黒い石はあの攻撃で壊せるかも。どうしてもあの石僕とかせないんだよね。
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