第318話みんなとっても慌ててる。どうしたの?

「おはなみちゅからない」

 

 お父さんが帰ってきて、やっと森にこれて嬉しいです。でもなかなか依頼書のお花が見つかりません。赤と青はすぐに見つかったんだけど、黄色だけ見つからなくて、お昼のご飯までに見つけられませんでした。

 お昼のご飯のサンドウィッチをもそもそ食べます。どうしてお花見つからないのかな?お父さんに依頼書読んでもらって、依頼書にはお花はみんな同じ場所に3本一緒に咲いてる、って書いてあったんだよ。それなのに黄色いお花だけないの。


「ユーキ、冒険はこういう事もあるんだ。見つからなかったり、他の人が先にとっちゃったり、まだ時間はあるからゆっくり探そう。それに今日全部見つけられなくても良いんだぞ」


「うん…」


 あのね依頼書に、お花を摘んでくるのも、お芋持ってくるのも、いつでも良いって書いてありました。だから今日見つけられなくても、次に冒険に来たときに見つけても良いんだって。でも僕見つけたいなぁ。


 お昼のご飯が終わって、アースとストーンにバイバイの時間です。アース達はこれから大人の森の方に帰っていろいろやる事があるんだって。だから今日はここでバイバイです。

 2人が森の奥の方に歩いて行って、2人の事が見えなくなったから、僕もお花探し始めます。

 向こうの大きな木がいっぱいあるところや、小さなお池の所、石ばっかり落ちてる所、いろんな所探したけどやっぱりお花ありません。


「それにしても、こんなにないの珍しいな。魔獣が食べたか?」


「あなた、この花の蜜は苦いので有名でしょう?」


 僕ちょっとしょんぼりです。あとちょっとで夕方。今日はもう見つけられないかも。そう思ってたら、ピュイちゃんが木の上でピュイピュイ鳴いて、僕のこと呼びました。


『ユーキ、見つけたなの!! 枝から生えてるの!』


 枝から? ん? よく分かんないけど、良かった見つかって。でも僕木登れない。


「この木ならば足の踏み場があるから我でも登れる。主、ウイリアム乗れ」


 マシロに乗っかってピュイちゃんの所まで行きます。マシロが落ちないように太い木の枝の所で伏せしました。そっと僕もマシロから落ちないように、お顔だけピュイちゃんの方に出します。


「おはな!!」


 ピュイちゃんが言った通り、細い木の枝から赤と青と黄色のお花が生えてました。ピュイちゃんがクチバシで1本ずつ摘んで、僕の所に持ってきてくれます。それから下に下りて、みんなで依頼書見て、お花が間違ってないか確認。それで間違ってなかったから、袋にしまってマシロのカバンに入れました。


「みちゅかったでしゅ!! やった!」


 みんなで頭の上で拍手。

 やっと見つかって、もう少ししか冒険出来ないから、お芋は次の冒険で探します。帰るまで何しようかな? 

 周りを見てたら、この前倒したお花が咲いてました。うん、このお花倒そう。プレゼント貰えるかな? 剣を持って、えいっ!! 前とおんなじでお花が消えていきます。 あっ! 今日は青い石が落ちてる。お花が消えた所に青い石が落ちてました。


 拾ってお父さんにどんな石が聞こうとした時、いろんな所からピィー!! 笛の音が聞こえました。


「何だ!? ユーキ、剣をしまってカバン持ちなさい」


 お父さん達が慌てて帰りの準備始めました。それからマシロ達に何か聞いてます。


「何か分かるか?」


「こちらの森ではない。あちらの森だ」


「魔獣の群れが現れた。なかなか強い魔獣が混ざっているな。まぁそこそこな腕の冒険者が近くにいるからな。大丈夫だろう。が、今日はもう帰った方が良い」


「分かっている。そのつもりだ。あの笛の音は至急森から出ろという合図だ」


 僕が歩くと遅いから、マシロに乗っかって森の入り口まで戻りました。入り口に着いたんだけど、この前よりも人がいっぱいで、なかなかお外に出られません。他の子達やお父さんお母さん達もみんな一緒に入り口に集まっちゃったから。ギルドのお兄さんやお姉さんもいっぱい集まってます。みんなどうしたのかな?


「保護者の皆様! しっかりと手を繋いだり抱き上げ、お子様が迷子にならないように気をつけてください。異変は隣の森でこちらでは確認されていませんし、向こうももうすぐ対処が終わります。念のための避難なので慌てず外へ出てください!」


 エシェットは他の人に気づかれないようにジャンプして、僕達の森が大丈夫か見てくれてます。あのね、大人の森の方で、暴れてる魔獣がいるんだって。もしかしたらその暴れてる魔獣が、僕達の森に来ちゃうかもしれないから、だからみんな森から早く出ないといけないの。お怪我しちゃうかもしれないから。


「とうしゃん、マシロいるからだいじょぶ!」


「ああ、そうだな。でもマシロ達が戦ってる時、マシロ達が魔獣を投げて、それが小さな子に当たったら危ないだろう?」


 あっ、そっか。マシロ達ポンポン魔獣投げるもんね。


 やっと僕達が森から出る番です。森のお外に出ても人がいっぱい。お宿に帰る道の所にもギルドのお兄さんやお姉さんがいっぱいでした。

 エシェットが戻って来て、暴れてる魔獣はあと10匹くらいだって。戦ってる冒険者さんの中にハロルド達がいるって言いました。お手伝いしにいかなくちゃ!


「とうしゃんハロルドのおてちゅだい!」


「あ、ああ、お手伝いな。よしじゃあユーキ、ユーキはアシェルと一緒に先に宿に戻るんだ」


 ん? お手伝いがお宿に帰る事なの? 


「それでハロルド達が魔獣倒せるようにお宿で応援しててくれ」


 応援! うん僕応援する。お父さん達ももしかしたら魔獣がここに来ちゃうといけないから、ここでまだ森から出てくる人達守るんだって。じゃあお父さん達の応援もしなくちゃ。


「マシロとルトブル、お前達はユーキと戻れ。我は此奴らと少し森の様子を調べてから戻る。それにこちらに魔獣が来たら、ユーキに何かある前に倒さないといけないからな」


 エシェットとジュード達は森の事調べるって、すぐにいなくなっちゃいました。お父さんとお母さん、じぃじ達にバイバイして、お兄ちゃんとアシェルと一緒に馬車の乗る所に行きます。


「にいしゃん、いっぱい」


「そうだね。凄い行列だね。これ待ってるより歩いた方が早いかな。でもユーキ冒険で疲れてるし」


「アンソニー様。ここはなるべく早くここから離れた方が」


「やっぱりそうだよね。マシロ、ユーキを乗せて歩いてくれる。もしかしたら途中で寝ちゃうかもしれないから気をつけて」


「ああ」


 ルトブルがマシロに乗っけてくれて、ディル達はマシロやくろにゃんに乗っかります。馬車に乗るのにとっても時間がかかっちゃうから、歩いて帰るんだよ。お宿に向かって出発!


 ギルドのお兄さん達が走らないで歩いてくださいって。さっき隣を小さな男の子が走って転んじゃってた。僕も走ると時々転んじゃうんだ。

 お兄ちゃんがみんなが急いでる時は、慌てて走る人がいるって教えてくれました。慌てて走って、それでお怪我してもっと慌てちゃって、他の人達に迷惑かけるんだって。そうするともっと道が混んじゃって、馬車も走れなくなるかもしれないし、僕達も歩けなくなっちゃうかも。だからゆっくり早く歩きます。

 ゆっくり早く…難しいね。


 歩いてたら子供冒険者ギルドで僕の依頼書にハンコ押してくれた、ネコ獣人さんのお姉さんがいました。僕がお手々振ったらお姉さんもお手々振ってくれて、気をつけて帰ってねって。お姉さん、とってもとぉ~ても大きなオノを背負ってました。お姉さんよりも大きいの。あんなに大きなオノ持てるなんてお姉さん凄いね。


 歩いて帰るからお宿までとっても遠いです。早く帰って応援しないといけないのに。それに僕眠くなってきちゃいました。頭が前にいったり後ろにいったり、がっくんがっくん。

 マシロがおしっぽで押さえてくれたけど、今度は横にがっくんがっくん。危ないからってアンソニーお兄ちゃんもマシロに乗って、僕のこと押さえてくれました。お宿に着いたら起こしてくれるって。絶対だよ。僕応援するからね。

 ディル達も僕とお宿までちょっとだけおやすみなさいです。


「あ~あ、一瞬で寝ちゃったな。それにしてもハロルドおじさん達大丈夫かな?」


「みんな強いからきっと大丈夫だよ。僕達はまずここから離れる事を優先しないと」

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