第317話アースとストーンとおままごと
「ねぇ、やっぱりやめた方が良いよ。危ないよ」
「何言ってる。せっかく新しい森に来れたんだぞ。これから昔みたいにまた楽しく暮らせるんだ」
「でも、それきっと危ないよ。レシーナも近づくなって言ってたし」
「お前はどう思う?」
「私はどっちでも構わない。まぁ、どちらかといえばクスの言うことのほうが正しいと思うが」
「何かあれば俺が何とかしてやる」
「俺がって、みんな一緒なんだからね。僕痛いの嫌だよ」
「何弱っちいこと言ってんだ!」
*********
「かあしゃんまだ?」
「明日には帰ってくると思うわ。もう少し待っていましょうね」
「ユーキはこの頃、いつ? まだ? ばっかり言ってるな」
「あらジョシュア、あなただって小さい時は今のユーキちゃんと同じように、「まだ」ってずっとお父さんに聞いてたのよ」
お父さん次の日も、その次の日も戻ってこなかったの。僕ね迎えに行ったほうが良いと思うんだ。くろにゃんかモリオンならすぐだよ。そしたら明日は冒険に行けるでしょう。でもお母さんにそう言ったんだけどダメって。
お父さん王様じぃじとお話し合いしてるから、邪魔しちゃダメって。邪魔しないよ。お父さんのお話し合いはいつも大切なお話しがいっぱいだから。僕お城のお泊まりしてるお部屋で待ってるよ。
今エシェットとジュードとセオドリオは、アシェルと一緒に買い物に行ってます。それから冒険者ギルドと商業ギルドにも。お父さんが戻ってくるまでお勉強だって。お家じゃないのにお勉強大変です。
僕は昨日新しい依頼書もらってきました。次の冒険はちょっと難しいの。お星様1つじゃなくて2つ。探す物がちょっと多いです。
1つ目の依頼書は同じお花だけど色が3つあって、赤、青、黄色、全部のお花を集めます。
2つ目はお芋さん探します。ギルドで飼ってるお馬さんのご飯で、お馬さんが元気になれるお芋なんだって。
お部屋のベッドでゴロゴロしながらお母さんにお願いしてたら、トントン誰かがドアを叩きました。
「ユーキ遊びに来たぞ」
あっ! アースだ! お兄ちゃんがドア開けたらアースの後ろに知らないおじさんが立ってました。
「だれ?」
「オレだ、ストーンだ」
ふお! ストーンも変身できるの? みんな変身できるだ。凄い凄い!
2人が中に入って来てお土産持ってきてくれました。アースはこの前くれた木の実で、ストーンは別の美味しい木の実でした。お母さんがそれ見てとても喜んで、ちょっと待っててって。それで木の実持ってばぁばがお泊りしてるお部屋に行っちゃいました。
2人は今日1日森じゃなくてここで遊ぶって。だからくろにゃんにおままごとのお道具を出してもらってみんなで遊びます。2人はおままごと初めてだから、僕達で教えてあげるの。
僕とシルフィーとホプリンがギルドで働いてる人、ディル達とアース達が冒険者さん。おままごと開始!!
僕はちゃんと依頼書の折り紙に押すうさぎさんのハンコで、アース達の押してあげて、アース達がお部屋出て行きます。あれ? お部屋の中でおままごとだよ。どこ行くの? アース達呼ぼうとしたんだけどディル達並んでたから呼べなくて、少ししてアース達帰って来ました。2人ともお手々に本物の大きいお魚さんと小さいイノシシ魔獣持ってました。
持ってました。
「わぁ、ピンクの魚、ボク初めて見たよ」
「オレも!」
「どこにいたの?」
みんながアース達の所に集まります。僕もね。
「ユーキ、依頼書に書いてあった魔獣はこれで良いのだろう?」
僕が作った依頼書には、ピンクのお魚さんと小さなイノシシ魔獣の絵が書いてあります。僕のぬいぐるみの中にあって、それを持ってきてって事なの。ぬいぐるみは僕が作って、ってアシェルに言ったんだ。僕が考えたんだよ。でも本物のお魚さんと魔獣がいたんだね。
お母さんが近づいてきて、2人のお手々からお魚さんとイノシシ魔獣とります。それからお話があるって2人のこと別のお部屋に連れて行っちゃいました。お兄ちゃん達がおままごとの続きしようねって、アース達の代わりにお兄ちゃん達がおままごと一緒にしてくれました。
夕方になってお母さん達やっと戻ってきて、アース達と遊べなくなっちゃいました。だから今度また遊ぶお約束してバイバイです。あれ? お母さんさっきのお魚さんとイノシシ魔獣は?
お母さんもアース達も持ってません。どこに持っていっちゃったのかなぁ。
「アース、おしゃかなしゃんどこ?」
「ああ、アレは俺達の今日の夕飯にするんだ。ユーキには代わりにこれをやる」
アースが僕達にたくさん木の実くれました。ありがとうアース!
次の日の朝起きたら、お父さんが椅子に座ってました。
「とうしゃん!!」
「おはようユーキ」
夜中にお父さん帰ってきたんだって。今日はお父さんゆっくりする日。明日冒険に連れて行ってくれるって。それからお土産。冒険に持っていく新しいアメ買ってきてくれました。みんなで1個ずつ舐めて、残りをカバンにしまいます。明日歩きながら食べる分。
僕はお父さんのお膝に乗っかって折り紙。お兄ちゃん達はどっかに遊びにって、お部屋にはお父さんとお母さん、じぃじとばぁばがいます。
何かね、じぃじはずっとお父さんにブツブツ言ってました。昨日のアース達のことお話してるみたい。
「まったく、あんな物を持ってきおって」
「私が丁寧に説明したから大丈夫だとは思うけど」
「私がいないうちにそんな事が。はぁ、あの話を聞いたら毎日でもユーキの所に来そうだな」
あのねアースとストーンは、小さい子が冒険に慣れて、他のお父さんやお母さん、冒険者さんも慣れたら、みんなと遊べるんだって。それまでは僕達とだけ遊ぶの。明日は森に行くし、冒険しない時は街で遊べるから僕とっても嬉しいです。でもお父さんは嫌そうなお顔。
お父さんが戻ってきてその日は1日ずっとお父さんと居ました。お兄ちゃん達は遅く帰ってきてお母さんに怒られてたよ。明日は朝早くから冒険なんだから、遅くまで遊んでちゃいけないんだよ。
ベッドに入ってお休みなさい。
「マシロにお前達、気づいているか?」
「ああ、たまにいきなり魔獣が湧いてくるような気配がある」
「主に何かあるかもしれん。気をつけなければ」
*********
「うわぁ!! 何だ!? いきなりどこから現れた!」
「おい逃げるぞ!」
冒険者達が逃げ出していく。この光景も久しぶりだ。
「はははっ、見ろ! 皆喜んでいるじゃないか」
「アレは喜んでるんじゃないと思うよ」
そんな事はないだろう。あの声は喜んでいる時の声じゃないか。
冒険者達が居なくなり、俺達も自分の縄張りに戻る。たまに森の中間よりも外に出なければ、冒険者に出会う事ができない。それだけ森の力が強いという事だが、それでは奥にいる俺達のような強い魔獣は、なかなか冒険者と遊べない。
アースドラゴンとバジリスクは気に入った子供がいるとかで、毎日のようにその子供の所に遊びに行っているんだ。俺だって遊びたい。
「ねぇ、それ本当に大丈夫?」
縄張りに戻って早々、クスがまたいつもの心配性を発揮する。本当にこいつは。何でこんなに気が弱いんだ。タスに何か言ってやれと言えばタスはタスで、
「私は今この本を読んでいる。静かにしてくれ」
だと。人間の持ち物に興味があるなんて変わったやつだ。
そんな事よりもと、遊んで腹が減っている俺は、晩飯の置いてある場所へと2人の事を気にせず歩き出した。おい! と怒るタス。俺が腹が減っているんだ。お前達だって腹が減っているだろう?
今日の晩飯はワイバーンだ。なかなか大きくて食べごたえのあるだろうワイバーンに舌舐めずりをし、すぐに噛み付いた。クスとタスもすぐに食べ始める。
ぺろっとワイバーンを食べ終わり、寝床に戻ってゴロッと転がる。
「お、重いぃ~」
「おい、私は本が読みたいと」
「俺は眠たいんだ」
「なら他に迷惑をかけるな。まったく」
さて、明日はどうするか。あまり勝手をしてレシーナにアレがバレると困るしな。明日は1日休むか? その間にアースドラゴン達がどんな子供を気に入ってるか、隠れて見に行っても良いしな。よしそうしよう。
それぞれが自分でしたい事をし、俺はすぐに眠りについた。
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