第316話陛下への報告
「ん? おはよ?」
あれぇ? この前も起きたらお部屋真っ暗だったよ。それにマシロにまた夜中って言われました。僕また帰りに途中で寝ちゃったんだって。またまたお父さん起こしておしっこに行って、でも今日はあの怒鳴るおじさん居ませんでした。お酒飲んでうるさい人達はいっぱいいたけど。ハロルド達も居なかったよ。
「ハロルドいない」
「今日はみんな疲れてるから寝てるんだ。お腹空いたか?」
「うん」
「よし、じゃあ部屋に戻ってご飯食べよう」
お部屋に戻ってご飯食べて、それからちゃんと草と石がカバンに入ってるか確認してから、もう1回寝ました。
朝起きて、今日は朝ご飯食べません。夜中にご飯食べちゃったから。みんながご飯食べ終わるの待ってからお部屋に戻って、昨日持って帰ってきた草と石を見せてから、ヘビさんに貰った花と虫が入ってるきれいな石をみんなに見せます。
「あのね、おおきなへびしゃんとおともだちになったの。しょれでプレゼントもらったの」
ヘビさんのお名前がストーンで、どんな食べ物が好きか、ヘビさん乗り物が凄い速いとか、いろいろなお話しました。じぃじはお友達できて良かったなって言ってくれたよ。
僕の冒険のお話終わったら、次はお兄ちゃん達が森で取ってきた物見せてくれます。お兄ちゃん達が取ってきたのは緑のお花と砂でした。
緑のお花は、お怪我治すお薬になるんだって。僕はディルがいてくれるからお怪我しても治して貰えるでしょう。お父さん達も。でも他の人達は治してくれる人いないから、お薬持っていかないとダメダメです。このお花は少しのお怪我だったら直ぐに治るんだって。
お花をパリパリに乾かして、それからそれをパラパラに細かくして、それからいろいろなお水と混ぜて、何日もお鍋でコトコト。10日もコトコトするんだよ。そうするとお薬が出来るの。
お砂はいろいろなお道具に使うんだって。剣をピカピカに綺麗にしたり、鎧のお洋服作るときお砂を混ぜて作ったり。
それからお道具ばっかりじゃなくて、お家のお屋根作るときに砂と土を混ぜたり、壁作るときにも混ぜたり、砂を混ぜるととっても強いお屋根や壁になるんだって。
後で冒険のお話してくれるってお兄ちゃん達とお約束して、先に一緒に冒険者ギルドに行きます。
「とうしゃんおとまり?」
「ああ、お仕事でお城に戻るんだ。明後日の夜には帰ってくるから、お母さんの言う事聞いて、良い子にしてるんだぞ」
お父さんお仕事でお城に戻るんだって。お城にお泊りするから、お宿にすぐに帰ってこないの。だからくろにゃんに連れて行って貰えばいいのにって言いました。でも他にも一緒にお城に行く人がいるから、くろにゃんはダメなんだって。僕お父さんいなくてしょんぼりです。
「なるべくすぐに帰る。ユーキは次の冒険の準備してまっててくれ。お父さんが帰ってきたらすぐにまた冒険だ」
馬車に乗るところまでお父さんお見送りです。馬車の所には冒険者ギルドのお兄さんが2人待ってました。お父さんと一緒にお城に行く人だって。
お父さん達が馬車に乗ってお窓からお顔出してバイバイ。僕も一生懸命お手々振ります。お父さん早く帰ってきてね。
ガタガタ、ガタガタ。馬車がどんどん遠くに行っちゃって、すぐに見えなくなっちゃいました。
「ほらユーキ、僕達は冒険者ギルドだよ。僕達の用事終わらせたらすぐにユーキの所に行くから」
「次の冒険はまた一緒に行くからな。一緒に依頼選んでやるよ」
お兄ちゃん達とお手々繋いで冒険者ギルドに行きます。お父さんのお仕事って何かなぁ?
*********
「それで報告書は?」
「どちらの森の物も全て揃っています。陛下に提出するものと、ギルド用です」
「よし」
ドラゴンの話は陛下は知っているが、バジリスクが子供の森の方に来たことは知らないからな。それに他の魔獣の事も話さなければ。
昨日の宿への帰り道、途中で思っていた通りユーキが寝てしまい、私はユーキの事を抱っこしたまま宿にたどり着き、ユーキをベッドに寝かせると、オリビアはギルドへ話をしに行き、私は部屋で父さん達に森で何があったか詳しく話し、そしてユーキがプレゼントに貰った物を見せた。
「この花と虫はアレじゃ。まさか本物が見られるとは」
「凄いな、本に載ってる物が目の前にあるなんて」
話をしている最中、ユーキの所で一緒に寝ていたはずのキミルが起きてくると、私達の話に加わる。
「それキミル出せるよ。出してあげようか」
「いやダメだ! 出すな! 出すんじゃないぞ!」
「ふ~ん? そうだ、ユーキがお家に帰ったら出してあげようかなぁ」
そうブツブツ言いながらユーキの所に戻っていくキミル。いや、今出すなと言っただろう。
この石の中に入っている花も虫も、もう何百年も前に絶滅されたと言われている花と虫だった。絶滅した物が記載されている本にも乗っていて、私の家の書庫にも記載されている本が置いてある。
これを洞窟で見たときは思い切り叫びそうになったが。ユーキに持って帰るなとも言えず、断ればバジリスクがどういう行動に出るか。
「父さん、私はこれから1度陛下の所に話をしに行きます。新しく分かった魔獣の事やその他、報告することはたくさんあるし」
「そうじゃのう、そうの方が良かろう」
大人の方の森に強い魔獣がいるのはまだ良いとしても、子供の方にバジリスクまでいるのは問題だ。子供は怖い物などなく近づいていくかもしれないが、その親や一緒について来ている冒険者は、驚き絶対攻撃するだろう。そして子供達は森に入る事を禁止されるはずだ。
そうなっては子供達と遊びたいと言っている2人はとても悲しむだろうし、大人達が戦う事で怪我人や死人が出る可能性がある。
普通の森でそれは当たり前の事だが、ユーキや子供達が楽しんでいる森で、そんな事があってはいけない。
2人はとりあえず、私達以外の人間が居ない時に、ユーキに会いに来て遊ぶと言っている。今のうちに何か対策を考えなければ。オリビアにはギルドに今まで確認された魔獣の報告書を提出してくれと頼みに行ってもらった。
馬車は予定通り夕方までに城に着き、そしてそのまま陛下に話をしに行った。
書類を確認する陛下と殿下。読み終われば陛下はいつものように、今すぐにでも森に行きそうな勢いになっておられたが、殿下はまたかと呆れ返っていた。
「またどうして、強い者ばかりが子供好きなんだ。ユーキは慣れているし、よく分かっていない子供達は、大きく強い魔獣と遊べると喜ぶだろうが」
「わしも会いに行くかのう。森を視察するついでじゃ」
「父上そういう問題ではないんですよ」
「分かっておる。そう怒るな。さて真剣に話をしよう」
いろいろ話をしたが、これといって良い案が浮かぶ訳でもなく、なかなか話はまとまらなかった。夕食をいただき、その後も話し合いを続ける。
そして今日の話はここまでにしようとした時、レシーナ達が現れた。
「私達も話をしに来たわ」
夜ドラゴンのアース達に話を聞き、ユーキの所へ話をしに行って、私が城にいると聞いてすぐにここへ来たらしい。どうもあのバジリスクのストーンはレシーナ達に何も言わず、あの洞窟まで来たらしい。
前日にアースと会い、ユーキと遊んだ時の事を楽しそうに語るアースを見て、自分も遊びたいと思ったらしい。そして大人の森の方にはレシーナ達以外にも自由に移動できる魔法を使える魔獣が居るらしく、その魔獣にあの洞窟まで運んで貰ったそうだ。
「ごめんなさいね、びっくりしたでしょう? でもなかなかゆっくり会える相手じゃないから楽しかったでしょ? ユーキはとっても楽しかったって言ってたわよ」
まぁ、それはユーキだしな。
「私としては2人が子供達と遊ぶのは、とっても良い事だと思うのよね。でもさすがに貴方達はそれだと困るでしょう」
まったくその通りだ。それでねと続けるレシーナ。少しの間、アースはユーキと遊び、アースがユーキとの遊びに慣れたら他の子供と遊ぶ。ストーンの方は当面他に誰もいない所でユーキだけと遊び、他の子供達がアースに慣れたころに、新しい友達だと言って仲間に加わるのはどうかと。
陛下はそれでも良いと考えたようだが、一応もう少し考えると返事をして、明日またレシーナに城に来るように、そして決まるまでは絶対ユーキの前以外には姿を現さないようにと言い、その日は解散となった。アースは変身してまでユーキの所にきたからな。ちゃんと言っておいて貰わないと。
はぁ、早く話をつけてユーキの所に戻らなければ。私を見送っている時のユーキの寂しそうな顔を思い出す。お菓子でも買って戻るか。
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