第308話冒険に出発! でもお泊り?

「とうしゃん、はやく!」


「待て! 走るな! まったくこの頃ユーキはいつも走ってる気がするな」


 朝早くお目々が覚めて、すぐにお母さん起こして冒険者のお洋服着せてもらいました。それから朝ご飯食べるまでみんなで何回もカバンの中確認して、やっと朝のご飯が終わって、今みんなで馬車に乗るところです。


「はやくいかないと、ちょっとちか、ぼうけんできないでしゅ!」


 だっていろいろやる事いっぱい。依頼書のお花とお水探して、それからみんなでいろんな冒険したいの。はやくいかないとすぐに帰る時間になっちゃうでしょう。


 先にお兄ちゃんが馬車に乗って、僕のこと抱っこして馬車に乗せてくれます。お母さんが乗ってお父さんが乗って、後ろの馬車にはじぃじとばぁば、アシェルとアメリアが乗りました。その後ろの荷物を乗せる馬車にエシェットとジュード達が乗ったの。


「ユーキ、お父さんユーキに言うの忘れていたんだが、今日は冒険する森の近くの宿にお泊まりして、明日森に冒険しに行くぞ」


「うゆ? おとまり?」


「ああ、そうだ」


 今日冒険じゃなかったの。お城から森まで馬車で行くと着くのは夕方で、夕方から森に行ったらぜんぜん冒険出来ないでしょう? だから近くのお宿にお泊りして、次の日に森に行くんだって。

 

 僕早く行きたくて、くろにゃんかモリオンに連れて行ってもらおうって言いました。そしたらお兄ちゃんが、もう冒険始まってるんだぞって。だってまだ森に行ってないよ?


 冒険する日が決まって、お荷物用意したりお洋服用意したりするのも冒険だし、冒険する所まで行くのも冒険だし、お家に帰ってくる時も冒険。それから依頼書とお願いされた物をギルドに持っていくのも冒険。全部で冒険なんだって。

 う~ん、僕良く分かりません。ディル達も頭をコテンってして考えてます。


「ジョシュア、ユーキにそんな難しい事言っても分からないよ。あのねユーキ、もし夕方から森に入っても、すぐに帰らなくちゃいけないでしょう。それで終わりは嫌でしょう?」


 うん。僕たくさん冒険したい。


「だから朝から冒険できるように、お宿に泊まるんだよ。朝ご飯食べてすぐ冒険できるんだよ」


 そっかぁ。うん、僕朝から冒険が良い! でも…ちょっとだけ残念。

 お母さんがお花とお水見つけたら、その後何するのって聞いてきました。うんとねぇ、見つけたあとは、いろいろな所冒険するの。


「森にはたくさん可愛い魔獣もいるみたいよ。みんな遊ぶのが大好きな魔獣だから、きっとユーキちゃん達とも仲良くなれるわ」


 可愛い魔獣さん? どんな子がいるのかなぁ。冒険も楽しみだけど、魔獣と遊ぶのも楽しみ!


 馬車はどんどん進んでいって、小さな街でお昼ご飯食べて、それからまた馬車に乗って。途中で窓からお外見たら、お馬さんに乗った人や、魔獣に乗った人、馬車がいっぱいでした。冒険に行く人いっぱいなんだって。こんなにたくさんの人達が森に行ったら混んじゃって、僕達森に入れなくなっちゃわない? 僕がそう言ったらお母さん達笑いました。


 馬車の中でおやつ食べて、ちょっとだけお昼寝して、お昼寝してたらお父さんが僕のこと起こしました。


「ユーキ起きなさい。森が見えてきたぞ」


「うにゅう…」


「ユーキ、ほら森だ」


「もり………!?」


 森!! 僕急いで起きてお父さんに抱っこしてもらって、窓からお外見ました。前の方に森が見えます。とっても大きな森です。森? お山みたい。


「とうしゃんあれ! あのもりでぼうけん?」


「あぁそうだぞ」


「もりでしゅか? おやまじゃない?」


「ああ、森が広すぎて山に見えるけど、ちゃんと森だぞ(ほぼ山だが…)」


「ふわわわわわ!!」


 ディル達が外に出てマシロとくろにゃんに乗っかって森を見ます。

 もっといっぱい森を見てたかったのに、馬車が街に中に入っちゃいました。でも全部は見えなくなっちゃったけど、山みたいに大きい森だから、お家の屋根の上から森が見えます。


 街を歩いてる人はほとんど冒険者さんのお洋服着てて、僕みたいな小さな子も冒険者さんのお洋服着た子がいっぱいいます。あと魔獣もいっぱい。


「ふわわわわわ!!」

 

 僕嬉しくてお父さんの抱っこからお椅子の上に立って、ぴょんぴょんジャンプです。


「落ち着きなさい!」


 お父さんが僕のお洋服掴んで、僕ジャンプできなくなっちゃったから、今度は馬車の壁をバシバシ叩きます。

 叩いてたら馬車が止まりました。今日お泊りするお宿に着いたの。お父さん達が下りて僕が1番最後に下ります。


「きゃあぁぁぁぁぁ!!」


 僕嬉しくて走っちゃいました。でもすぐにお父さんに捕まります。


「はぁ、ちょっとそこら辺を歩いてくる。このままじゃ宿の中で走り回って、迷惑かけそうだからな」


 お父さんとお手々繋いで街の中を歩きます。この街にあるお家は、ほとんどお宿なんだって。冒険する人達がいっぱいだからお宿もいっぱい。でも剣や弓を売ってるお店もあるし、お元気になるお薬を売ってるお店も、冒険のお洋服や怪我しないようにするお道具もいっぱい売ってます。

 僕みたいに最初から用意してくる人達もいるし、この街で用意する人、それか何日もたくさん冒険する人達もいて、その人達は準備してきても、途中でお薬とかなくなっちゃうから、ここでまた買って冒険の続きするんだって。


『ユーキ、美味しそうな匂いするよ』


 ホプリンがおしっぽで向こうのお店指します。冒険者さん達がたくさん並んでるの。お父さんが並んでみるかって、みんなで列に並びます。並んでる間にルトブルがお店で何売ってるか見てきてくれました。

 お店で売ってるのは、冒険の時に食べるご飯でした。でもルトブルが並んでる人達のお話聞いたら、とっても美味しいご飯で、冒険の時に食べるだけじゃなくて、夜のご飯でも食べたいって言ってたって。

 ルトブルのお話聞いて、お父さんが買って帰ってもし美味しかったら、明日また買って冒険に行こうって言いました。


 やっと僕達の番になって、売ってたのはお肉の挟んであるサンドウィッチでした。あのね、とっても良い匂いがするサンドウィッチと、全然匂いのしないサンドウィッチ売ってました。匂いのする方は街の中で食べる方で、しない方は森で食べる方。


 お店の人のお話聞いてお父さんが凄いなって。僕達小さい子が入る森は、仲良しな魔獣ばっかりだから、匂いのする食べ物食べても大丈夫だけど、大人の人は入る森は、戦う魔獣ばっかりだから、あんまり匂いのする食べ物食べると、魔獣が匂いで寄ってきちゃうから、匂いのしない食べ物の方が良いんだって。


 お父さんが両方ともサンドウィッチを買って、僕は匂いをクンクン。みんなも一緒にクンクン。ほんとだ、全然匂いしない。パンの匂いだけです。お父さんも匂い嗅いでびっくり。

 

 マシロの持ってくれてるカバンにしまって、もう1つだけお店に行きました。お砂糖のお菓子売ってるお店です。食べるとしゅわわわって溶けてなくなっちゃうの。明日おやつたくさん持っていくけど、これも小さいお菓子だから持っていって良いって、お父さんが買ってくれました。


 お宿に戻ってみんなでサンドウィッチ食べて、明日は冒険する日だから早く寝ます。

 ドキドキ、ドキドキ、なかなか寝られません。横見たらお父さんもお母さんももう寝ちゃってます。


「マシロ、ねむれない」


「主、頑張って寝ないと、明日起きられないぞ」


「おめめ、ぱっちりなの」


 僕がそう言ったとき、フワァって急にお部屋の中が光ってレシーナが現れました。僕お父さん達に会いに来たと思って起こそうとしたんだけど、レシーナがしぃ~って。それから僕のこと抱っこして、僕とマシロ達に結界を張りました。


「これでお話しても大丈夫ね。ユーキ明日森に来るでしょう」


「うん!!」


「森に来てくれるユーキにプレゼント持ってきたのよ」


 レシーナがお星様の形した透明な石くれました。


「これはユーキを守ってくれる特別な石なの。ユーキだけじゃなくて、ユーキの家族もお友達も守ってくれるわ。冒険するなら持っていた方が良いわ」


「まもってくれる? ありがとでしゅう!」


 僕は無くさないようにすぐにカバンにしまいました。それからすぐにベッドに潜って、レシーナが眠れる魔法かけてくれたの。それで朝起きたらもうレシーナいませんでした。

 お父さんに昨日レシーナが遊びに来てくれた事お話して、お星様を見せました。そしたらお父さんが、


「レシーナ! 何渡してるんだ!」


 って、とっても怒って、レシーナがどこかに居るかもしれないから、ちょっと見てくるって、お部屋から出ていっちゃいました。それからお母さんが、お星様は絶対ほかの人に見せちゃダメって、でもとっても良いもの貰ったわねって、ニコニコ頭なでなでしてくれました。お父さん何で怒ってるのかな?


 朝のご飯を急いで食べて、剣もお荷物も完璧。いよいよ冒険に出発です。

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