第291話じぃじ、ばぁば、バイバイ!

(***)

 あ~あ、最近つまらないわね。全然みんな遊びに来てくれないんだもの。ここ何十年も人間や獣人の冒険者達を見ていないわ。

 この前はせっかく何十年ぶりに人が遊びに来てくれたと思ったのに。全身黒い変な洋服を着てて、闇の力で森を汚そうとするなんて。さっさと消したから別にいいけど、あんな人間達のために、

この森を作ったんじゃないわ。


『どうしたの? レシーナ? 考え事?』


 仲良しの小鳥が今日も遊びに来てくれたわ。この森で1番の古い友人よ。


「ええ、そうね。考え事よ。ここ何十年もみんなが遊びに来てくれないからつまらないって考えてたの。あなた達もそうでしょう。」


『う~ん。私はレシーナと一緒なら、どこにいても楽しいよ』


「ふふ、ありがとう。私もよ。でもやっぱり前みたいにたくさんいろいろな人が遊びに来てくれて、賑やかだった頃が懐かしいの。他のみんなも楽しく暮らしてたでしょう」


『うんそうだね。今は誰も勝負しに来てくれないから、強い奴が威張ってて、私達遊ぶ場所が狭くなってきちゃってるの』


「そうでしょう? それも問題なのよ。それに宝箱とかもまだ余ってるし。私がいろんな所で集めた宝箱がまだたくさん残ってるのよ」


 はあ~、何か良い考えないかしら。また昔みたいにみんなが楽しめるような。また森を作ってもいいのだけど、同じような森を何個作った所で、すぐにまたみんな来てくれなくなるだろうし。

 

『レシーナ、そう言えばルーカーの子供が生まれたよ』


「あら、じゃあ後でみんなでお祝いに行かなきゃね」


 プレゼントは何がいいかしら、赤ちゃんが喜ぶものはふわふわの葉っぱのベッド? それとも………!?


『レシーナ?』


 これだわ!! 大人達も私の大好きな小さな子供達も、みんなが楽しめる森は! これできっとみんなまた森に遊びに来てくれるわ。こんなにいい考え、どうしてすぐに考えられなかったのかしら。

 

 そうと決まればゆっくりしていられない。ルーカーの赤ちゃんにふわふわベッドを届けたら、すぐに良い場所を見つけてこなくちゃ。場所を見つけたらみんなに連絡をとって、移動したい子達は私が移動させれば良いし。

 ふふふ、アイディアがどんどん湧いてくるわ。さぁ、レシーナ行動開始よ。早くみんなの喜ぶ顔が見たいわ。

 

 と、その前に、あいつらの事、もう1度確認しておかなくちゃ。もしかしたら他に仲間が居るかもしれないし。ここから私が居なくなっても、ここは私が作った森よ。大切に残さなきゃ。たまに遊びに来たりするだろうし。ここに残していく魔獣や生き物達が心配だもの。


 小鳥にルーカーにプレゼントを持っていくと伝えてと言うと、小鳥はすぐに飛び立って行った。ふわふわベッドにはあの葉っぱが1番。あいつらを消した近くに生えてるから、ついでに確認しちゃいましょう。


「~~~♪」


 ああ、本当楽しみ!


(ユーキ視点)

「じぃじ、ばぁば、さようなら。バイバイでしゅう」


「うむ。また遊びに来るのだぞ。家に帰ってからすぐでも良いからな」


「あなた、いくらユーキちゃんと離れたくないからって、そんなすぐはダメですよ。あちらのご家族もユーキちゃんに会いたいでしょうからね」


「ううむ、そうか…」


 じぃじがとっても寂しそうなお顔してます。僕すぐ遊びにくるよ。くろにゃんとモリオンに連れてきてもらうから。お父さんは馬車ってずっと言ってるけど…。順番じゃダメかな? 馬車で遊びにきたら次はくろにゃん。だってお父さんは馬車が好きなんでしょう?


 じぃじに抱きついて、それから抱っこしてもらって、次はばぁばの抱っこ。それからじぃじのお家でお仕事してる使用人さんとメイドさんにもバイバイして馬車に乗ります。チョコミ達とプルカはアシェルが乗ってる馬車の方に乗ってます。それからエシェットとジュード達は荷馬車に乗ってるの。マシロとくろにゃんはジュード達を背中に乗っけたくないって。だから荷物と一緒に荷馬車に乗りました。2人はお馬さんに乗れないから。


「それではまた。いろいろありがとうございました」


「今度はもっとゆっくり遊びにきなさい。今回はあまりにも騒がしくて、わしもゆっくりユーキと遊べなかったからな。もっと遊びたかったのに」


「お父さん、お母さん元気でね。雪が積もる頃になったらまた来るわ。きっとユーキちゃん大喜びするはずだから。その前にも来るかもしれないけれど」


 ガタッ、馬車が動き始めました。お父さんに抱っこしてもらって窓からお外見て、じぃじ達に一生懸命お手々振ります。


「バイバイでしゅう!!」


「またすぐ遊びに来るんだぞ!」


「ユーキちゃん、怪我とかしないで元気にたくさん遊ぶのよ!」


 どんどんじぃじ達が小さくなっていって、門に近づいたら見えなくなっちゃいました。門の所にいる騎士さんに、ピッ! って騎士さんの挨拶して、その後はお店通りとか街の中を見ます。

 たくさんお土産買って、僕達もおもちゃとお菓子たくさん買って貰ったんだ。怖いことあったけど、でも楽しいことの方がたくさん!

 

 お店通りが終わったら、今度は大きなお船見て、お船とは反対の方に馬車が走って行きます。

 お船もとっても楽しかったです。じぃじが大きなお船のおもちゃ買ってくれたから、お家に帰ったら川で遊んだり、お遊びのお部屋にあるお花のプールに浮かべるの。リク君にもお船のおもちゃお土産。一緒に遊ぶんだぁ。

 

 ビースロイカ、バイバイ! また遊びに来るからね。すぐに遊びに来るからね。最後の門を通り抜けて、僕はお父さんのお膝に座ります。

 

 それからうさぎさんのカバンをゴゾゴソ。アメ舐めようとしたらお母さんがまだダメよって。お菓子もまだダメ。お昼のご飯が食べられなくなっちゃうから。

 あのね出発が少し遅くなっちゃったの。アルマンドさんやシーラお姉ちゃん達にさようならしてたら、お父さんとアルマンドさんのお話がなかなか終わらなくて遅くなっちゃいました。


 アルマンドさんにさようならしに行ったとき、シーラお姉ちゃん達とスージーちゃんとアーク君と、また一緒に遊ぶお約束しました。それで今度会う時は、シーラお姉ちゃん達が背中に乗せて泳いでくれるって。ルトブルにちょっとしか乗って遊べなかったし、今度遊びに来る時はやりたいこといっぱいです。


 アルマンドさんが暮らしてる海のお城もお家も、全部綺麗に直りました。あと、ジュード達が壊しちゃった他の海の街もみんなで綺麗に直したの。お父さん達も直すの手伝いに行ったんだよ。


 それからみんなの街が直って、みんな嬉しくていろいろな所でパーティーしてたから、エシェットとルトブルが倒したクラーケンとシーサーペントを、みんなで分けて食べました。いっぱいあるからね。くろにゃんに腐らないようにしまってもらってます。

 じぃじのお家の料理人さん達は誰もクラーケンとシーサーペントを料理した事がないって言ったから、ルトブルが生で良いだろうって言ったら、お母さんに怒られてました。


 街の広場に街の人達が集まってパーティーです。大きな大きなお魚さんを焼く道具を持ってきて、どんどんクラーケンとシーサーペントを焼いていきます。焼くだけじゃなくてスープも作りました。どっちも美味しかったけど、僕はシーサーペントの方が好き。シーサーペントの方が柔らかいの。クラーケンは顎が疲れちゃった…。

 街の人達とたくさん食べたけど、まだまだいっぱい残ってるから、お家に帰ってからも食べられます。


「とうしゃん、あちたはおしゃかなしゃんつれる?」


「どうだろうな。街に着いたら聞いてみよう。もしかしたらまだ魚が届いてないかもしれないからな。大丈夫なら遊ばせてやる」


「何だ? 魚がいないのか?」


 くろにゃんに乗って馬車の横を移動してるルトブルが、窓から馬車の中見てきました。


「あの魚の半分は街から届けてるんだ。まだ完全に漁が復活したわけじゃないからな。もしかしたら魚がいないかもしれない」


「ならば心配するな。何かあるといけないと思い、くろにゃんに食料として、生きた魚を海水ごと預けてある。元気な魚を出せるから大丈夫だ」


「いつの間に…はぁ、あんまり勝手なことをしないでくれ」


「食料は大事だろう?」


 良かった。お魚さん釣りできるみたいです。またたくさん釣れるかな? ふふふ、楽しみ!

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