第274話呼んでるのは大好きなお母さん?

(オリビア視点)

『うえぇ…うわあぁぁぁぁぁん!!』


 あら誰かしらあんなに泣いて。側に誰も居ないの? 親は何をしているのかしら。小さい子を泣かすなんて。でも…この声。


『かあしゃんおきて。うわあぁぁぁん!!』


 もしかしてユーキちゃん? 私を呼んでるの? そんなに泣いてウイリアムは何をしているのかしら。私ユーキちゃんのことお願いしたはずよ。それなのに泣かせるなんて、まったくもう! 


 それにしても何でユーキちゃん、私に起きてって言ってるのかしら? それに…。


『ユーキが大変なんだぞ! オレ頑張るから起きてユーキのこと助けて! オレもオリビア起きないと悲しいぞ!』


 ディルちゃんの声かしら。ディルちゃんまで私に起きてって。

 私どうしたのかしら? もしかしてこれは夢? 夢なのに起きろって言われるのもおかしいけれど。

 どちらにしても、早く起きてって言わてるなら早く起きないとね。ユーキちゃんが泣いてるのに、私が放っておくと思う? 起きたらウイリアムのこと怒らなくちゃ。


 さぁ、オリビア起きて。起きて泣いてるユーキちゃん抱きしめて、落ち着かせましょう。そしていつもの可愛い顔で笑うユーキちゃんに戻ってもらいましょう。今行くわ。


 そっと目を開けると、目が霞んで周りがよく見えなくて、何回か瞬きしてようやく見えてきて。でも何が起きてるかさっぱりだったわ。だって部屋の中は風が吹き荒れているのだもの。

 でも…私本当に寝てたのね。何でこんな風の吹き荒れる部屋で寝てたのかしら。

 

 ふと胸の上に気配を感じて見てみれば、私の胸の上ではディルちゃんが、ポロポロ涙を流しながら魔法を使っていたわ。可哀想にそんなに泣いてどうしたの? 撫でてあげようと手を動かそうとすれば、体が少しだけだけど動かし辛い感じがして。動くのを止めて、静かにディルちゃんに声をかけたわ。


「ディルちゃん。どうしたの?」


 ディルちゃんがバッと顔を上げ、そして私の顔をじっと見てきて、そのあと自分の顔をくしゃっと歪めたと思ったら、ウイリアムを呼んだり、お父さんを呼んだり。

 それからみんなが私のことを囲むようにして見てきたけれど、みんな泣きそうな顔してるし。本当何なのかしら?


 ウイリアムが私の体を支えながら、そっと起こしてくれたわ。その間にも部屋の中は風が吹き荒れていたけれど。そういえばユーキちゃんは? 私を囲んでる人の中にユーキちゃんの姿がないわ。

 

 …そうだわ私達戦っている最中だったはず! この風は敵の攻撃? ウイリアムあなたやアンソニー達がここに居るってことは、まさかユーキちゃんはあの海の国に1人なの? もう全然様子が分からなくてイライラしてきたわよ!


「あなた何があったの? ユーキちゃんは?」


「時間がないから簡単に話すぞ。詳しくはまた後で話すが。オリビア、君は1度心臓が止まったんだ。ディルが回復してくれたんだが、それでも治らなくて。そしてユーキが君が起きないと、無理やりもっとディルに魔力を流そうとした。そして魔力が暴走してしまったんだ」


 ウイリアムが見た方をみれば、ユーキちゃんの姿が。お座りをして下を向いて、そしてユーキちゃんを中心に風が吹き荒れていて。


「きっと今のユーキに声が届くのは、オリビア、君だけだ。目が覚めてすぐで悪いが頼む。君の声をユーキに届けてくれ」


 私はウイリアムに支えられながらユーキちゃんの前に。

 そう。ユーキちゃん、私を助けるために頑張ってくれたのね。じゃあ今度はお母さんがユーキちゃんを助ける番ね。

 さぁ帰っていらっしゃい。そしてお母さんにいつもの笑顔を見せて。それから抱きしめさせて。私がお帰りなさいと言ったら、「ただいまでしゅう!!」と、元気な声を聞かせて。


(ユーキ視点)

 お母さんまだかなぁ。まだお怪我治らないかなぁ。僕が頑張って魔力流してるからかな、お父さん達もずっと静かに待っててくれてるよ。


 お母さんがお怪我治って、悪い人魚さんも魔獣も倒したら、またみんなでお船に乗りたいなぁ。ピュイちゃんもチョコミも一緒だよ。あっ、そうだ! お母さんにピュイちゃんのこと言わなきゃ。新しいお友達。


 僕ねこれからお父さんとお母さんと、みんなでやりたい事、遊びたい事たくさん考えてたの。そしたらどっかから、声が聞こえてきました。とっても小さい声。誰の声かな? 静かにね、僕頑張って魔力流してるところだから。


 でもどんどん声大きくなってきます。


『………ちゃん、………ちゃん」


 だぁれ? もう静かにだよ!


『………ちゃん、ユーキちゃん!』


 あれ? お母さんの声? 僕のこと呼んでる? ほんとにお母さんの声かもう1度聞こうとしたら、僕の周りがちょっと煩くなりました。風の音がビュウッ!! って。そのあとお母さんの声全然聞こえません。

 僕、間違っちゃったかな? また魔力たくさん流して周り静かにして、お母さんのお怪我治さなくちゃ。

 

 そう思って、もう1度魔力たくさん流そうとした時でした。またお母さんの声が。さっきよりも大きな声で僕のこと呼んでます。

 ほんと? 間違えじゃない? う~ん。だって聞こえたり聞こえなかったり、良く分かんないです。


「ユーキちゃん!!」


「かあしゃんぼくよんだ? ぼくまちがえ?」


「間違えじゃないわ。ユーキちゃんお母さんよ。ユーキちゃんが頑張って、ディルに魔力流してくれたから、お母さんの怪我治って、お母さん元気になったのよ。ほらお顔上げて。お母さんユーキちゃんの目の前に居るわ。お母さんも可愛いユーキちゃんのお顔見たいし。ね。お顔上げましょう」


 僕そっとお顔上げました。そしたら周りがとっても明るくなって、でもすぐに明るいの終わって、僕の目の前にはお母さんが居ました。とってもにっこりのお母さんです。


「かあしゃん?」


「そうよ」


「かあしゃん!!」


 僕お母さんに抱きつきます。お母さん起きた! 僕お母さんに抱きついたけど、すぐにちょっとだけ離れて、お母さんのお体調べます。ほんとにお怪我治った? まだ治ってないところない? 一生懸命調べてたら、お母さんが僕の頭なでなでしてくれます。


「お母さん、ユーキちゃんとディルちゃんのおかげでお怪我治って元気になったわ。もう大丈夫よ。ほら」


 お母さんが腕ブンブン何回も回します。良かったぁ。お母さんとっても元気。

 それから僕周りをみました。僕達の周りもお部屋の中も、良く分かんないけど、風がびゅうびゅう吹いてました。この風なんだろう? 悪い人魚さんやジュードや、魔獣が魔法使ってるのかな?

 そう考えてたら、お母さんが僕にお話してきました。


「ユーキちゃん。お母さん元気になったから、もう魔力をディルちゃんに流さなくていいのよ」


「そうだぞ。もうオレ、魔力いっぱいだぞ。だからもう要らないぞ」


 ディルが僕の所に飛んできて、ディルも魔力要らないって言いました。そっか。もうお怪我治ったもんね。魔力さんにありがとう言って、流すの止めなくちゃ。だって魔力さんいっぱい魔力貸してくれたから、ディルがお母さん治せたんだもん。


「まりょくしゃん、ありがとでしゅ。またおねがいでしゅ!」


 だんだんと僕の中にあった魔力さんが無くなっていきます。そしたら周りでびゅうびゅう煩かった風も静かになりました。

 風がなくなって、お父さんが僕の所に来て、僕とお母さんのこと一緒に抱きしめます。それでねお父さんのお顔見たら、泣きそうなお顔してます。

 あれ? お母さん震えてる? 今度はお母さんのお顔見ます。そしたらお母さん泣いてたの。


「かあしゃん!? おけがなおってないでしゅか? いちゃい?」


 僕ビックリです。やっぱりまだお怪我治ってないって思って、ディルのこと呼びました。でもお母さん泣きながら大丈夫って。


「これは違うのよ。お怪我で痛くて泣いてるんじゃないの。お母さん嬉しくて泣いてるのよ」


 どうして嬉しいと泣くの? 悲しい時や寂しい時や痛い時に泣くんじゃないの? 僕ね嬉しいととっても笑うんだよ。そう言ったらね、お父さんがそうだなって言ったんだけど、お父さんのお目々ちょっと赤いです。お父さんもちょっとだけ泣いてたの。変なのぉ。


 お母さんが泣き止んで、お父さんが僕達から離れたら、今度はお兄ちゃん達が僕達のこと抱きしめました。その後はじぃじとばぁば。抱きしめてもらってる間に、ルトブルがエシェットの所に行ってくるって、お部屋から出て行っちゃいました。それからくろにゃんとピュイちゃんも一応ルトブルについて行くって、一緒に行っちゃいました。

 

 ルトブルお手々に白い大きな丸持ってたよ。僕が前にルトブルとエシェットに魔力流して、森が無くなっちゃって、キミルがお花いっぱい咲かせてくれた時のやつ。どうしたのかなアレ。誰かから魔力貰ったのかな?

 

 みんなに抱きしめてもらって、立ち上がったお母さんに抱っこしてもらいます。お母さんとっても元気でニコニコ、みんなもニコニコ。僕とっても嬉しい!!


 

 

 

 

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