第273話お母さん起きるもん。絶対に起きるもん!!

「良し…」


 僕がお母さんの方見てたらエシェットが良しって。それからルトブルとくろにゃんにいろいろお話します。それからグリフォンの赤ちゃんにも。お話しはすぐに終わって、これからエシェット達、悪い人魚さんとクラーケンとシーサーペント倒しに行くって言いました。


 グリフォンの赤ちゃんも一緒に行くの危なくない? 僕がそう思ってたら赤ちゃんが僕の頭の上に止まりました。


『ボクいると、みんなまほうつかえるの。だからボクもいくの。あんまりとおくだと、みんながまほうつかえるようにできないの。くろにゃんのあたまにのっかって、あぶないときはすぐににげるから、だいじょうぶなの』


 僕にそうお話してくれた赤ちゃん。エシェットが早く行くぞって。くろにゃんが黒い丸出します。みんなが行っちゃう前に僕応援です。


「エシェット、ルトブル、くろにゃん、ピュイちゃんがんばれでしゅう!!」


『ボク、ピュイちゃん?』


 あっ、ピュイちゃんって言っちゃった。ピュイピュイ鳴いてたから。だって赤ちゃんって呼ぶのなんか変だもん。


『ピュイちゃんかわいいの。ユーキあとでちゃんとおともだちなるの』


 魔力使うお友達。うん! エシェット達が悪い人魚さん達倒してくれたら、お友達になろうね。

 エシェット達が黒い丸の中に入って消えました。消える前に結界も張っていってくれたよ。


 僕はみんなにバイバイして、すぐにお母さんの方見ました。ずっとディルの綺麗な緑の光が見えます。まだお怪我治らないのかな。今までディルすぐにお怪我治してくれたのに。僕ドキドキです。ちゃんとお怪我治るよね。お母さんすぐ元気になるよね。


 急にディルの側にいたリュカが飛んできて、僕にすぐにディルに魔力流してって言いました。だからすぐにディルの所に行こうとしたんだけど、お父さんが離してくれません。それで困ったお顔してるの。お父さん早くお母さんの所行こう。どうしたの?


「ユーキ早く!!」


 リュカが叫びます。お父さんがちょっとお目々瞑ってから、すぐに早歩きでディルの所に行きました。

 さっきまで見えなかったお母さんが見えます。どこお怪我してるの? 寝てるお母さんのこと見たら、じぃじがお母さんのお胸の所をパッて、じぃじのマントで隠しました。どうしたの? 


 ディルがお母さんのお胸のお怪我治してるって。でも酷いお怪我だから僕の魔力がいるんだって。大変! すぐに魔力あげなくちゃ。

 僕は急いで魔力さんにお願いしますして、マシロに手伝ってもらって魔力を溜めます。マシロがいつものみたいにコップに入れないで、どんどん溜めてどんどんディルに流せって言いました。溢れて良いって。

 うん。それなら僕上手だよ。どんどん溢れさせちゃおう!!


 魔力はマシロが手伝ってくれたからすぐに溜まって、どんどんそれをディルに流します。ディルがポワッて強く光って、綺麗な緑色の光がもっとキラキラで、もっと緑色になりました。


「よし! どんどん治すぞ!!」


 どんどんどんどん、どんどんどんどん、ディルに魔力流して、たくさん魔力流したら僕ちょっと疲れちゃったの。ふらふらってして僕しゃがみます。


「ユーキ!」


 お父さんが座って、お膝に僕乗っけてくれました。


「主、少し休め。いきなりたくさん魔力を使ったから、体がビックリしてふらふらしたのだ」


「とうしゃん、かあしゃんまだなおらないでしゅか?」


「そうだな。今ディルが一生懸命治してくれてるから待ってような」


「うん…」


 どうしてお母さんのお怪我治らないの? お母さん早くお怪我治って、僕の事抱っこして? 


 僕たくさん待ってるのに、お母さんの怪我全然治りません。そしたら急に壁の所に黒い丸が出ました。くろにゃん達が帰って来たの。


「どうだった?」


 ってお父さんが聞いたら、クラーケンもシーサーペンとも倒して遠くに飛ばしたって。それから悪い人魚さん達も、倒したって言いました。


「しかしあのジュードとか言う人魚が何処かへ消えたのと、我が投げた土の魔法で固めたセオドリオがどこにも見つからん。が、これは回収したから、奴らは今までのような強い力は使えないだろう」


 ルトブルがあの黒いボール持ってました。


「おそらく海の中に身を潜めているはずだ。こちらが気になったので戻って来たが、後でもう1度…!! まだ残っていたか。もう1匹シーサーペントが現れた。すぐに倒して…」


 エシェットがお話してるその時、ディルがふらふらふらってお母さんのお胸の上に座りました。緑の光も薄くなってます。お怪我治ったのかな? 僕急いでお母さんに駆け寄ります。ちょっとふらっとしたけど大丈夫。


「かあしゃん、なおったでしゅか!」


 お母さんのお顔見ます。でもお母さん起きてません。


「かあしゃん?」


 ちょっとだけお母さんのお肩のところ触って揺らします。それでもお母さん起きません。ディルに聞いてみました。


「ディル、治ったでしゅか?」


「………」


「ディル?」


 ディル何にも言いませんでした。お兄ちゃん達見てじぃじ達見てマシロ達見て、最後にお父さん見ます。そしたらみんな悲しいお顔したまま何にもお話しないの。お父さんが僕のこと、もう1回抱っこします。


「ユーキ。ちょっと向こうへ行っていよう」


 お父さんがお母さんから離れようとしたから、僕お母さんのお手々握ったまま離しません。


「ユーキ、お母さんはもう目を覚まさないんだ。ディルがお怪我治してくれたんだけど、それでも治せないお怪我してて。お母さんもうユーキとお話しできないんだよ」


 お怪我治ってないの? じゃあじゃあ僕もっと魔力頑張って流すから、お母さんのお怪我早く治して!

 僕がディルに魔力流すからマシロに手伝ってってお願いしました。でもマシロお首ふります。何で? 早くしないとお怪我治らなくて、お母さん起きれないんだよ。お話しできないんだよ。


「ユーキ。もうユーキの魔力をディルにあげても、お母さん起きないんだ」


「おきるもん! かあしゃんしゅぐおきるもん!!」


 僕お父さんから下りて、お母さんのお手々を両方のお手々で握ります。かあしゃん起きて、僕ディルに魔力あげるから。僕もお母さんに魔力あげるから。だから早く起きて。


 でも全然魔力流れません。頑張ってるのに全然魔力が溜まらないの。お父さんが僕のこと無理やりお母さんから離そうとしました。僕絶対お手々離さないから。お母さん早く起きて!! いつの間にか涙がぽろぽろです。


「ユーキ」


「かあしゃん!!」


「ユーキ。お父さんと一緒に少しここから離れていよう。な?」


 どうして、どうしてお母さんから離れるの。僕離れないもん。魔力さんお願い! 僕に魔力ください! お願いします!! お願いします!! お母さんのお怪我治してください!!

 お父さんが僕のこと、無理やりお母さんから離しました。


「かあしゃん!! かあしゃん!!」


「ユーキ!」


「かあしゃん!!! うわあぁぁぁぁぁぁん!!」


 パアァァァァァンッ!! 何かが割れる感じがしました。風船が割れちゃうみたいな感じ。それからお部屋の中にもの凄い風が吹いて、僕のお体が光ったの。

 マシロが僕の隣で叫びました。


「まずい、魔力の暴走だ!! 早く止めさせなければ主の命が危ない!! ディルこの魔力を出来るだけ取り込め!! もしかしたらオリビアを助けられるかもしれん!!」


「分かった!」


「残りは我がなるべく受け取る! この魔力でシーサーペントを倒してこよう! 残りはルトブルお前が受け取れ! それからマシロとウイリアムなんとかユーキを落ち着かせろ!! お前達の役目だ!!」


 マシロやお父さんやお兄ちゃん、じぃじ達やリュカ達が僕に何かお話してます。でもねよく聞こえません。みんな何てお話してるの? 僕ね、お母さんのお怪我治さないといけないの、だからたくさん魔力ディルとお母さんにあげるんだよ。すぐにお母さん起きるから、みんなちょっと待っててね。


 僕はもっともっと魔力流します。そうするとね、もっともっとお父さん達の声が聞こえなくなりました。みんな僕が頑張ってるから、静かに待っててくれてるんだね。あっ、そういえばマシロ達に手伝って貰わなくても、魔力溜められました。魔力さんありがとう。僕のお願い聞いてくれて。


「まずいぞウイリアム、このままでは本当に主の命が危ない! 全員で主に呼びかけろ! こちらに意識を戻すんだ!!」


「マシロ! 我の方もソロソロ限界だ。そろそろシーサーペントの所へ行く! くろにゃんで飛んだ方が早いが、魔力の塊を持ったまま移動するのは危険だ。この家の屋根からシーサーペントへ投げて倒す! ルトブルあとは頼むぞ!!」


 お母さんまだ起きないかなぁ。お怪我まだ治らない? 僕もっと魔力あげられるよ。えへへ。早くお母さんに起きてもらって、抱っこしてもらって、いい子いい子なでなでしてもらおう。




 

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