第272話グリフォンの赤ちゃん

(***)

『あっ!! ユーキだ! おふねのうえにいる!』


 ボクね卵の中からでも、お外の事よく分かるんだよ。だからユーキが今お船の上に居るの分かるの。


「パキン、ピキキっ」


『もうすこし、もうすこし。あとちょっと。まっててユーキ。ボクがそのへんなくびわとくさり、とってあげるからね』


 ボク一生懸命殻を割ります。早く早く。ユーキがお船に居るうちに助けに行かなくちゃ。ボクねユーキに付いてるあの変な首輪と鎖外せるよ。なんでか分かんないけど、絶対に外せるって分かるんだ。

 それにねボクが殻から出られたら、エシェット達邪魔してる変な力も無くせるもん。これもよく分かんないけど、無くせるって分かるの。無くせたらエシェット達普通に魔法使えるようになるから、あんな魔獣なんてすぐに倒しちゃうでしょう。


「パキパキパキッ」


 あとちょっとなのに、なかなか殻が割れてくれません。もう1度力を入れ直して、今度こそ割らなくちゃ。

 

 その時ドカアァァァァンッ!! って大きな音がしてお家が揺れました。それからお家に悪い人達がどんどん入って来ます。

 あそこに居る女の人達危ないよ! 悪い人達が近づいてきてるよ。あっ! 見つかっちゃった! それでね悪い人達、見つけた女の人達のこと剣で刺そうとしたの。

 

 カキィンッ!! ユーキのお母さんが走って来て女の人守ります。でもお母さん女の人を守ったときに、自分の剣が壁の方に飛んじゃって…。


『あっ! あぶない!!』


「オリビア!!」


 そしたらね別の悪い人がユーキのお母さんのお胸に剣刺したんだよ。


 ダメ! ダメだよ! ユーキのお母さん死んじゃう!! 早くディル呼んで来なくちゃ。早くユーキの首輪と鎖外しに行かなきゃ。外れないと、ユーキもみんなも自由に動けないの。

 

「パキパキッ」


 早く早く。ん? あれ? でも悪い人達の力弱くなってる? 何でだろう。まっいっか…早く早く!

 

 あっ、お母さんの所にエシェット達来た。お家に来た悪い人達みんな倒せたみたい。良かった…。


「パキパキ、パリンッ!!」


『ピュピイィィィィィ!!』


 出れた!! まずエシェット達の所に行かなくちゃ。

 ボク、バッて飛ぼうとしたの。でもビシャって床に落ちちゃった…。もう1回! 羽を大きく広げて、それから大きく動かして! ばさっ!! 飛べた!!

 そのまま落ちないようにエシェットの所まで行って、エシェットの頭に乗りました。


『はじめまして!』


「お前は…そうか生まれたか」


 ユーキのお母さんを囲んでたみんながボクの方向きました。じぃじ達は凄く慌ててたから、ボクのこと見ても僕ボクが誰か分からなかったみたい。でも今説明してる場合じゃないもん。ユーキもユーキの大好きなお母さんも僕が助けなきゃ!


『エシェット、ボクがいれば、まほうつかえるよ。でもいまはボクがいなくても、少しつよいまほうつかえるみたい。なんでかわからないけど。きゅうにじゃまなちからがよわくなったの』


 エシェットがバッて顔上げてお外見ました。それでくろにゃんの方見て、いろいろ指示出したよ。


「くろにゃん! このグリフォンが居る限り、お前は自由に動ける。グリフォンを連れてあの船に乗っているユーキの元へ行け!」


 エシェットもユーキがあの船に居るの分かってたみたい。くろにゃんにユーキがいる場所ちゃんと教えて、まず僕達ユーキの所に行って、それから僕はユーキの首輪と鎖外して、その間にくろにゃんはお父さん達迎えに行くって。


 ユーキの首輪と鎖とったら、モリオンですぐにここに戻って来いって。魔法が使えるならルトブルは誰にも負けないから、周りに居る悪い奴の仲間なんかすぐに倒せるもんね。サササって倒してもらって、すぐに帰って来るよ。

 

 僕はくろにゃんの頭に乗り換えて、ユーキのお母さん見ます。お母さん全然動かない。それにじぃじがお名前呼んでも目を覚まさないの。待っててね。すぐにディル達連れてくるからね。死んじゃダメだよ!


 くろにゃんが黒い丸に入ります。一瞬でお外に出た僕達。目の前にユーキ達が居ました。くろにゃん完璧!!


(ユーキ視点)

 僕が心の中でもっと応援しようとした時でした。ドカアァァァァンッ!! って大きい音がして、音のした方見たら、じぃじのお家の方から煙がもモクモクしてました。とってものびっくりして、僕みんなお怪我してないか、ルトブル分からないかなって思って、ルトブルに聞こうと思ったの。


「ルトブル、みんなだいじょぶ?」


「………」


「ルトブル?」


 ルトブルのお顔見たら、お目々大きくしてじっと煙の方見てます。あれ? 僕セオドリオの方を見ます。セオドリオはクラーケンとシーサーペント見たまま、全然動いてません。なんか変? 街も海もとっても静かです。


 セオドリオが見てるクラーケンもシーサーペントも、今までとっても暴れてたのに、今は全然動いてないの。それにサメさん魔獣に乗って海に居る人達は、あちこち見ながら慌ててお船に戻って来ます。

 それ見たセオドリオが黒いボール見ました。


「魔力が…?! お前何をした!! (これでは散々力を使っているジュード様は、すぐに魔力を回復して戻って来れない。ここは私が)」


 セオドリオがお手々上げました。


「!!?」


 なんか驚いたお顔してます。


「何だ? 完全に魔法が使えない…」


 それからすぐにルトブルのこと、とっても怖いお顔で睨んできました。僕怖くてルトブルにしがみ付きます。その時でした。


 黒い丸が出て、中からくろにゃんとくろにゃんの頭に乗ってる、ちょっと大きい小鳥さん? が出てきました。


『ユーキ、ボクだよ。たまごからでてきたの! いまくびわはずしてあげるからね! ルトブルいまなら、ボクがいるからまほうつかえるよ!』


 たまご…たまご生まれたの! グリフォンの赤ちゃん! 

 グリフォンの赤ちゃんのお話し聞いて、僕を抱っこしたままルトブルが、セオドリオのことを土の魔法で埋めちゃって、カチカチにしてクラーケンの方に投げました。他の悪い人魚さん達も、どんどんクラーケンとシーサーペントの方に投げていきます。


 その間にグリフォンの赤ちゃんが、僕の前に飛んできました。いつの間にかくろにゃんは居なくなってて、お父さん達迎えに行ったって教えてくれたよ。


「ユーキいまからボクが、くびわはずしてあげるからね。そしたらすぐにエシェットたちのところにいこう! ユーキのおかあさんおけがしちゃったの!」


 お母さんがお怪我!! 早く行かなくちゃ! すぐに行こうと思ったんだけど、


「あのにんぎょが、ユーキにいじわるできないように、くびわはずしてからだよ』


 グリフォンの赤ちゃんがピュピィーッ!! って鳴いたら、僕の首に首輪と鎖が出てきました。それでね出てきてすぐに、パチパチ光始めたの。ルトブルが早く外せって言ってます。早く外さないと痛い痛いになっちゃうから。

 もう1回赤ちゃんがピュイィィィィィィッ!! って鳴きました。そしたら鎖も首輪もボロボロになって、床に落ちました。落ちてるときパチパチパチッ!! って凄く光って、もう少しで痛い痛いになるところだったって。


 ルトブルに抱っこしてもらって、ディル達みんなルトブルにくっつきます。モリオンが黒い丸を出して僕達が中に入ろうとした時でした。モヤモヤパチパチ、苦しそうなジュードが現れました。


「ぐっ、ゴホッ!! ま、て…!!」


「ふん。覚悟するんだな。こちらは全力でお前達を消す」


 そう言って黒い丸に入りました。


 黒い丸から出たら、目の前にマシロとエシェット、くろにゃんが居ました。僕みんなに抱きつきます。マシロがお顔すりすりしてくれました。お部屋の真ん中にお父さん達も居ます。

 そうだ! お母さんどこ? お怪我してるんでしょう。もうみんな魔法使えるからディルに治してもらえるよ。


 僕がお父さんの所に走って行こうとしたら、じぃじがお父さんのこと呼んで、お父さんが僕のこと見て、すぐに立ち上がって走って来て僕の事抱っこします。


「とうしゃん、かあしゃんは?」


「今お母さん、じぃじ達が居るところで、お怪我して寝てるんだ。だからユーキはお父さんとこっちで待ってよう。ディル!! オリビアの怪我を見てくれ!」


「? もちろんだぞ?」


 ディルがじぃじ達の方に飛んでいきます。それでねじぃじの所まで飛んでいったディル。ビックリしたお顔したあと、今度は怖いお顔になりました。どうしたの? とってもダメダメなお怪我なの。

 お父さんにお母さんの所に行くって言っても、ダメって言います。ディルの緑の綺麗な光は見えるけど、お母さん全然見えません。ディル、早くお怪我治して!

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