第270話魔力受け渡しと、それぞれの今
(ユーキ視点)
僕何回も魔力流すまねっこしました。
「何故魔力が流れない!!」
ジュードが大きな声出しました。僕ビクッてなって、すぐにルトブルのところに走って戻ります。それでルトブルに抱っこしてもらって、チラッとジュードの方見ました。ジュードはとっても怖いお顔して怒ってて、セオドリオはじぃ~って僕の事見てます。
「何故魔法が流れない! わざと流さないようにしているのか!」
「お前がユーキを怖がらせたからだ。こんなに小さい子供なのだぞ。もともと使えたり使えなかったりだ。それをお前が怖がらせた事で、完璧に今使えない状態なのだ」
ルトブルがお話ししてる時、リュカが僕に内緒のお話ししてくれます。ルトブルがお話してる時、僕は何にも話さないで静かにしててって。だから僕ジュード達見るのやめてルトブルにギュッて抱きついたまま、ルトブルのお洋服にお顔つけました。
ずっと喧嘩してるみたいなお話し合いしてるルトブルとジュード。なかなかお話し合い終わりません。ジュードはずっと僕に魔法使わせろってルトブルに言って、ルトブルは無理だって。僕絶対魔法あげないんだからね。だってエシェット達お怪我するのダメダメだもん。
「分かった。それではお前がそれに魔力を流せ」
「良いのですかジュード様」
「完全な復活を遂げたかったが仕方がない。今は少しでも強力な魔力が欲しいからな。なに、子供はもう私達が手に入れているのだ。陸を支配するうちに使わせれば良い。さっさと魔力をなが…ぐ、ゴホっ!」
「ジュード様!!」
振り向いたらジュードがお咳しながらしゃがんでて、セオドリオがジュードに駆け寄ってるところでした。僕がここに来る前のときみたいです。セオドリオがジュードの背中を少しだけ摩ります。
「大丈夫だ。少し咽せただけだ」
ジュードはすぐに立ったけど、ちょっと苦しそうなお顔してます。でも苦しそうなお顔したまま、ルトブルに早く魔力流せって怒りました。
ルトブルがみんなと集まってじっとしてろって言って、大きなボールの所に行きます。ルトブルがボールに触るととっても黒く光って、周りの小さなボールも黒く光りました。僕の時は虹色で綺麗だったのに。
「よし。今日はそれで良い。セオドリオ、部屋に連れて行け」
セオドリオがルトブルから首輪もらって、戻ってきたルトブルに抱っこしてもらって、僕達のお部屋に戻ります。それで僕達のことお部屋の入れたら、いつもみたいにお部屋から出るなとか、静かにしていろとか何にも言わないで、すぐに行っちゃいました。お部屋に戻って来てからは誰もお部屋に来なかったよ。
夜のご飯になるまで、僕達少しだけ遊びました。おもちゃないし、モリオンも魔法使えないから、モリオンが持ってるおもちゃとかぬいぐるみとかで遊べないでしょう。だからおうち帰ってから遊べるように、芋虫さんの練習しました。芋虫のお洋服着て動く練習だよ。あのお洋服僕大好き。でもあんまり早く動けないから、早く動けるように練習だよ。
夜のご飯食べておトイレに行って、僕寝る時間です。ルトブルにくっついて毛布にくるくるくるまってお休みなさい。ここには居ないけどお父さん達にもマシロ達にも、みんなにおやすみなさいして寝ました。
*********
「ジュード様、お加減はいかがですか?」
「ぐっ、流石に、いきなりこれだけの大きな魔力は悪かったようだ。なかなか魔力が制御できん。あの子供の力を後回しにして良かったようだ。お前にはこれを渡す。あちらに我が施した魔力阻害はそろそろ切れるだろう。私自身が行くよりは魔力阻害の力は劣るが、私が行くまでこれでもつはずだ。指揮はお前に任せる」
「では予定通り、ジュード様がお越しになるまでに街の半分まで破壊を。どうにか侵略まで出来れば良いのですが。あの得体の知れない者共がいますからね」
「ああ。だが私がこの魔力を制御して行けば、それも関係なくなるだろう。お前達を送ってやる。それくらいの制御はできるからな」
(ウイリアム視点)
「アンソニー、調子はどうだ?」
「もう大丈夫だよ」
「そうか。だがもし具合が悪くなったら、すぐに言いなさい」
「うん」
あの時、ユーキ達が消えてからすぐに私はアンソニーの元に向かった。くろにゃんやモリオンの力がない今、私があの人魚を追うことはできない。追う事ができないのだから今は、アンソニーの元へ向かわなければ。そう思いあの部屋に向かった。
アンソニーは私が見た時のまま、壁の所に倒れたままだった。そっとアンソニーを抱き上げ、私達が使っていた部屋に運ぶ。そういえばディルもユーキと一緒に行ってしまった。静かにしていて具合が良くなるならば良いが。その前にちゃんと目を覚ましてくれるか。ジョシュアは様子を見て来ると、部屋を出て行ってしまった。
それにしてもどうして。ユーキが魔力を貸し、ここの結界は完璧だと言っていたのに、なぜ奴は侵入できた?
「はぁ」
ため息をついていれば、すぐにジョシュアが部屋に帰ってきた。アルマンドとロレリナさんも部屋に一緒に入ってくる。ロレリナ無事だったのか。
「スージーちゃんとアーク君は無事ですか」
「ええ。今は別の者に任せてご自分のお部屋に。それよりも今はアンソニー様の治療を。私は特別な力を持っているのです。そんなに強い魔法ではないので、完璧にすることはできませんが。治癒の力を使えます」
そう言うとアンソニーの額に手を当てて、集中し始めた。まさか治癒の魔法が使える人物がいるとは。
しばらくするとアンソニーの体全体がポワッと光り出した。そしてその光が消えるとロレリナがニコッと笑い私達の方を見てきた。
「大丈夫です。怪我自体はそこまで酷いものではありません。壁に当たったと聞きましたが、その衝撃で気を失っているだけですので、もう少しすれば目を覚ますでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
ふう。これで1つの心配はなくなった。
そういえばアーク君達に怪我がなかったのかロレリナに聞けば、あの時石を赤くしたのは、ロレリナ達が逃げた方に、奴の仲間が何人か歩いて居たらしい。気づかれる事はなかったが、安全のためにと石を赤くしたのだと。しかしそれが逆に、ユーキを拐われる原因になってしまったと、謝られてしまった。そんな事はないと言い、アーク君達の元へ戻るように言う。
ロレリナが部屋を出て行き、少しだけ落ち着きを取り戻した私に、アルマンドがこれからの事について話しがあると言ってきた。ユーキ達を助けることについて話しがあると。
アルマンドによれば、ユーキ達はおそらくサンゴの森にある、アルマンドが収めるこの国よりも小さい国に居るのではないかと言う事だった。少し前にその国が奴らに侵略されたらしいのだが、調査しに行ったアルマンドの部下達の報告によれば、サンゴの森の周辺にはかなり強力な結界が張られており、全然近づけなかったらしい。
そこを奴らは拠点として動いているのではと言うことだった。
それを聞いてなんとか移動できないかと思ったが、人間の私が海の中を自由に移動できるわけもなく、そしてここに来たときのように移動したとしても、水の中で戦う術を知らない私には、どうする事も出来ない事だけがはっきりと分かった。
「私達がすぐにでも行っても良いのだが、奴は我々の知らない力を使っていた。何も分からず助けに行って、無事に助け出すことができるか、今の段階ではなんとも」
確かにアルマンドの言う通り、何も分からず助けに行き、奴の反撃にあえば、逆に最悪の事態になりかねない。
奴は完璧にユーキだけを狙っていた。ユーキの魔力を必要としていると言うことは、魔力を使える、ユーキを殺すことはしない。なんとかそう自分に言い聞かせることしか、今の私にはできないのが悔しい…。
それにもう1つ問題が。オリビア達の様子がまるで分からなくなってしまった。モリオンが居て奴が居ないときならば、向こうへ行き様子を知ることができるのだが…。今向こうはどうなっているのか。くろにゃんが来てくれれば、ユーキのことで動けないから今、あちらを手伝う事もできるのだが。
この前みたいに送ってもらって、約1日はかかってしまっても、ここはあちらに帰るべきか?
いろいろなことを考えすぎて頭が多少混乱している中、アンソニーは目を覚ました。
「父さん、ユーキは?」
「………」
「そっか…。父さんごめん。ユーキを守れなくて」
「何を言っている。お前のせいじゃない。奴の魔法も力も、私達が考えていた以上のものだった。ただそれだけだ。安心しろ。必ず私がユーキ達をなんとか救い出す」
とは言ったものの、どうしたものか。
アルマンドに1度落ち着いて、休んでから考えるように言われ、食事を用意してもらった。アルマンドも休憩をし頭をスッキリさせてから、これからの事をもう1度考えると。その方が良さそうだ。今のままではいい考えも浮かばないだろう。
夜もだいぶ過ぎていたらしく、仮眠を取ればすぐに朝だと呼びに来たアルマンド。朝からまた話し合いを続ける。彼のこの国に残って居た部下も集まり続けた話し合いは、とても長い時間続けられた。
そして結局、私はもう少し明日の昼まで待って、くろにゃんが来ない場合は、アルマンドが陸へと送ってくれることとなり、エシェットに何かいい方法がないか確かめに行くことになった。
しかしこの後、陸に当事者達全員が集まるとは、この時の私は思いもしていなかった。
*********
「オリビア!!」
ああ、やっぱり、あの人を向こうに残してきて正解だったわ。くろにゃんも上手く力が使えないって、移動ができないみたいだし。
アンソニーはユーキちゃんの面倒を良く見ているんでしょうね。ジョシュアは相変わらず運動ばかりかしら。ユーキちゃんはいつもの可愛らしい顔をして遊んでいるかしら。泣いて居ないと良いのだけれど…。
ごめんなさいウイリアム。私はもうあなたの側には居られないみたい。ユーキちゃん達のことよろしくね。私の分までみんなを愛で包んであげて。愛しているわ。私の大切な人。
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