第269話暗いくらいお城

「歩け」


 ルトブルが僕のこと抱っこしたまま、悪い人魚さんよりも前を歩いて、お城の中に入っていきます。僕ねルトブルに抱っこしてもらって、悪い人魚さんに叩かれなくなったから、少しだけ怖くなくなったよ。

 それでお城の中に入ってすぐ、今度は止まれって言います。歩けって言ったり、止まれって言ったりどっちなの? 

 

 お城の中はアルマンドさんのお城よりも少し暗いです。アルマンドさんのお城はキラキラ白い光がいっぱい付いてけど、このお城の光は、黒い石が光ってるから暗いの。

 あと置いてある物も黒とか茶色とかで、白とか黄色とかないんだよ。それに壊れてる物ばっかりです。僕がボルフィスで貰った壊れちゃったナベみたいなのとか、石? でできてる人魚さんのお人形のお手々が取れちゃってたり。よく見たら、壁とか床もいろんな所壊れちゃってます。


 キョロキョロいろんな所見てたら、階段から誰か下りてきました。


「ジュード様、お帰りなさいませ。言われていた通り、全て引き上げてきました」


「どうだ様子は」


「予定通りです。最初の攻撃としては完璧でしょう」


「そうか。皆に十分な休憩を。それからこの者達を部屋へ連れて行け。それが終わったら私の部屋へ」


「はい」


「良いか。変なことは考えるなよ。その子供と私は繋がっているのだから。何かあればその子供が消えることになるぞ」


 悪い人魚さんの名前ジュードでした。ジュードは僕達のこと睨んだあと、1人で階段を上っていっちゃいました。


「私の言う通りに歩け」


 ジュードみたいにあとから来た男の人が、僕達に歩けって言ってきました。階段を上って、すぐ右に曲がります。廊下の真ん中くらいまで進んで止まりました。

 お部屋のドアを開けたら、小さいお椅子と机と、それから小さなベッドが1つおいてあります。お部屋の光も暗くて、夜のちょっと前みたいです。

 中に入って、僕達はお部屋の奥の壁の所に立ちました。男の人がベッドを見て、まぁ良いだろうって。


「いいか。この部屋はジュード様が特別な結界を張っている。逃げようとしても私達がすぐに気づけるようになっているからな。もしそういう気配が少しでも見られたら、その子供がどうなっても知らないぞ」


 それだけ言って、さっさとお部屋から出て行っちゃって、ドアが閉まると大きなガチャって音が聞こえました。鍵かけた音だって。


 男の人が出て行ってすぐ、ルトブルは僕のことベッドに下ろして、僕はベッドの上から下りちゃダメって言われました。それからすぐにルトブルはお部屋の中を調べます。ディル達も天井とかベッドの下とか調べてくれてます。

 

 お部屋調べるのが終わって、ルトブルが僕の隣に座りました。ディル達も僕の周りに座ります。それでルトブルが僕にお約束があるって言いました。

 

 このお部屋には結界が張ってあって、無理やりお部屋から出ようとしたら、もしかしたら痛い痛いことになるかもしれないんだって。だから絶対にあの悪い人魚さん達や、ルトブルがお部屋から出るって言ったときだけお部屋から出ること。もしルトブルだけお外に出ちゃっても、みんなでこのお部屋から絶対出ちゃダメダメです。


「約束だぞ」


「はいでしゅ!」


「よし次の約束だ」


 あのねジュードは僕の魔力が欲しいんだって。アルマンドさんの所で僕魔力あげたでしょう。それとおんなじ事するかもしれないの。でも僕がジュードに魔力あげちゃうと、エシェット達が頑張って戦ってるのに、もっと強い悪い人魚さん達や魔獣がエシェット達の所に行っちゃって、エシェット達お怪我しちゃうかもしれないんだって。

 

 だからもしジュードが僕に魔力を欲しいって言っても、いつもみたいに魔力さんにお願いして、魔力をあげちゃダメダメです。


「もしあの男に魔力が欲しいと言われたら、お願いしますって言わずに、そのまま魔力を流す真似をするんだ。やってみよう」


 ルトブルがお椅子を僕の所に持ってきて、そのお椅子に魔力を流す真似しろって言いました。僕いつもみたいにお手々出して、魔力流す真似します。


「ふぬぬぬぬ!」


「そうだ。それで良い。絶対に魔力を流してはダメだ。良いな」


「ぼく、ながしゃない!」


「よし!」


 ルトブルが僕の頭なでなでしてくれます。


 あとね最後にもう1個お約束ありました。絶対にみんなで突撃はダメダメだって。突撃してジュードが怒って、僕達のことさっきみたいに叩くかもしれないから。


「我はそれが1番心配だ。絶対に突撃はなしだぞ」


 僕叩かれるのやだもん。みんなも叩かれるのダメダメ。絶対に突撃しないよ。


 お約束は全部で3つ。1人でお部屋から出ない。魔力はあげない真似するだけ。突撃はしない。うん。全部覚えたよ!


 ジュードがいつ来るか分かんないから、僕達ルトブルにくっついたままです。

 1度このお部屋に連れてきた男の人がお部屋に来て、ご飯置いて行きました。あとおトイレとか行くときも男の人ついてきます。廊下で会った別の男の人がセオドリオ様って言ってたから、男の人の名前セオドリオって分かったよ。

 それからまたちょっとして、


「夕飯だ。明日お前達には、いろいろとやってもらう事がある。いいか、面倒事は起こすな。それから2人ドアの前に見張りが居る。トイレに行く時は声をかけろ」


 それだけ言って、セオドリオはまたすぐにお部屋から出て行っちゃいました。夜のご飯果物が2つです。


「僕が魔法使えたら、たくさん木の実出してあげるのに」


 僕、大丈夫だよ。お家に帰ったら、キミルが出してくれた美味しい木の実ちょうだいね。あと、みんなでお菓子いっぱい食べようね。みんなでどの木の実が食べたいかとか、お菓子は可愛い魔獣クッキーが食べたいとか、楽しいお話ししながら果物食べました。ルトブルはね、大きなお魚さんが食べたいんだって。そうだ! 僕がまたお魚さん釣って、ルトブルに食べさせてあげよう!

 

 僕果物食べて、ちょっと眠くなっちゃいました。ジュードやセオドリオが来る前に寝ろってルトブルが。だからルトブルに抱っこしてもらってお目々つぶりました。


「ユーキ寝た? あ~あ、僕がちゃんと魔法使えたら、すぐにこんな所からみんなで逃げるのに」


「モリオンそれはダメだ。ジュードがアルマンドよりも強力な『従属の鎖』をユーキにつけた。逃げる事はできん」


「あっ…でもじゃあどうするの?」


「今考えている。あやつらの狙いはユーキの魔力。ユーキの魔力が無くならない限り、殺さんだろう。ユーキ魔力を流す真似ばかりしていれば、奴らも考えを変えるだろうが、すぐに動くとは考えにくい。その間に我は何とか逃げる方法を考える。それに我には他にも1つ考えがある」


「?」


 僕、たくさん寝ちゃったみたい。でも、ジュードもセオドリオも来ませんでした。朝のご飯を持ってきたのは女の人で、ご飯置いてやっぱりすぐにお部屋から出て行っちゃいます。

 このままジュードもセオドリオも来ないと良いなぁ。それでルトブルとみんなでマシロやお父さん達の所に帰るの。


 夜ご飯食べたらジュードとセオドリオが僕達のこと迎えに来ました。これから別のお部屋に行って、僕の魔力流すんだって。お部屋から出る前に、ルトブルが小さな声で僕に真似だぞって。僕ちゃんと覚えてるよ。魔力は流さないで、まねっこするんだよね。


 ルトブルに抱っこしてもらって、廊下に出てジュードが1番で次が僕達、1番後ろをセオドリオが歩きます。歩いて行くとどんどん、どんどん暗くなって行って、僕ちょっと怖くてルトブルのお洋服ギュって掴みました。お城の中もっと明るくすればいいのに。全部暗いんだもん。


 着いたのは大きなドアの前でした。セオドリオがドアを開けてみんなで中に入ります。中にはこの前のアルマンドさんの所みたいに、真ん中に大きな丸いボールと周りに小さなボールが置いてありました。


 セオドリオが近づいてきて、ルトブルに変な首輪つけました。


「これで一時的に魔力阻害は受けません。もちろんその子供もです。ですがジュード様が『従属の鎖』をつけている事を忘れないように」


「分かっている」


 ジュードが僕に大きなボールの所に行けって。僕のことルトブルから引っ張って下ろしたの。それでドンッて押されました。僕転びそうになります。僕の後ろでみんながジュードのこと怒ってくれたけど、ルトブルが静かにしろって。大丈夫だよ。僕まねっこして、すぐにみんなの所に戻るからね。ルトブルのお約束。


 大きなボールに近づいて、今日はまねっこだから魔力さんに挨拶はダメダメ。ボールにお手々近づけて、魔力流すまねっこします。


「ふぬぬぬぬ!」

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