第266話始まる人魚達の攻撃

(エシェット視点)


「!! 来たか。くろにゃんルトブル達に伝えろ。奴らが来たと。ルトブルはそのままユーキの側に。モリオンには危なくなった場合、無理やりにでもユーキ達を家に連れ帰るように。アルマンドが抵抗してもだ。ユーキは嫌がるだろうがな。それから、もし余裕があるのならば、アルマンドの方から、戦える人魚や魔獣達を連れてこい」


「分かった」


 この感覚。この前のクラーケン以外にもいろいろ連れてきたか? 


「マシロ、お前はここが危なくなったら、すぐにユーキの所へ。ユーキが1番安心するのは我々の中ではお前だ」


「お前はそれでいいのか?」


「当たり前だろう。くろにゃん行け」


 くろにゃんが行こうとするのをオリビアが止めた。時間がないというのに。


「待ってくろにゃん! あの人にこっちには私が残ると伝えて。あの人にはユーキちゃん達の側にいて欲しいの」


「伝えるのは良いが、お前も一緒の方が良いんじゃないのか」


「ユーキちゃんにもアンソニーやジョシュアにも、何かあってどちらかが居なくなった時に、必要な人はあの人よ。私じゃない」


「………」


 オリビアがニッコリとくろにゃんに笑いかける。


「そんな顔しなくても、私にそんな気は全然ないわ。でも、万が一には備えないとね。大丈夫。私は居なくなったりしないから」


「…分かった」


 くろにゃんが消える。さて、我は結界をもう1度強力なものに張り直すか。あとの戦いは、この間のように魔力の阻害を受けながら、どれだけ戦えるかだが。ルトブルも居ないからな。人魚達の相手はマシロやくろにゃん。あとはくろにゃんに頼んで連れてきてもらう人魚達に任せるとして。

 元の姿に戻って戦っても良いが、もしもの時のことを考えて、いつでもマシロやオリビア、ユーキ達の家族を連れて逃げられるように、翼だけは怪我をしないようにしなければ。


 あと忘れてはいけないのはグリフォンの卵だな。くろにゃんが戻ってきたらしまってもらうか。それかアシェルがどうにかするか? まぁ、どっちでも良いか。どちらにしろ卵が安全に守れるならば。


 我は外に出ると今までで1番丈夫な結界を何枚も張った。海の方を眺めれば、遠くの方から大きな波の塊がいくつも、街の方へと向かってきているのが見える。全部で5か。1番強いのは真ん中に居る魔獣だな。

 クラーケンがこの前のが2匹に新しいのが1匹。そして真ん中とその隣に居るのは…シーサーペントか。それもかなりの力を持っている。

 

 5匹の魔獣を確認している時だった。我の張った結界が、ぐにゃりと緩んだと思うと、1番外側の結界が崩れそうになった。もう1度魔力を入れ直し結界を張り直す。やはり魔力阻害の影響が出始めた。

 結界を張り直しながらの戦いはどうなるか我にも分からない。なんとかこの街を、ユーキが大好きな街や、人々を傷つけさせることなく、奴らを倒せれば良いのだが。


   *********


"ピシッ!!“


『あぶない…ぼくのおともだち。いちゅもぼくに、いっぱいおはなちちてくれる、ぼくのおともだち。まってて、ぼくもうしゅぐ…」


(ユーキ視点)

 今日は朝からお兄ちゃん達と一緒に遊んでます。そしたらくろにゃんが来てくれて、僕遊びに来てくれたと思って、くろにゃんに抱きつきました。でも、くろにゃんお兄ちゃん達の所で静かにしてろって、すぐにお父さんとお話始めちゃったの。それになんか怖いお顔してます。どうしたのかな?


「にいしゃん。くろにゃんどちたでしゅか?」


「う~ん。何だろうね。ジョシュア、ユーキと一緒に待ってて。僕も話聞いてくるから」


 アンソニーお兄ちゃんもお父さん達の所に行っちゃいました。それでお父さん達みんな、お部屋から出て行っちゃったの。アルマンドさんの所にお話しに行くんだって。悪い人魚さん達が来ちゃったのかな?


 お父さん達がお部屋から出て行って少しして、僕バンッ!! って音が聞こえた気がしました。お兄ちゃんやディル達に音した? って聞いたけど、みんな聞こえないって。僕すぐにお絵かきのところに戻ります。でも…。今度はドンッ!! って音が聞こえた気がしました。


 そうしたらルトブルがバンッ!! 勢いよくお部屋のドア開けて入ってきました。


「ユーキ。別の部屋に移動するぞ。みんなもだ」


 お父さんが僕のこと抱っこして歩き始めます。お兄ちゃん達が僕のお絵かきの道具とかおもちゃとか持ってきてくれて、この前ご飯食べたお部屋に行きました。お部屋の中は誰も居ません。これからスージーちゃん達が来るみたいです。


「いいかユーキ。お父さんやルトブル、お兄ちゃん達がこの部屋から出ても良いって言うまで、この部屋から出るんじゃないぞ」


「とうしゃん。わるいにんぎょしゃんきまちたか?」


「ああそうだ」


 僕はお父さんに抱きつきます。悪い人魚さん来ちゃった…。ルトブルがね、この前僕が魔力あげたから結界はとっても強いから、悪い人魚さん達、街には入って来ないって。でも周りにいる悪い人魚さん達やっつけないと、みんなお外に出られないから、ルトブル達これからみんなで戦いに行くって言いました。僕とっても心配です。


「ユーキ、我が強いだろう。心配するな。それにもし怪我してもディルがいる。だから大丈夫だ。ユーキはこの部屋で我らをいつものように応援してくれ」


 応援…。うん! 僕いっぱい応援する。僕達みんなでルトブルに頑張れです。


 ルトブルのこと応援してたら、スージーちゃんとアーク君がアイリーンさんと一緒に、お部屋に入って来ました。スージーちゃん達もおもちゃ持ってきてます。


「凄い応援ね。ユーキちゃんの応援があればきっと大丈夫ね。そんなユーキちゃんに私からもお願い良いかしら」


「?」


「私もあなたのお母さんと一緒で、みんなと戦いに行くの。その間アークとスージーと一緒に遊んであげてくれる? 私が居ないとアーク泣いちゃうかもしれないの。その時にユーキちゃんが遊んでくれると、アーク喜んで泣かないわ。アークはユーキちゃんと遊ぶの大好きだから」


「はいでしゅ!」


 僕とっても忙しいです。応援して、アーク君と遊んで、それからまた応援して。


 シーラお姉ちゃん達がお部屋にルトブル迎えに来ました。シーラお姉ちゃん達も戦うの。だからお姉ちゃん達も行っちゃう前に、僕達みんなで応援です。アーク君とスージーちゃんもマネして応援。シーラお姉ちゃん達がとってもニコニコです。


 今度はアルマンドさんがお部屋に入ってきました。


「ルトブル様そろそろ」


「分かっている。ウイリアム一応皆に結界を張っておく。アルマンドがここにいる限り、魔力阻害は受けないからな」


「ああ頼む」


 ルトブル達がお部屋から出ていきます。


「がんばれでしゅう!!」


 お父さんに聞いたら、じぃじの街にも悪い人魚さんが来たんだって。だから最初は遊ばないで、マシロ達やお母さん達のことも応援です。くろにゃんがお母さん達の所に戻るって言ったから、お怪我したらすぐにディルのこと呼びに来てって言いました。頷いて僕のお顔にすりすりしてくろにゃん行っちゃいました。


 僕なんかドキドキです。もっとたくさん応援しなくちゃ。

 また応援始めようとしたら、ズオォォォォッてお部屋が揺れました。僕もスージーちゃん達もよろよろです。お父さん達が慌てて僕達のこと押さえてくれます。ボールとかいろんな所に転がって行っちゃいました。

 やっとお部屋が揺れなくなったら、すぐにまたズオォォォォッて揺れました。僕はお父さんがスージーちゃん達はお兄ちゃん達が抱っこしてくれます。ディル達はみんなの肩の上とか頭の上に乗りました。


「ふえ…」


 アーク君が泣きそうになっちゃって、僕アーク君の頭なでなでです。やっとお部屋が揺れなくなったからお約束。僕アーク君と遊びます。アーク君泣きそうだったけど遊んでたらすぐにニコニコになりました。


「立派なお兄ちゃんだね」


 アンソニーお兄ちゃんが僕の頭なでなでしてくれます。さっきお部屋が揺れたのなんだったのかな? この前のクラーケンが攻撃してきたのかな? もうちょっと遊んだら、また応援しないとです。

 

「………」


 あれ? モリオンどうしたのかな? 壁の方向いて睨んでます。


「モリオンどちたでしゅか?」


「う〜ん。なんか変な感じ。ほんのちょっとだけルトブルの所に行ってくるね」


 モリオンがそう言って黒い丸の中に消えちゃいました。でもモリオンが言った通りすぐに帰って来てくれました。


「よく分かんないけど、変な感じがするって伝えてきたよ。危ないと思ったことは、ちゃんと伝えないとね」


 それからはお部屋もグラグラしないし、大きな音も聞こえませんでした。きっとルトブル達が頑張って、悪い人魚さん達倒してくれてるんだね。


「みんながんばれでしゅう!!」


   *********


「ぐっ…」


「ジュード様!? 大丈夫ですか! アレにはまだ慣れておられないのです。あまり使われては」


「大丈夫だ問題ない。それよりもそろそろ私は動く。私が戻るまでの指示はお前に任せるぞ」


「はい! お任せを!」


 待っていろ。すぐにお前の所まで行ってやる。この新しい力を使って。

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