第264話不穏な影再び
(ルトブル視点)
ユーキ達を城に残し、アルマンドと他の人魚数名と、気配の感じた辺りを調べる。しかし岩の所と周辺を調べたが、先程の気配は完璧にきえていた。あの気配は…。
「ルトブル様、俺は今全く気配を感じ無いです。ですが確かに先程の気配はこの辺りでした」
「我もそうだ。が、あの時も一瞬だったからな。他も見に行くぞ」
「はい」
岩の所から1周。ぐるっとアルマンドの国を周る感じで、気配がないか確認して行く。なかなか大きな国のため、1周するのにかなり時間がかかってしまった。が、それでも先程の気配を見つけることは無かった。
元の岩の場所まで戻って来ると、アルマンドは他の人魚達に、もう少し遠くまで調べて来るように指示を出し、我々は城に帰ることになった。何かあるといけないと思い、我は人魚達に結界を張ってやった。
「ありがとうございます。結界を張っていただいて。本来なら俺が一緒に行って、守らなければいけないのに」
「まったくだ。お前がユーキに余計な魔法をかけたせいで。我はまだ許してはいないぞ。それに他の奴も。この面倒事が終わったら、覚えておくが良い」
「分かっています。俺はそれだけのことをしました」
城に帰りながら、先程の気配について考える。あの気配。なかなかの魔力を持っている何かだった。クラーケンと同等、いやそれ以上か。この海のことは我は知らないからな。アルマンドにこのように強い魔力を持つ生き物に覚えがあるかと聞けば、アルマンドも初めてだという。
だいたいクラーケンも何十年ぶりに見たと。最後に見たとき、他の町の人魚と手を組み、2体のクラーケンを倒して以来、それ以上の海の魔獣は見ていないらしい。
「ルトブル様も、この間のクラーケンの出現の仕方はおかしいと思いませんか。突然あの場所に現れた。なんの前触れもなく」
「そうだな。確かにあれは突然だった。だが、どうやったか知らないが、クラーケンを連れてきたのは「海の死神」なのは間違いがない。突然現れ消える。もしかしたら奴らの方にも、くろにゃんやモリオンのような者が居るのかもしれない」
だがくろにゃん達のように、確実に思った場所に出現させられるわけではないらしい。もしそうであれば、すでに結界の中に侵入しているだろう。それがされていないとなると、くろにゃん達よりも力の弱い魔獣か。それでもあれだけの大きく力のある魔獣を運べるのだから、少しは力があるのか…。今回の気配の事を、エシェットに伝えなければ。
はぁ、まったく面倒なことだ。我はユーキとゆっくり過ごせればそれで良いのだが。何故こうも面倒が起きる。
「魔力阻害の問題もある。あれも奴らの仕業だろうからな。あれもどうにかしなければ」
ユーキのおかげでアルマンドの国が襲われても、すぐに落とされる心配はほぼなくなった。問題なのはやはり陸の方だ。魔力阻害をされたままでは、エシェットも我もマシロも、いつものように戦う事ができず、ササッと相手を倒す事ができない。
そこでアルマンドの力が必要になるのだが。アルマンドは魔力阻害を打ち消す力を持っている。これは生まれた時から備わっていた力らしい。アルマンドが我々の側にいれば我々も魔力阻害を受けずに戦える。
安全を考えて、ユーキは海の中にいた方が良いのだが、アルマンドを陸に連れて行けば、ユーキも連れていかなければならない。あの従属の鎖が邪魔だ。あと最低でも5日、従属の鎖を外すことは出来ない。奴らが戦いを仕掛けて来るのは5日後以降なら…。その話もエシェット達としなければならない。
城に戻りユーキ達の所に戻れば、ご飯を食べ終わり、アイリーンの子供達と遊んでいたユーキが、我の姿を見た途端駆け寄ってきた。そして怪我をしてはいないかと、とっても心配そうな顔をして、我の体を調べてきた。怪我がない事が分かると、ほっとした顔をして、そのあとニコニコ顔になり遊びに戻って行った。
本当にユーキは優しい。そして可愛い。必ずユーキの大切だと思っている物は守らなければ。
エシェット達と話をするため、モリオンに連れて行ってもらう。するとウイリアムも行くと言い、オリビアとマシロをこちらに来させるらしい。
その話をしている時だった。遊んでいるユーキが誰に聞こえるともなく、大きなしっぽの悪い魔獣さんが居なくて良かった、と言ったのだ。
大きなしっぽ? 何か見たのか? 我がそれを聞くためにユーキを呼べば、ニコニコしたままこちらに戻ってきた。
話を聞き終え、すぐにエシェット達の所へ行った。気配とユーキの見たかも知れない魔獣について話せば、
「ふん。いざとなればあの人魚とユーキ達を家に帰すまでの事。ユーキは帰らないと言うだろうが、最悪の場合はそうしよう。人魚の国のことまでは我は知らん。もともとユーキのことについては我は許した覚えはない。ユーキ達を逃して、人魚の国が無くなろうがどうでもよい」
そう言うと思っていた。マシロも当たり前だと言い、くろにゃんにユーキの所へ連れて行けと、サッサと行ってしまった。話が終わってないというのに。
今はここに居ないディアンジェロなど、可愛い孫にしたことは命を持って償わせてやると、暴れて大変だったと聞いている。確かに家の中を見てみれば、所々破壊されているところが…。
アルマンドは無事に奴らを倒す事ができても、ユーキの家族にやられるかもしれないな。まぁ、自業自得だから仕方がない。
が、アルマンドを知っている我からしたら、それはそれでどうなんだと思うところも少しある。
それにしても今回の「海の死神」の攻撃の仕方は、前回の時とは全くちがう。今回のように魔獣を急に出したり消したりせず、初めから全勢力を持って攻めてきていたのだが。そういう力を持った奴が生まれたか、それとも他から力を借りたか。そして力を借りた者に指示されて、こういう攻撃をしているのか。
(ユーキ視点)
ルトブルお怪我しなくて良かったです。僕ニコニコしながらスージーちゃん達の所に戻りました。
やっぱり僕が間違えちゃったんだね。岩の所に大きなお魚さんのしっぽが見えたと思ったんだけど間違い。だってルトブル達探しに行っても居なかったんでしょう? 良かったぁ。
「おおきなしっぽのまじゅうしゃん、いなくてよかったでしゅね」
僕ねスージーちゃん達にそう言いました。そしたらルトブルが僕のこと呼んで、僕すぐにルトブルの所に戻りました。
「なんでしゅか?」
「ユーキ。大きいしっぽの魚をどこで見たのだ」
うゆ? だって僕の間違えでしょう? よく分かんないけど、僕ルトブルに間違えのことお話します。僕がお話したら、ルトブルねいろんなこと聞いてきました。色とかどのくらい大きかったとか。ん~。あんまり覚えてません。でもギザギザが付いてたかな? う~ん。
「そうかギザギザが付いていたか。ありがとうユーキ」
僕はうんうん唸ってたら、ルトブルがニッコリ笑ってありがとうって言ってくれました。それからすぐ、ルトブルとお父さんがじぃじに所に行っちゃって、でもまたまたすぐにマシロとお母さんが来てくれたよ。
スージーちゃんとアーク君と3人でマシロに乗っかって遊びます。1番小さいアーク君が1番前に座って、次が僕で最後がスージーちゃんです。僕達だけだと落ちちゃうから、お兄ちゃん達が支えてくれます。
アーク君がマシロのお耳持って出発!! って言ってマシロが歩き始めました。それから右のお耳上げるとマシロが右に曲がって。左のお耳上げると左に曲がるの。面白い…。今度は僕もやってみよう。
たくさんマシロと遊んで、次はくろにゃん。くろにゃんにもみんなで乗って遊びました。くろにゃんと遊んでたら、お部屋の端っこの方でマシロがぐたぁ~って寝てました。お顔も全部床にぐたぁ~です。
「はぁ~」
「マシロお疲れ様」
「何だあのパワーは」
「あら、子供ってそういうものよ。案外敵よりも厄介かもしれないわね。あの様子じゃくろにゃんも貴方と同じになりそうね。ふふ」
「笑い事ではないぞ。主は何やらニヤニヤしていたからな。絶対に余計な事を思いついたにちがいない」
僕達がくろにゃんから下りたら、くろにゃんがマシロの方にシュタタッて、走って行っちゃいました。みんなでくろにゃん追いかけます。
「マシロ! 助けてくれ!」
「我は知らん!」
マシロとくろにゃんが一緒に走り始めました。
「きゃあぁぁぁ! マシロ、くろにゃんまってでしゅう!」
「キャッキャッキャッ!!」
「待ってぇ〜!!」
みんなで追いかけてたら、ルトブルとお父さんが戻ってきて、マシロ達戻る時間だって。残念。マシロ達捕まえられなかったよ。マシロ達にバイバイします。よし、明日も遊びに来てもらって、追いかけっこしようっと。楽しみ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます