第215話偽物ブタ獣人の嫌な笑み

(オリバー視点)


「ここまでは順調ですね。これならば明日にはボルフィスに着くでしょう。」


「あいつらも随分と大人しく馬車に乗ってきたな。よっぽどエシェットの仕置きが効いたらしい。」


「それならばいいんですがね。いささか静かすぎる気がするします。これからの見張りも心してかからねばいけませんよ。」


 リアムの言葉に何故か私は嫌な感覚を覚えた。確かにゴルスタインを捕まえに行き、連行した時はエシェットの張り手で大人しくしていたが、カージナルにくろにゃんの魔法で到着した途端すぐに喚き散らした連中だ。

 再びエシェットがゴルスタインを気絶したのを見て大人しくなったのは分かるが…。意識が戻ったゴルスタインが少しの文句も言わずに、大人しく馬車に乗っているのが気にかかる。


「最後の見張りは俺だな。よしじゃあ俺は後ろに下がるぜ。」


 マシューが後ろの馬車に乗って運ばれているゴルスタイン達を監視しに行った。私の思い過ごしならば良いが…。


「ボソボソ。許さんぞ。ボソボソ。許すものか。私にこんな屈辱的な真似を。あのガキも私を豚などと…。ボソボソ…。」


「ゴルスタインはどうしたのだ。気付いてからずっとボソボソと…。」


「気でもふれたのではないか。どうせ私達はこれから死刑になるのだ。何故こんなことに…!!」


(ユーキ視点)

「本当に可愛いのう。うちの孫にも着せたいのう。」


 王様じいじが僕のことお膝に乗っけてくれてお顔すりすりしてます。僕もみんなも可愛いって言われてニコニコです。あのね王様がじいじって呼んで良いよって。


「えとえと、こんどねこさんもおそろいでしゅよ。クロエしゃんおねがいちたでしゅ。」


「そうかそうか。ではネコの洋服ができたときにはじいじにまた見せてくれ。約束じゃぞ。」


「おやくしょくぅ~。」


 王様じいじがもっと僕のお顔すりすりです。そしたらじいじがサッて王様じいじから僕のこと持ち上げて、じいじのお膝に僕のこと乗っけました。王様じいじブスッとしたお顔してます。


「ふんっ。それでじゃがオルガー。今回はいつまで居られる予定だ?」


「そうじゃなぁ…。」


「もう少しするとうちの孫達が帰ってくるのだが。」


 あのねサルバドールさんの家族が、もうすぐお城に帰ってくるんだって。僕お友達になれるかもって王様じいじが。リク君と同じ5歳の女の子と、8歳の男の子です。お名前がステファニーお姉ちゃんとヤックスお兄ちゃん。

 お父さん達のお仕事が終わってお仕置き終わったら、その頃にお城に帰ってくるみたいです。


 新しいお友達! 僕お友達になりたい! お父さんにお願いしたら、たくさん待たないならお城にお泊りして待ってても良いって。やったぁ! 

 じゃあじゃあ、お友達になるのにプレゼントいるよね。何が良いかな。後でみんなで相談しよう。


 王様じいじとお話した次の日、お父さん達はお仕事だから僕お城の玄関ホールでお兄ちゃん達と遊んでました。そしたらドアが開いてガヤガヤ、ガチャガチャ、たくさん人が入ってきたんだ。ボルフィスの騎士さん達でしょう、それからあのお洋服の騎士さん、お父さん達の騎士さんだね。何でここに居るのかな?


 アンソニーお兄ちゃんが騎士さんにお話聞きに行ってすぐ、僕に邪魔にならないように階段の所に居てって。だからジョシュアお兄ちゃんと階段の所で騎士さん達見てました。アンソニーお兄ちゃんはお父さん呼びに行ったよ。

 どんどん入ってくる騎士さん。あっ!


「オリバーしゃんでしゅ! オリバーしゃん!!」


 オリバーさん達が大きなカバン持って入ってきたの。僕ブンブンお手て振ってお名前呼びました。でもすぐに気付いてもらえなくて、今度はぴょんぴょんジャンプしてお手て振ったんだ。でも人が多くて全然気づいてくれないの。次はお兄ちゃんに肩車してもらってお手て振ります。そしたらやっとオリバーさん達が気がついてくれました。


 僕嬉しくてお兄ちゃんから下りて駆け寄ろうとしたんだ。そしたらオリバーさんがお手てで止まってしました。僕ピタッって走る格好のまま止まります。ディル達もみんな僕の真似して走る格好でピタッです。近くにいた騎士さんがぷって。ん? 今笑った? 何で?


 オリバーさんが止まってしてから、またお外に出て行っちゃいました。


「ユーキ、そんな格好して何してるんだ?」


 お父さんとじいじが階段下りてきます。後ろにアンソニーお兄ちゃんも居るよ。


「オリバーさんがユーキが走って行こうとしたら止まれってしたもんだから、走れのまま止まってるんだよ。」


「ハハッ。それでその格好か。よしユーキもう動いていいぞ。ただ外に出たり騎士達の邪魔はしちゃダメだぞ。」


 お父さんとじいじがお外に出ていきます。僕は止まれやめて、お父さん達が戻ってくるの階段の所でまってました。でもなかなかお父さん達戻ってきません。つまんなくて僕お兄ちゃん達にお手て握ってもらって持ち上げてもらって、ブランコの真似してブランブラン遊んでます。


 ブランブランしてたらお外から、早く歩けっ!! って怒ってる声が聞こえました。僕ちょっとビクッてして、それからお外で何してるか見たくなって、ドアの所に走って行きます。お兄ちゃん達がこらって言ってるの聞こえたけど、だって気になるんだもん。


 ドアの所からお顔だけ出してお外見ます。たくさん騎士さんが居てお父さん達も見えました。それから馬車からあの人達が下りて来て、騎士さん達に体に巻いてあるロープ引っ張られて歩いて行きます。お父さん達が捕まえた悪い人達だよ。あれ? あのブタ獣人さん、今日はブタさんのお顔してない。丸いお顔だけど僕達とおんなじお顔してる。


「ユーキどうしたの? 不思議な顔して。」


「きょうはブタしゃんのおかおちてないでしゅ。」


「ああそれか。ここまで約10日だもんな。そりゃあ治ってくるよ。流石にまだ少し腫れてるけどな。そうだユーキ。このお城に確か本物のブタ獣人が働いてる筈だ。後で会いに行くか。案外偽物より、とってもカッコいいんだぞ。」


 ふお! 本物のブタ獣人さん! 会いたい会いたい! 後でお父さんに会いに行っていいか聞いてくれるって。楽しみ!


 僕ニコニコしながらお父さん達の方もう1度見ました。偽者ブタ獣人さんが引っ張られて転んでます。そのせいで後ろにいた悪い人達も転んでました。騎士さんにグイグイ引っ張られて起き上がる偽者ブタ獣人さん。起き上がったときフイッて僕達の方見たんだ。それでね、僕お兄ちゃん達にお手てギュウって握りました。マシロが僕のお顔すりすりしてくれて、そのあとルトブルが僕のこと抱っこしてくれます。僕ルトブルにギュウウウって抱きつきます。


「にいしゃん…。やぁでしゅよ…。」


「どうしたのユーキ?」


「何だ? 具合悪いのか? 怖いものでもあるのか?」


 ジョシュアお兄ちゃんがお外キョロキョロします。お兄ちゃん見なかったのかな。あの偽者ブタ獣人さん、僕達のこと見てニヤって変な笑い方したの。お父さんやお母さん、みんなの優しい笑ってるお顔じゃないんだよ。よく分かんないけど怖いニヤってお顔。気持ち悪いの。


「主、オリビアの所に戻ろう。お前達、ウイリアムを呼んできてくれ。話がある。なに、すぐに終わる話だ。時間は取らせん。」


「………分かった。今呼んでくるよ。ジョシュアは先にユーキ達と母さんの所に行ってて。」


「ああ分かった。よしユーキ行こう。」


 僕は抱っこしてもらったまま、お母さんの居るお部屋に行きました。お部屋に入ってすぐにお母さんに抱っこして貰います。お母さん最初どうしたのって聞いたんだけど、僕あの変なお顔のこと上手にお話出来なくて、何にも言いませんでした。


 すぐにお父さん達がお部屋に入ってきました。それで僕のこと見て僕の頭なでなでしてくれたの。

 マシロ達があの変な笑ってるお顔見てて、お父さん達に説明してくれました。


「あの嫌な笑い方。明らかに主に向けられたものだ。そして負の魔力も出ていた。主はそれを感じ取り怖がったのだ。気をつけた方が良いだろう。何か企んでいる可能性が高い。」


「分かった。一応持ち物検査や身体検査はしていて、なにも持っていないことは確認しているが、見張りの数を増やし監視を怠らないようにする。」


「ユーキちゃん大丈夫よ。ここにはお母さん達しか居ないでしょう。」


「うゆう…。」


 僕ちょっとだけしゅんってしてました。でもおやつ食べたら元気になったよ。あのねお母さんがお母さんの作ってくれたプリン持ってきてくれてたの。青色プリン。僕大好きなんだ。僕あの偽者獣人さん、ホプリン達虐めたから嫌いだったけど、もっともっと嫌いだよ。早くお仕置きしたいなぁ。


『ハハハ、ハハハハハハッ! 全員落としてやる!!』

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