第211話たくさんのルーリアとバカ貴族

 ホプリンとちゃんとお友達になった次の日の次の日。僕達のお泊りしてるお部屋にたくさんルーリアが集まったんだよ。


「ふおおおおお!! いっぱいでしゅう!!」


『みんな怪我とかしてない? 具合悪くない?』


 ホプリンがみんなに聞いたらみんな大丈夫だって。でも、ちょっと疲れてるみたいだったんだ。お顔がちょっとお疲れなの。だからディルに元気になる魔法してもらったんだ。そしたらみんなとっても元気になって、お部屋の中グルグル走りまわります。僕達も嬉しくて、お部屋の中グルグルだよ。


「とうしゃん! とうしゃん! みんなもういじめられないでしゅか? わるいおじしゃんちゅかまえたでしゅか?」


「あ、ああ。そうだぞ。捕まえたぞ。(ユーキの周りが魔獣だらけに…。)」


「やったでしゅう!!」


『やったぁ!!』


 またまたみんなでお部屋の中走ります。エシェットが結界張ってくれたから、お部屋の中たくさん走っても大丈夫なの。結界がないとうるさくなっちゃうからダメダメなんだよ。

 昨日僕達が寝てるとき、お父さん達がみんなを助けに行ってくれたんだよ。お父さんとハロルド達とエシェットが助けてくれたの。ハロルド達は今悪い人達と一緒に冒険者ギルドに居るんだって。


 みんなでたくさん走った後に、今度はみんなでお仕置きのお話し合いします。お母さんにねお仕置きのこと聞いたら、ポーンって投げるお仕置きはダメダメって言ったんだ。悪い騎士さんとおんなじポヨンポヨンにしなさいって。う~ん。残念。ポーン見たかったね。みんなも残念ってブーブー言ってます。でもポヨンポヨンも面白いから、たくさんポヨンポヨンしてもらおう。


 すぐにみんなで悪いおじさん達の所に行こうって言ってたら、お父さん急いでお家に帰るぞって。なんで? って聞こうと思ったのに、忙しいから早く準備しなさいってお父さんもお母さんもバタバタしてます。それからオクタビオがギルドから戻ってきて、ハロルド達のお荷物サササッてお片付けして、すぐに馬車に乗りました。ルーリアみんな僕と一緒だよ。でもね。


「くろにゃんいないでしゅ。ハロルドもタイドスも。」


「ああ、くろにゃんはハロルドとお仕事なんだ。大切なお仕事で先にお家に帰ったんだよ。タイドスはここで悪いおじさん達を見てるんだ。」


「おちおきだめでしゅか?」


「それは…。」


「ユーキちゃん。後でちゃんとお仕置きさせてあげるから、今はお家に帰りましょうね。」


「おやくしょく?」


「ええ、約束よ。」


 絶対だよ。みんなでお約束してお家に帰ります。何でお家に帰ってからお仕置きなのかな?

 馬車の中でお外にいるエシェットとお父さんが何かお話ししてました。エシェットにお願いがあるんだって。何だろうね?


(ハロルド視点)

 事態が動いたのは突然だった。まあ、その前にも俺達の予想外のことは起きたが。2日前突然あのルーリア達の飼い主が、ユーキのお気に入りのルーリアを連れて宿にやって来た。


 俺達はその時飼い主の調査と尾行をし、いろいろなことを調べていた。初日馬車からユーキ達がルーリアに会っている時、俺達は馬車の中ですれすれまで寝ていたため、あの飼い主に顔を見られていなかったため、調査するにはちょうど良かった。


 飼い主の名前はゴールイス。聞き込みをした結果、ゴールイスはもう何十年とここで暮らしていて、魔獣を保護していることで有名だということが分かった。

 そして夜中ゴールイスが寝ている時間を見計らい、最新の注意を払いながら奴の家にタイドスが忍び込んだ。タイドスはこういう仕事が得意だからな。ちょうど良かった。


 家の中はごく普通の家だったらしい。表向きはだが。普通の家だったのは表の方の部屋だけで、奥の方には突然種のルーリア達が閉じ込められている檻が置いてあった。おそらく魔力を吸収する石を使った檻だろう。ルーリアくらいの魔獣ならばそれで十分逃げることが出来ない。


 その日は家の調査をし戻ってきたのだが、朝、ゴールイスがルーリアをユーキに譲ると言ってきたのだ。隠れて様子を伺う俺達。兄貴は何食わぬ顔でゴールイスの相手をしていた。


「このルーリアはウイリアム様のお子様に大変懐いている様子。ルーリアを保護してきた人間としてルーリアの幸せを考え、このルーリアはユーキ様のお側が1番良いのではないかと考えたのです。」


 よくもまあペラペラと思ってもないことを。ゴールイスの話しを聞いてもなんだこいつはくらいにしか感じない。だがそれは俺達も兄貴も、ゴールイスがそんなことを考えている人間ではないことをすでに知っているからだ。もし何も知らなければ、本当に良い人物と認識していたかも知れない。

 そしてゴールイスも何も俺達が知らないと思い、俺達に良い人物という印象を与えたかったのだろう。

 ユーキはとても喜んでいたし、ルーリアも喜んでいたからこれはこれで良しとするか。


 だがその日はそれで終わらなかった。夜中俺とタイドスで家を見張っていた時、そいつが現れた。馬車がゴールイスの家の前で止まったかと思うと、中から身なりのいい男が1人降りてきた。そしてゴールイスが男を招き入れる。俺達も上手く中に入り込み2人を監視した。


 男は俺達の知る人物だった。カージナルから2日くらいの小さな街を治めている、ゴルスタインという男爵がいるのだが、そこで補佐をしている男だ。名前はトイコロビス。


 まあ、このゴルスタインという男爵は全くと言うほどいい噂がなかった。そう、珍しい魔獣を剥製にしたりする馬鹿な貴族達の先頭に立つような男だ。ただ、ボルフィスの方でも奴を捕まえようといろいろしたのだが、どうも証拠を隠すのは天才らしく、なかなか証拠が掴めず捕まえることが出来ないでいたのだ。まさかそんな男の補佐トイコロビスが現れるとは。


 俺達に気付いていないゴールイス達がどんどん話を進める。やはりルーリア達の買取の話し合いだった。


「ふん。お前もだいぶ稼いだのではないか?」


「まあそうですが。そろそろ場所を移動しようと思っていましてね。あのカージナルのウイリアム家のガキが、うちのあの1番生意気だったルーリアと仲良くなりましてね。そのルーリアはもう押し付けてきたのですが、こうも顔を知られてしまっては、ね。」


「ああ、あの偽善者一族のウイリアム家か。この前もボルフィスで何かやったらしいな。その前の盗賊の話もこちらにちゃんと流れてきている。あいつに顔を覚えられたか。」


「ですんで、今回の取引の後、何処かへ移動することに。金はだいぶ溜まっていますからね。」


「移動したらちゃんと居場所を知らせるのだぞ。お前も金が入らなければ困るだろう。」


「それは勿論。」


「良し。ではこれは旦那様からの手紙だ。いつものように確認したらすぐに破棄しろ。いいな。」


 手紙を受け取るゴールイス。何が書いてあるか分からないが。大事な証拠になるのは間違えない。


「後でゆっくり確認させてもらいます。ではいつもの通り2日後にこいつらを引き渡します。」


「ああ。私はいつもの宿にいる。」


 俺はタイドスを家に残し、もし手紙を処分されそうになったら構わず奴を捕まえろ、と言い兄貴の所へと急いだ。宿に戻れば渋い顔をした兄貴がいた。どうもユーキがいろいろやらかしたらしい。ユーキもだがルーリアもだそうだ。だが今はその話を聞いている場合ではない。


 俺は見て聞いてきた事をお兄貴に話した。そしてすぐに兄貴は行動を起こした。街にある冒険者ギルドに協力を求めたのだが、ここのギルドマスターは親父の後輩だったため、すぐに力を貸してくれた。ギルドマスターにトイコロビスが逃げないように上手く宿を見張ってもらい、兄貴と俺達そしてエシェットでゴールイスの家へと乗り込んだ。


 奴が受け取った手紙を確認し、その手紙がゴルスタインからの物というのを確認。内容も確認した。そこにはルーリアや他の魔獣達の支払い価格とゴルスタインの署名がされていた。完璧な証拠だ。

 オクタビオが手紙を見て気付いたが、この手紙は水に溶ける素材の紙に書かれていて、火で燃やして紙が残ったり、切り刻んでそれを復元させられる事がないように、完璧に水に溶けてしまう紙を使ったのではないかと言っていた。

 いつも何も証拠が残らなかったのはこのためか。


 エシェットが檻を破壊しルーリア達を助け出す。少しの間全てのルーリア達は俺達が預かることになった。エシェットからルーリア達に説明してもらえば、ルーリア達はとても喜んでいた。


 ゴールイスを捕らえその足でギルドマスターに合流し、トイコロビスを捕らえることができた。ここまでは上手く行っている。あとは…。


「ハロルド頼むぞ。父さん達に状況を説明して、すぐに動けるようにしておいてくれ。我々もすぐに戻る。」


「ああ分かった。」


 俺だけ先にくろにゃんと家に帰る。もし今までの状況を見ていて、ゴルスタインにここの事を知られるのはまずい。逃げられる可能性もあるからだ。兄貴達は馬車で帰ってくる。モリオンに頼んでも良かったのだが、馬車や何から何まで魔法で運ぶのはな。そんな大移動他の人に見られても困る。

 それに俺だけでも家に戻りこれからの準備ができれば、兄貴達が家に着いたとき、すぐに動くことが出来るからな。準備の時間だと思えばそれでちょうどいい。


 いきなり戻った俺にオヤジ達は驚いたが、話を聞きすぐに動き始めた。さあ、俺もすぐに準備を始めなければ。

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